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第33話 恋人たちはクラスメイトの前でいちゃいちゃする。

「俺に協力してもらいたいことって?」


 駅前のショッピングモール内にあるファミレスにて。

 俺は委員長と話していた。

 椎名が席を立った隙の会話だ。


「実は今日、椎名くんに告白しようと思っているんです。なので上野くんには、市ヶ谷さんと一緒に、そのお膳立てをしてほしいんです」


 委員長は真剣な顔で、そう告げてくる。

 椎名と委員長がいい雰囲気なのは以前からなんとなく察していた。

 よく初音さんに恋愛相談みたいなことをしているのも目撃していたし。

 いよいよ行動に移すってことだろう。


「そういうことなら、協力するよ」

「ありがとうございます……!」

「委員長や椎名には、球技大会での恩があるから。俺にできることなら任せてほしいと思うけど……」

「けど、なんですか?」


 委員長は疑問の目を向けてくる。


「別にお膳立てなんかしなくても、二人は両想いなのかと思ってた」

「は、はい……!?」


 委員長が珍しく動揺している。


「それは私も同意見だね。二人は幼馴染っていうのもあるし」


 初音さんが俺に同調する。

 しかし委員長は首を横に振った。


「幼馴染だからこそ、です。昔から一緒にいたせいで、あの男は私を異性として意識していない気がするんです」


 委員長はどこかもどかしそうに熱弁する。


「なるほど……長年一緒にいると、そういうこともあるのか?」

「私としては、椎名くんも自覚がないだけで本当は委員長のことが好きだと思うんだよね。委員長には何度もした話だけど」


 初音さんが委員長の意見に異を唱える。


「確かに、俺もそんな気がする」

「上野くんもそう思いますか……市ヶ谷さんに散々言い聞かされて、私もついに動くことにしたんです」


 なるほど。

 初音さんの後押しで、委員長は告白する決意を固めたのか。


「そこでまずは、私と八雲くんがお膳立てをするってこと」

「さっきから気になってたけど、お膳立てって具体的には何を?」


 俺は初音さんと委員長に尋ねる。


「お二人には、私と椎名くんの前で恋人らしくいちゃいちゃしてもらいます」


 委員長から、そんな答えが返ってきた。



 椎名が4人分の飲み物を持って席に戻ってきた。

 それから少しして。


「八雲くん、これ食べてみない?」


 初音さんがメニュー表を開いて、一点を指さした。

 そこには、カップル限定パフェなるスイーツが画像付きで載っている。


「カップル限定パフェか……たまにはこういうのもいいかもね」

「あ、でも私たちだけ食べるのは悪いかな……?」


 初音さんはそう言って、委員長と椎名の方に申し訳なさそうな視線を向けた。

 少し露骨な気もするけど、こっちの方がわかりやすいのか……?


「そ、そうですね。気を使わせてしまうのも悪いですし……椎名くん、ここは私たちも同じものを注文しましょう」


 委員長はぎこちなくうなずいてから、椎名にそう提案した。


「え、でも俺たちはカップルじゃないような……」

「か、カップルらしく振る舞っていればわかりませんよ」

「分かった、じゃあ俺たちも頼もうか」


 動揺が隠し切れていない委員長を見て、椎名は優しく笑っていた。

 なるほど、女子にモテるのがよくわかるイケメンスマイルだった。




 結局、カップル限定パフェを二つ注文した。

 一つで2人前ほどのサイズで、カップルで協力して一つ食べるような想定らしい。

 正直、サイズ以外は普通のパフェとあまり変わらない気がする。


「じゃあさっそく。八雲くん、あーん」


 初音さんはスプーンを手に取ってアイスを掬うと、当然のように俺の口元に差し出してきた。

 恋人らしくいちゃいちゃするって、こういうことか。

 人目が気になるところだけど、これも委員長の告白をお膳立てするためだ。


「……いただきます」


 俺はそう呟いてから、差し出されたアイスを口にした。


「どう? おいしい?」

「まあ、うん」


 正直、味は良くも悪くもファミレスのデザートといった感じのクオリティだ。


「へへ、良かった。じゃあもっと食べてね」


 でも、なんだかんだで初音さんに食べさせてもらうこの状況は、悪い気はしなかった。

 対面に座るクラスメイトに思いっきり見られているというか、見せつけているこの状況でも。

 初音さんがまるで餌付けするかのように楽しそうにしている姿を見ると、細かいことより彼女に答えたいという気持ちが勝ってしまう。

 あれ。

 これ、俺も初音さんも、お膳立てとか忘れて素でやってないか。


「お、おお……さすがは市ヶ谷さんと上野くん……」


 委員長は俺と初音さんのやり取りに見入っていた。


「はは、仲がいいな」

「は、そうだ! 私たちもあれ、やりましょう!」

「あれって……あの、「あーん」ってやつ?」


 スプーンを構える委員長に、椎名は確認する。


「はい。カップル限定パフェを注文した以上、あれが正しい食べ方のはずです……!」

「そう……なのか? まあ、明日葉がやりたいなら、構わないよ」


 椎名は逡巡した後、了承した。

 クラスの誰もが委員長と呼ぶ中、下の名前で呼んでいる。

 

(やっぱりただならぬ関係にしか見えないよな……?)


 俺はクラスメイトたちのやり取りを見てそんな感想を抱きながら、横から初音さんが差し出してくるスプーンに乗ったフルーツを口にした。

次回、もうちょっといちゃいちゃした後、友人が告白している様子を見て気分が高まった二人はテストのせいで我慢していた行為に及びます。

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