第45話 高校一の美少女は一緒に料理を作りたい。
最近更新を忘れがちで申し訳ないです。
翌々日。
時刻は午前10時過ぎ。
一学期の終業式を迎えた。
体育館で、この蒸し暑い中ではやや長すぎる校長先生の退屈な話を聞いた後。
俺はクラスメイトたちと一緒に2年3組の教室に戻ってきた。
残すは帰りのホームルームのみ。
まあ、今日は普段と違って学期の終わりだ。
通知表を受け取ったり、長期休暇前の注意喚起など、いつもよりは長いだろう。
(とはいえ、いよいよ夏休みが目の前だ……)
エアコンの効いた涼しい教室のありがたさを実感しながらくつろいで、担任教師がやってくるのを待っていると。
「八雲くん、今日のお昼は何が食べたい?」
隣の席から初音さんが話しかけてきた。
初音さんは机にもたれかかるような姿勢で、頬を天板にくっつけている。
教室内はエアコンが効いているから、木製の天板は素肌で触れたらそこそこ冷たいだろう。
灼熱の体育館から戻ってきてすぐなら、余計に。
それはそれとして、今日の昼食か。
「今日は昼前に帰れるだろうし、どこかに食べにいく?」
「うーん、それもいいんだけどね」
俺の提案に対し、初音さんはあまり乗り気ではなさそうだった。
「あれ。そういう話じゃなかった?」
「私としては、八雲くんに手料理を振る舞うつもりで聞いたんだよね」
「あ、なるほど」
俺は外食先ではなく献立の希望を聞かれていたのか。
「それで、八雲くんは私に何を作ってほしい?」
「迷うな……」
初音さんの作った料理なら、なんでもおいしいはずだ。
けど、だからって「お任せ」などと答えたら初音さんが困ってしまう。
何かしら希望を伝えるべきなんだろうけど、難しいな。
「あ、そうだ。初音さんの好物って何?」
「わ、私? えっと、オムライス……とか」
「じゃあオムライスが食べたいな」
俺の答えに、初音さんは少し戸惑っていた。
「私は八雲くんの好みの料理を作ろうと思ってたんだけど……?」
「初音さんの好物を頼んだら、一番自信のある料理が食べられるかなと思ったんだ。もちろん、初音さんの作る料理ならなんでもおいしいと思うけど」
「へへ。そういうことなら、オムライスにしようか」
初音さんは納得した様子で笑顔を見せた。
方便としては俺の言い分は有効だったようだ。
実は初音さんの好物を頼んだのには、もう一つ理由があった。
初音さんに作ってもらう上に、内容まで俺の好みに合わせてもらうのは申し訳ないと思ったからだ。
あれ、でも待てよ。
そもそも、申し訳ないと思うなら初音さんだけに作ってもらう必要はない気がする。
「あ、そうだ」
「どうしたの? やっぱり違う料理がいい?」
「いや、作る料理はオムライスでいいんだけど……初音さんに作ってもらってばかりなのは申し訳ないから、俺と一緒に作るっていうのはどうかな」
「八雲くんと一緒に……?」
初音さんは一瞬、きょとんとした表情を見せる。
しかしすぐに、目を輝かせた。
「それ、おもしろそうだね!」
「じゃあ決まりかな」
「うん。八雲くんと一緒に料理を作るのかー……なんだか、二人の共同作業って感じがして良いかも」
初音さんは今から楽しそうに思いを馳せていた。
次回はスーパーで買い物したり、初音さんの家で一緒に料理を作ったりしていちゃいちゃします。