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第11話 高校一の美少女と見つめ合う。

一夜明けて、俺は実感がわいてきた。

 初音さんと一緒に、青春を取り戻そう。

 ここまで来たらもう、乗りかかった船だ。

 俺はただでさえ陰キャの上に、高2の春先から失踪していたせいで出遅れていた。

 青春とか人並みの高校生活なんて諦めていたけど、俺だって多少は変わったと思う。

 初音さんと出会って童貞を卒業して、仲良くなって。

 少しだけ、自分に自信を持てるようになってきた気がする。

 朝、自宅のベッドで目覚めた俺はそんな調子で息巻いていた。

 今日も初音さんを迎えに行って、一緒に登校する。

 そこまでは良かった。

 でも、そこから先は今まで通りだった。


 始業前。

 2年3組の教室にて。

 クラスメイトたちが友人グループで集まって、それぞれ賑やかに談笑する中。

 俺と初音さんは、自分たちの席に座っている。

 窓際最後列の席で、隣同士。


「……」

「……」 


 俺と初音さんは無言だった。

 登校時に、そういう打ち合わせをしたからだ。

 自分たちが楽しい青春を過ごすには、やはりクラスメイトたちと打ち解ける必要がある。

 そこで俺たちが選んだ作戦は「待ち」だ。

 二人とも今までぼっちとして生きてきたので、クラスメイトとの接し方を他に知らなかった。

 それでも今、俺と初音さんはある意味、話題の二人だ。

 この前の炎上騒ぎは触れにくいかもしれないが、それ以前にクラスメイトには俺と初音さんが付き合っている、と伝えている。

 彼らにとっては異色のカップルに見えているはずなので、興味を持って誰かしら話しかけてくると思ったんだけど。

 誰も話しかけてくることはなかった。


「……」

「……」


 これはどうしたものか。

 俺は右隣に座る初音さんの方をちらりと見る。

 初音さんと、目が合った。

 

「うーん……」


 初音さんは困ったような顔を浮かべている。

 どうやら初音さんも俺と同じ考えに至ったようだ。

 誰も話しかけてこないという誤算に対して、打つ手がない。


(いや、諦めるのはまだ早いはずだ……!)


 ここはまず情報を集めよう。

 時々俺たちの方を見て、気にしている様子の連中もいることだし。

 周囲のクラスメイトたちが何を思っているのか。

 俺は聞き耳を立てた。


「上野……だっけ? あいつと市ヶ谷さん、なんか無言で見つめ合ってるぞ」

「朝から二人だけの世界に入り込んでるって感じがするよね……!」 

「あんな美少女といちゃいちゃできるとか羨ましすぎるだろ……」


 どうやらクラスメイトたちは俺と初音さんが二人だけの世界に入り込んでいるから邪魔しない方がいい、と思っているようだ。

 あれ、もしかして黙っていたのは逆効果だったか?


「……」

「……」


 再び初音さんの方を見ると、やはり目が合った。

 同じ話を聞いていたのか、もどかしそうな顔をしているように見える。

 だからって今から俺と初音さんが会話を始めても、状況が変わることはない気がする。

 つまり万策尽きた。

 ぼっちだった俺たちに打てる手はもうないと思ったその時。


「おはようございます!」


 一人の女子が、爽やかな声で挨拶しながら教室に入ってきた。


「おはよう!」

「おはよう委員長」


 クラスメイトたちは男女問わず、みんな親しげに返事をしている。

 彼女はこのクラスの委員長、千川明日葉だ。

 クラスメイトからは委員長とか、いいんちょーとか呼ばれている。

 先週の水曜からしばらく、体調を崩して休んでいた。


「いいんちょー、風邪は治ったの?」

「はい。おかげさまで」


 委員長は茶色の髪を後ろで束ねたポニーテールが特徴的で、明るく誰とでも分け隔てなく接するリーダー気質を持った女子だ。

 委員長の席は、俺の一つ前にある。

 そのため必然的に、俺たちのいる方にやってきた。


「おはようございます。上野くん。市ヶ谷さん」


 委員長はクラスの片隅にいた俺たちにも、爽やかに挨拶してくれる。


「……おはよう」

「お、おはようございます!」


 小さい声で返事をする俺に対し、初音さんは緊張したのか声が少し裏返っていた。


「お二人とも、噂は聞いていますよ。クラスに話し相手がいない様子だったので委員長として心配していましたが、気の合う相手が見つかったようで何よりです」


 委員長はクラスの全員が仲良くなることを理想としているタイプの女子だ。

 つまり俺や初音さんみたいな、クラスのぼっちに対しても話しかけてくれて、気にかけてくれる。

 今の俺たちにはとてもありがたい存在だった。


「わたし実は、どうしたらお二人がクラスの皆さんと打ち解けられるか、風邪で寝込んでいる間にもいろいろ考えていたんですよ」


 委員長は自分の席に座り、鞄を机に置くと、後ろを向いて話を続けてくる。


「そ、そうなんだ?」


 ぎこちないながらも、初音さんが会話に応えた。

 仲良くなるチャンスだと思ったのだろう。


「はい! それでいい案を思いついたんです」

「いい案……?」

「もうすぐ球技大会がありますから、そこでクラスの皆さんと団結を深めましょう!」


 首を傾げる初音さんに、委員長が得意げに言った。

 

「だ、団結……」


 初音さんは心なしか、わくわくしているように見える。


「ちょうど今日の午後に出場種目を決める時間がありますから、二人とも何に出るか考えておいてくださいね」


 委員長がそう告げてきたところで、朝の予鈴が鳴った。

 球技大会。

 そういえばそんな行事もあったな。

 去年までの俺にとってはとても楽しめるイベントじゃなかったけど。

 今の俺なら、少しは違う気持ちで臨むことができるだろうか。

というわけで青春っぽいイベントが始まっていきます。

チートな身体能力で無双したり、初音にかっこいいところを見せたりしつつ、たまに我慢できなくなって普通の友達じゃしないことをしてみたりするかも……?

次回以降もぜひブクマをしてお待ちください!

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