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7 決闘前の準備

 パーティから戻ったレントレートは自室のベッドに倒れ込んだ。頭の中は混乱で満ちていてた。


「退学か……」


 レントレートは重い気持ちで天井を見つめ、深いため息をついた。


 暫くした時、ノックの音が静かに鳴り響く。


「レントレート様、入ってもよろしいでしょうか?」

「あぁ、どうぞ」


 ナナミが部屋に入ってきた。彼女の表情には、普段の冷静さの中に心配の色が混じってみえた。


「決闘のことですが……」


 ナナミが慎重に口を開く。


「……私達にはまだ準備の時間があります」


 レントレートは体を起こした。


「準備ってどんな……?」

「まずエドガー様達の戦闘スタイルを調べる必要性があります。それにレントレート様の血液操作の訓練も……」


 ナナミの言い分にレントレートは苦笑いを浮かべた。


「私の血液操作か……正直自信がないよ。強化だけなら安定して毎日できているけれど……」


 ナナミは真剣な眼差しでレントレートを見つめた。


「レントレート様、貴方には才能があります。先日、学園長の魅了の魔眼に耐えたのもその証です」


 レントレートは黙って聞いていた。ナナミの言葉に、少しだけ勇気が湧いてきた。


「さあ、訓練を始めましょう。時間はあまりありません」


 ナナミが静かに淡々と言った。


 次の日から、レントレートの特訓が始まった。朝から晩まで、城の訓練場で血液操作の訓練に明け暮れる。


「もっと集中して!」


 ナナミの声が響く。


「血液を感じて、それを自在に操る!」


 レントレートは額に汗を浮かべながら、必死に血液を操ろうとする。しかし、思うように動かない。


「くっ……」


 レントレートは歯を食いしばった。だが操作していた血液が霧散して地面に落ちてしまった。

 そんな時だった。チエミとナイトの二人が訓練場へとやってきた。


「レントレートさん、頑張ってますね! 何か手伝えることがあれば言ってください!」


 チエミが声をかける。


「お前なら絶対にできる! 俺達も応援してるぞ!」


 ナイトが励ましの言葉を投げかける。


 レントレートは友人たちの言葉に、少し元気づけられた。


「ありがとう、二人共」


 そこへアデリーナさんもやってくる。


「やっほレントレートさん、ナナミさん。エドガー様の情報、集めてきたわよ!」

「本当ですか? 助かります」


 レントレートは思わずペコリと頭を下げる。パーティに呼ばれていたレントレートやナナミ、チエミさん達では情報収集をしても警戒されて殆ど教えて貰えなかったのだ。

 相手の戦闘スタイルについての情報を知れるのは大きい。


「エドガー様は血液を凝固させて、剣と円盾として使う戦闘スタイルらしいわ。刃のように鋭く、盾のように堅く」


 アデリーナさんが情報を共有する。


「血液の剣と、血液の円盾か……ありがとうございますアデリーナさん!」


 レントレートの頭の中でどう戦えばいいのかが演算される。


「どうやら私も剣か盾のどちらかを持った方が良いみたいだ。どちらが良いと思う? ナナミ」


 レントレートがナナミに相談すると、ナナミは顎に手を添えながら考え込む。


「盾も持っての持久戦ではおそらくレントレート様の体力が持ちません……。しかし、剣では防御が危うくなるし、そもそも攻撃の機会がそうそうない……そうですね、私ならば盾を持ちます」

「そうか盾を持っての短期決戦か……ありがとう!」

「いえ、参考になれば幸いです」


 レントレートは訓練場に置かれていた盾を持ち、ナナミと模擬戦をすることにした。


「では、参ります!」

「あぁ……来い!」


 ナナミは訓練場にあった直剣を持ち、素早い動きで接近してくる。


「レントレート様、ここまでエドガー様に接近されてはまずいです。もっと素早く動いて距離を取ってください」

「あぁ……分かった。でもナナミの動きが早すぎてついていけないよ!」

「体内の自身の血液を感じてください。そしてそれを強化するイメージです」

「わ、わかった。やってみる……!」


 レントレートは返事をし、ナナミに言われた通りに血液を強化する。

 少しはナナミの動きに付いていけるようになっていく。

 レントレートは全力で訓練に打ち込んだ。明日の決闘に向けて、一層の覚悟を胸に秘めて。


 そして決闘の前日がやってきた。

 レントレートは夜の校庭を歩いていた。星空を見上げ、明日の決闘に思いを巡らせる。


「レントレート様」


 背後に控えていたナナミが声をかけてくる。


「明日の決闘のことですが、私は貴方の能力を信じています。

 それにもしもの事があっても……私が全力でお守りします」


 ナナミの声は少しだけ震えていた。

 レントレートは驚いた。いつも冷静なナナミが、こんなにも感情を見せるのは初めてだった。


「ナナミ……君はどうしてそんなにも私のことを気にかけてくれるんだい?」

「それは……ユーミリア様に助けて頂きましたし、育てて頂きましたから……その恩に報いる為にも私はレントレート様にお使えしているのです」

「母様に助けてもらった……?」

「はい」


 ナナミはゆっくりと頭を縦に振る。


「そっか、じゃあ詳しいことはエドガーとの戦いに勝ったら教えてよ」

「分かりました、約束です」

「あぁ、約束だ!」


 レントレートは笑った。そしてナナミもまた少しだけ笑ったようにレントレートには思えた。

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