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4・まず、現状把握をいたしましょう。

 救助小屋のすぐ外で、用意された水で口をゆすぎ、盥にたまった水を変えながら2回、手を洗った私は中に戻った。


 ひとまずは換気と採光! と開け放った窓からは、新緑の香りのする穏やかな風と光が入って流れていく。


 暖かく緩やかな風のある初夏でよかったと、心から思いつつ現在の状況を把握する。


 暖房設備もない、隙間だらけの木の板の壁しかない掘っ建て小屋の救護室。 これが冬場だったら傷を負った騎士様たちは凍えて体力を消耗してしまい、死期を早めていただろう。


 窓というにはお粗末なくりぬきの戸板? を外し全開にしたため、室内にこもっていた血の匂いは少しずつ和らいでいくのもわかる。


 しかし窓が開き、室内が明るくなれば、すべてが把握できる。 そしてここは、思った以上に劣悪な環境だったのだ。


 木の板などでなく、むき出しの土の上に、本当に捨てる直前の様な粗末な筵を引き、そこに無造作に、投げ込まれた、という表現が一番当てはまると思う。


 領地領民を、魔物や侵略者たちから命をかけて戦ってくださった騎士様たちになぜこんな仕打ちが出来るのかと寒気すらする酷い環境。


 こんな状況を、なんで許しているのかといらだつが、今はそんなこと考えてる暇はない。


(いま私がやれることは……)


 思い出す限り、この世界の医療は、たぶんきっと、ものすごく遅れてる。 それがどれくらいよって言われてもわからないくらいには遅れてる。


 衛生環境も大きく遅れているだろう。 思い起こせばこの体での人生で、家に帰って手洗いうがい、なんてしていた覚えがない。 感染対策なんてなかったな。


 だけどそんな中でも、戴帽式(ナースキャップを初めてつけるんだけど、今はやってないらしいわね……。)で、その志を暗唱させられたナ〇チン〇ール先輩が、戦場の病院で、そこにいる人たちに馬鹿にされながらも行い、劇的に患者の生存率が上がった、看護の、いいえ、病床の基本があったはず!


 その授業は寝てて怒られたけどね! 確か基礎看護論だったかしら?


(テストでも出たじゃない、ちゃんと思い出して、私!)


 前世では当たり前すぎた、あの衛生的、かつ快適な療養環境に近づけるために!


 ナイ〇ンゲー〇先輩が提唱したこと……


(おもいだした!)





 呼吸を助ける


 飲食を助ける


 排泄を助ける


 歩行時及び在外に際し、患者の望ましい姿勢を保持するよう助ける


 休息と睡眠を助ける


 衣類の着脱を助ける


 体温を正常に保つのを助ける


 清潔を保ち、身だしなみを保ち、皮膚を助ける


 環境の危険(感染・暴力)から助ける(ここまでは今すぐ!)


 患者の意思を伝えるのを助ける(追々やろう!)


 信仰を実践し、善悪に従って行動するのを助ける(あとで!)


 生産的活動・職業を助ける(あとで!)


 レクリエーションを助ける(今じゃない)


 患者が学習するのを助ける(これも今じゃない)





 ……あれ? これナイチ〇ゲ〇ル先輩と違うな、ヘ〇ダーソ〇の看護の基本となるものだったわ。


 まぁいいや、これに倣って行動すればいいんでしょ?


 と、なれば今、私がしなきゃいけないのは……。


「えぇと、そこのあなた。」


「は、はい!」


 突然私に声を掛けられ、言葉通り跳ねるように顔を上げた少年に尋ねる。


「騎士様たちは、地面に雑魚寝しているけれど、この方達用の寝具はないの? この騎士様たちを寝かして差し上げられるベッドは?」


「え? 寝具にベッドですか? こんなに傷を負っているのに?」


 何を言っているのかわからない、という顔をした少年の返答に、私も同じような顔をしてしまったと思う。


「こんなにも傷を負われているからこそ、です。 私たちを守って傷を負ってくださった方を、このような場所で雑魚寝させているのは何故ですか?」


 私としては正論を言ったつもりだったのだが、少年から返された答えは、絶句ものだった。


「そのようなものはありません。 このようにしろと、上官からの命令です。」

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