表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/168

5・環境改善! 大事、絶対!

(命令? これが? 上官からの?)


 私はもう一度、地面に寝かされている騎士様に視線をやった。


 彼らが寝かされている筵の下は、むき出しになった土のみ。


(いや、土って!)


 土が傷口について感染症とか起こしたらどうするつもりなのよ!


(これはすぐに最低限、綺麗な床の上、出来ればベッドに移動させないと。)


 しかし、相手は負傷しているとはいえ屈強な騎士様で重症患者。


 簡単に移動させられないし、どうしたものかと悩んでいるときに、ふと、思い立ったことがあった。


 そんなとき、先ほど屋敷に向かって馬車で出ていった侍女が、急ぎ走って帰ってきた。


「奥様、シーツを持ってまいりました!」


「急がせて申し訳なかったわ、ありがとう。 ねぇ、聞きたいのだけれども、貴方はここに詳しい?」


「兄がこちらに勤めておりますので、それなりには……ですが。」


 私の問いに、彼女はやや困惑した表情で頷いて答えてくれた。


「まぁ。 兄妹で辺境伯家へ仕えてくださっているのね。 感謝するわ。 それで、お兄様が騎士様なのなら知っているかしら? 騎士様たちは、どこで寝泊まりしていらっしゃるの? あぁ、夜勤めの騎士様たちのことよ。」


 王都でも、夜回りの騎士や自警団がいたくらいだから、最前線である辺境騎士団なら、必ず夜勤があるはず、と問えば、それでしたら、と侍女はおしえてくれた。


「夜勤勤務の者が寝るための兵舎があります。」


 夜勤専用の物があるのね。


「それはこの近くかしら? 場所はわかる?」


「はい。 兄が夜勤の時に差し入れをしたことがございます。 たしか、隣のおおきな建物だったと思いますが……。」


「隣の?」


 思い出せば歩いて少しのところに、石造りの建物があったような気がする。


 この状態で環境の劣悪さを悩んでいるくらいなら、五分、十分私が離れても何も変わるわけじゃない。


「申し訳ないのだけど、そこに私を案内して頂戴。」


「え? は、はい。」


 長いドレスの裾をたくし上げるように持ち、足早に進む侍女についていく。


「奥様、こちらでございます。」


 歩いて2~3分のところ。 砦の近くの大きな石造りの建物。


 スカートの裾から手を離し、少し直すように払いながらその建物に近づけば、その前にいた騎士様が私たちに気が付いて声をかけてきた。


「ご婦人方、ここになんのよ……お、奥様!」


(あら、私の事を知っているのね。)


 もしかしたら披露宴の時に護衛として来ていたのかもしれない。 私の顔を知っているならば好都合だ。


「挨拶はいりません。 申し訳ございませんが、私にこちらを拝見させてくださいませ。」


 そういえば、焦ったような騎士様。


「いえ、しかし、こちらは夜間勤務用の兵舎でして、奥様にお見せできるような場所では……」


「結構です。 早く見せてくださいませ。」


「はっ。 ど、どうぞ。」


 少し強めな私の声にびっくりしたのかもしれない、一度は躊躇したが、すぐに木の扉を開けてくれた。


 扉を開けてすぐに見えたのは、石造りの壁に、少し傷はあるが綺麗な木の床の、殺風景で男臭い、部屋の隅には脱ぎ捨てた鎧や衣類、酒瓶なども乱雑に溜まっている部屋だ。


 ちょうどいま倒れている騎士様が全員が入って少し余るくらいの数の簡易ベッドが置かれていて、等間隔に魔導ランプも、ガラスがはまった、換気もできる採光用の窓もある。


(場所は決まったわ。 じゃあここからは、怒られるかもしれませんが、私に与えられた『お貴族様の権限』を、使わせていただきましょう。)


 わたしは一つ、息を吐くと、顔を上げた。


「ここならいいわね、問題ないわ。 では、申し訳ないけれど、屋敷から持ってきてもらったシーツや手布、それに、あの場にいた子供たちにお願いをして、沸かしてもらっているお湯と手桶もこちらに集めて頂戴。 それが終わったら、申し訳ないけれど、もう一度屋敷に戻って、手が空いていて私の手伝いをしてくれる使用人を、こちらに回してもらえるように執事長と侍女長に伝えてもらえるかしら? 来てくれた者には、後程、特別手当をわたくしが出しますと添えて頂戴。 それと、騎士様。 お願いがございますの。」


 この兵舎の事を教えてくれた侍女にそう告げ、それから隣に立つ騎士様に声をかける。


「は、はい、何でしょうか!」


 やや怪訝な顔をして私に聞いてきた彼に、私は次に取るべき行動の手伝いを命じた。


「ほったてご……いえ、救護室に押し込められている傷ついた騎士様たちを、すべてこちらに運んでくださいませんか。 出来れば戸板で、騎士様たちを揺らさないように、慎重にゆっくりと。 これは辺境伯夫人である私の命令です。 責任は私が負いますので、急ぎお願いしますわ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まぁ日本でも戦国時代の医療は褒められたものではなかった。それでも傷口を水で洗い清める程度はしてたようです。あとは薬草を使う程度でもこの作中の負傷兵への処置よりはマシかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ