鋼鉄の女と呼ばれる鎧塚課長のバレンタインチョコの渡し方がツンデレ過ぎて萌え死にそうです
「べ、別にお前のために買ったわけじゃないんだからな!」
「はい!わかってます!」
「部下のみんなに配っているんだからな!つ、つつつ付き合いのある店の売り上げに貢献するためだ!
いいな?!
そこのところ、勘違いするなよ!」
「わかってます!あの!」
「なんだ?!」
「鎧塚課長!異性として、好きです!」
「ふぁっ?!」
誰もいない就業時間終了直後の給湯室。
紅潮した顔を隠す余裕もなく、鋼鉄の女と呼ばれる鎧塚課長が叫ぶ。
その鎧塚課長からバレンタインチョコを渡されたのは、部下でぽっちゃり男子の勅使河原。
「鎧塚課長、好きです」
そして、トドメを刺した。
「えっと、えっと、あの、その、な」
もじもじと恥じらう鎧塚課長。
あぁ〜!!かわいいぃぃ!!
でも、それよりちゃんと返事してぇー!
「………おい、何してんだ。さがら」
「あ!今、給湯室は関係者以外の立ち入りは禁止です!轟課長でも、通せません!」
「……お前も関係者じゃないだろ。来い」
「あぁ〜!ちょっと!は、離してください!」
鎧塚課長のツンデレをこっそり見守っていた私、相良友理は鬼の轟課長に捕まってしまった。
ずるずると引きずられながら、私は鎧塚課長のツンデレ具合に萌えまくっていた。
「課長かわいい〜!勅使河原、離すんじゃないわよ……!」
事の発端は、年始。
鎧塚課長との面談後の一言だった。
「……勅使河原と、付き合ってるのか?」
「はああ??」
社会人2年目。
学生時代の終わりと共に、彼氏とも終わり。
入社半年で、都内に転勤。
知り合いもいなければ、女性の同僚もいない男ばかりの職場。
唯一の女性社員は、上司の鎧塚課長のみ。
結果、飲みに行くのは、同期のぽっちゃり陰キャの勅使河原だけ。
そんな生活で、勅使河原との仲を疑われるとは。
「付き合ってませんよ!
あの勅使河原ですよ?!
あの!
どこをどう見ても友人以上も、以下もないじゃないですか!」
面談用の小さな会議室に響く私の声。
「わ、わかった!悪かった!すまん!
だから、声をちょっと抑えてくれ……」
珍しく弱りきった表情の鎧塚課長。
「……どうしたんですか?鎧塚課長」
思わず立ち上がっていた腰を椅子に下ろす。
はぁ、と、ため息をついて、鎧塚課長が顔にかかる長い髪を片手で押さえた。
うわぁ〜。
憂い顔が、超萌える〜。
鎧塚課長は、才色兼備の美女。
美人っていうより、とにかく、美女!
つやっつやの黒髪に、お母さん譲りの秋田美人の真っ白い肌。
それに二重まぶたでまつげも長いし、流し目で見られた時には昇天するかと思ったわ。
え?私?
ただの鎧塚課長を推してるだけの部下ですけど。何か。
知り合いも誰もいない勤務地。
唯一の癒しは、上司の鎧塚課長。
仕事がきっちり、かっちりできるのに、部下のフォローもうまいし、中途採用で入ってきた年上の男性社員からの信頼も厚い。
完璧じゃない?
パーフェクトビューティーバンザイ。
そう思って日々働き、時々、同じ課の同期の勅使河原を誘って、飲みに行っては、鎧塚課長を讃えていた。
それなのに。
なんで、勅使河原と付き合ってる設定になってる?!
「……誰か言ってたんですか?
私と勅使河原が付き合ってるって」
「いや、誰かに聞いた訳じゃない」
「じゃあ、何でそう思ったんですか?」
不思議に思って、素直に聞いてみると。
「……勅使河原に惚れた」
「はああ??!」
「声、小さくしてくれ……」
頭を抱えて、鎧塚課長が机に突っ伏した。
サラツヤの髪からのぞくのは、真っ赤になった両耳たぶ。
え。萌える。
何なになに?
え?あの完璧パーフェクトビューティーの鎧塚課長が、恋する乙女のように、照れて真っ赤になって、顔を隠してるの?
え、マジですか?
え、こんな砂かぶりの最前列で見てていいんですか?
ふわぁ……!
思わず両手を合わせて拝む。
神様ありがとう。
私は今日も生きていけます。
そこで、気づく。
勅使河原?
てっしー?
えええええ?
「……課長、ちなみに、勅使河原って、私の同期で、課長の部下の、あの勅使河原でいいですか?」
「……そうだ」
顔を伏せたまま、鎧塚課長が答える。
わぁ、かわいい。
って、そうじゃなくて。
あのぽっちゃりメガネ陰キャの勅使河原?
口を開けばアニメと原作漫画とラノベの話しかしない勅使河原ぞ?
「……どこが、いいんですか?」
「……ぜんぶ」
うーわー。これは末期だ。
正月ボケも何もかもが吹き飛ぶ衝撃だった。
推しの鎧塚課長が、恋の病だ。
その日は、仕事を終えてから初めて鎧塚課長の部屋にお邪魔した。
そこにあったのは、
「………え?てっしー?全部?これ、全部ですか?!」
壁一面に貼られた勅使河原の写真だった。
「うん、かっこいいだろ」
照れながら、コーヒーとお酒をテーブルに並べる鎧塚課長。
その後ろにある棚に並ぶのは、何かの武器かと思うようなゴツいカメラ。
レンズが大砲並みにでかい。
「………お話を聞かせていただいても?」
「うん、大した話じゃないんだが。
勅使河原はコスプレイヤーの中では、有名な奴でな。
それをわたしは追いかけて、撮影させてもらってるんだ」
「……よくてっしーだって、分かりましたね。ほぼ別人じゃないですか」
「……それは、まぁ、好きな人、だからか?」
そう言って、鎧塚課長は照れたように、指先で頬を掻いた。
かわゆす。
てれてれと、体を揺らす鎧塚課長。
その課長を囲み、見下ろすのは、カラフルなウィッグをかぶって、ほんのりふくよかな女性キャラのコスプレをした勅使河原たち。
カオス。
うーん、まぁ、てっしーが女装してても驚かないけど、ここまで似合ってるとは。
そういう意味では、驚いた。
いつも勅使河原とは飲んでは、鎧塚課長の美貌を褒め称えていたんだけれど。
そういえば、カルーアミルク飲みながら、てっしーが言ってたな。
「……あんな美女になってみたいなぁ」
そういう意味か。
なるほど。そういう意味か。
あれ?じゃあ、勅使河原は男として、鎧塚課長のこと、どう思ってるんだろう。
私は、鎧塚課長が顔色も変えずにテキーラを飲んでは、勅使河原について語り続けるのをガン見しながら、そんなことを考えていた。
まぁ、勅使河原について考えるのも面倒なので。
「……で?勅使河原は、鎧塚課長のことどう思ってるのよ。ただの推し?それとも恋愛対象?」
「……それは」
休憩スペースの自販機で、アニメコラボのカフェオレを取り出そうとしゃがんだ勅使河原を壁ドンのごとく、自販機に腕をあてながら、見下ろして聞いてみた。
「ほらほら、早く答えないと他の社員が来るわよぉ〜?」
「答えるから、場所、移動しないか?」
「まあ、いいけど」
コラボ商品の缶コーヒーを私も買い、2人で非常口から外階段に出る。
「うっわ!くそ寒い!」
「女の子がくそとか言うな」
「てっしーは厳しいなぁ」
ぺきぺきっと、並んで同時にプルタブを開ける。
ひとくち飲んで、吐いた白い息がふんわり流れる。
「……なぁ、俺、そんなに態度に出てたか?」
「へ?」
「最近、もう、ほんと、鎧塚課長が、その、好きすぎてもうダメなんだ!」
「へえ?」
勅使河原は、カフェオレを一気に飲み干すと、畳み掛けるように語り始めた。
「そりゃあ、俺なんて眼中にないと思うけど、残業の度にカフェオレおごってくれたり、出張のたびに飲みに連れていかれては、酔った目でじっと見つめられたりしてたら、俺だって落ちるわ!」
「へえぇ〜?」
思わずにやにやと笑ってしまう。
なんだよ、両思いじゃねーか。
おっと、女の子らしく言わなきゃ。
ふたりとも両思いだったのね!
「…隠してるつもりだったのに、お前にバレてるなんて」
メガネの下に指をすべりこませて、てっしーが顔をおおって俯く。
おいおい、鎧塚課長と同じリアクションするなよ。
すでに夫婦か。
私は手摺りにもたれかかりながら、缶コーヒーをひとくち飲む。
なんだぁ。
推しの幸せは、案外近くにあったのか。
照れているのか、顔をおおって動かなくなった勅使河原を眺めながら、私はゆっくりと残りのコーヒーを飲んだ。
冬の空は、薄い空色をしていて、案外きれいなものだなぁ、と思った。
「……それじゃあ、金曜に」
「頼む。飲み代出すから、相談に乗ってくれ」
「はいはーい」
ぶらぷらと手を振って、非常口扉が閉まるのを見ていた。
「相談って言ってもなぁ」
すでに両思いのふたりなら、あとは告白しかないのに。
勅使河原が告白したこともないチェリーだからなぁ。
「……どうしたもんかなぁ」
はぁ、と、白い息を大きく吐いた。
すると。
「……おい、サボりなら、もう少し声小さく話せ」
下の階段から、鬼の轟課長が上がってきた。
「うっわぁ。課長こそサボってんじゃないですか?」
「違う。非常階段に捨て猫があったらしいから、見に来たんだ」
この険しい顔で、私を見上げる轟課長は、才媛と名高い推しの鎧塚課長の同期で幼馴染らしい。
まぁ、私のマンションの部屋のお隣さんなんだけど。
「こんなところに?金網フェンスありますよね?」
「施設管理者として、失敗した。
正月休みに金網がペンチで切られていたんだ。休み明けに確認しておけば良かった」
「やっぱり常駐の警備員さんが必要なんですよ。何かあったら来るだけじゃなくて」
「今まではこういうことが無かったんだがなぁ」
いつものように眉間に皺がよる。
端正な顔なのに、いつも職場で見ると険しい顔になっている。
周りの男性社員からは鬼呼ばわりだし。
「ほらほら〜、眉間に皺寄ってますよ」
「仕事中だ。別に構わない」
「ちぇー、笑うとかわいいのに」
「かわ……!おまえ、そういうこと……!」
「はいはーい、仕事に戻りまーす」
ふりふりと、空になった缶コーヒーを振って、非常口扉を開けた。
閉じる間際に、
「勅使河原が好きなのか?」
と、轟課長が言ったように聞こえたけれど、きっと聞き間違いだろう。
誰がどう見ても、てっしーと私が付き合っているようには見えないもの。
ばたん、と、扉の閉まる音がすべてをリセットするように、大きく響いた。
それで。
まぁ、なんやかんやありまして。
勅使河原には、ちゃんと異性として「好きです」と言えと、説得し、鎧塚課長には、「バレンタインチョコを渡しましょう!」と、そそのかして。
ようやく迎えた2月14日。
朝から鎧塚課長は、そわそわしている。
今日に限って勅使河原は、別の課の人と日帰り出張。
帰りは就業時間内のはず。
「……課長、チョコレート、持ってきました?」
落ち着かない鎧塚課長を誘って、ランチへ。
「も、持ってきた。机の引き出しに、入ってる」
もごもごとパスタを食べながら答える鎧塚課長が初々しすぎて、萌え死ぬ。
「室温で溶けたりしないか?」
そして、なぜか居る。
轟課長。
「だ、大丈夫だ。生チョコじゃないから」
「で、いつ渡すんだ?」
「しゅ、出張から帰るから。その時に」
「どこで?残業してる奴が最近はいるから、誰もいないことにはならないぞ」
「う、うーん」
そして、なぜか鎧塚課長に細かくレクチャーしてる。
なぜ?
「……出張先のお菓子を課員分、買ってくるように頼んだから、取り分けるのを名目に、給湯室に」
「今どき個包装じゃないのか?」
「……確かに」
おやぁ?これは、もしや。
轟課長、鎧塚課長に片思いですか?!
おやおやおやぁ〜。最後の悪あがきですかぁ?
いやいや、もう両思いだって、こっちは知ってますから。
轟課長の出る幕は、ありゃしねぇでやんすよ!
私は、ランチプレートのサラダをつつきながら、轟課長の破れるであろう恋心に、心の中で合掌した。
職場で男女が2人きりになれる場所は、少ない。
ならば、それを作り出すまで!
ということで。
鎧塚課長のために、勅使河原が出張から帰る直前から、塩素漂白剤をお湯で使用して、給湯室に人が入らないようにしてみた。
「……おい、備品の無駄遣いするな」
「応接室のふきん、使うだけ使って、誰も漂白しないから、汚くて」
「……くっ」
「男の人はそういうの、気づかないんですよねぇ〜」
轟課長の小言を聞きながら、ささっとふきんを洗う。
スマートフォンが短いバイブレーションで、勅使河原が戻ったことを伝える。
画面を見れば、鎧塚課長からひと言。
『今から行く』
ふきんを干し台に並べてから、くるりと回って、轟課長に告げる。
「さあ、これから鎧塚課長が来ます。あえて失恋の現場に立ち合わなくてもいいですから。
轟課長は早く」
「……失恋?」
「はい。鎧塚課長のことが好きなんですよね?分かってます」
「……ふぅん?」
不穏な声で轟課長が唸った。
おっと、踏み込みすぎたか。
「ほら、轟課長もサボってないで、戻って戻って」
背中を押して、轟課長を給湯室から追い出す。
おや?着痩せするタイプかな?
なかなかの細マッチョと見た。
初めて触れた轟課長の背中にちょっとときめきながら、給湯室から出る。
給湯室隣りの応接室に身を隠し、鎧塚課長が勅使河原を連れて来るのを待った。
轟課長と一緒に。
「……え?なんでいるんですか。早く戻ってくださいよ」
「お前が戻らないのに、俺だけ戻る理由がわからないな」
「ちっ、このデバガメが」
「お前もだろ」
「しっ!静かに!」
そっと、扉をしめて、耳をそば立てる。
「……すまない。ちょっと渡したいものがあってな」
「あ、はい」
おおっとぉ!
鎧塚課長、予想外にストレートな頼み方で給湯室に連れてきているぞぉ!!
勅使河原、分かってるだろうな?
分かってるだろうな?!
あれだけ飲み屋の個室で、恥ずかしい告白の練習台になったんだ!
"キャラのセリフじゃねぇんだよ!"って、どれだけ叫んだか!
女装キャラじゃなくて、男として言えー!
ぱたん。
給湯室の扉が閉まる音が聞こえた。
よし。
そうっと、応接室の扉をあけて、忍びのように給湯室の扉に張りつく。
そして、扉の小さなガラス部分に顔を貼り付けて、待つことしばし。
鎧塚課長のツンデレが、炸裂した……!
「その、勅使河原。一応、その、今日は、バレンタインで。
み、みんなにはもう渡したんだが」
「は、はい!」
「もう就業時間も終わったから、その、職場で渡すのも、おかしいから」
「は、はい!」
いえいえ!おかしくないですよ!
むしろ、ここに呼び出されている方が、よっぽど訳ありで、おかしいですよ!
「べ、別にお前のために買ったわけじゃないんだからな!」
「はい!わかってます!」
何も言ってませんよ!完全にツンデレのセリフです!
それと、勅使河原が運動部みたいなリアクションしてる!万年帰宅部の見本みたいな奴が!
「部下のみんなに配っているんだからな!つ、つつつ付き合いのある店の売り上げに貢献するためだ!
いいな?!
そこのところ、勘違いするなよ!」
余計にいい訳じみてますよ!
ふわぁ〜!緊張のあまりどもってる!
レア!どもる鎧塚課長!激レア!
「わかってます!あの!」
「なんだ?!」
「鎧塚課長!異性として、好きです!」
「ふぁっ?!」
言ったぁー!!
よくやった、勅使河原!
10文字未満の、この言葉を言えるようになるために、どれだけ血を吐くようなダメージを互いに受け続けたか!!
さあ、さあさあさあ!
鎧塚課長!
いえす!はい!うん!
どれでもいいから、答えてぇ〜!
「鎧塚課長、好きです」
勅使河原、お前、男だな!
トドメ刺しにいくなんて!
よくやった!
「えっと、えっと、あの、その、な」
もじもじと恥じらう鎧塚課長。
あぁ〜!!かわいいぃぃ!!
今すぐスマートフォンで盗撮したい〜!
いや、だめだめ。許可とらないと!
鎧塚課長だって、変装しながら女装の勅使河原の許可取って撮影してたんだから!
それにしても、あの部屋、勅使河原に見せられるのかなぁ。
でもでも、それより、今は、ちゃんと返事してぇー!
「………おい、何してんだ。さがら」
べったりとファンデーションがくっついているのにも気にせず、もう一度顔をガラス部分に近づけて、小声で答える。
「あ!今、給湯室は関係者以外の立ち入りは禁止です!轟課長でも、通せません!」
「……お前も関係者じゃないだろ。来い」
「あぁ〜!ちょっと!は、離してください!」
轟課長に、ずるずると引きずられながら、私は小声で叫んだ。
「課長かわいい〜!勅使河原、離すんじゃないわよ……!」
そのまま自販機前まで連れて行かれる。
「ほら、好きなもの、選べ」
「はぁい。ごちになりまぁす」
がこん、と、大きな音を立てる自販機。
「……勅使河原、ちゃんと告白できたぁ。よかったぁ」
ブルタブをあけて、缶コーヒーをちびちびと飲む。
「お前、勅使河原に彼女ができて、いいのか?」
「何言ってるんですか!この1ヶ月の私の努力が報われたんですよ!」
「お、おお?そう、なのか?」
「はい!鎧塚課長の激レアな恥じらいを堪能して喜び続けてましたが、それもこれも両片思いのふたりをくっつけるため!
私欲のためでは、ありません!」
「……いや、全部私欲だろ?」
「まあ、確かに」
ふっと、我に返って、素でうなずく。
「まあ、いいじゃないですか。
推しが推しを見つけて、ハッピーエンド。これ以上のハピエンは、ないですよ」
ふへへっと、私が笑うと、
「……それじゃあ、お前のハッピーエンドは?」
と、真顔で轟課長に聞かれた。
「……とぅーびーこんてにゅー?」
どこにあるんだか分からない。
私のハッピーエンド。
まぁ、それでも鎧塚課長のツンデレが見られたんだから、それでいいか。
「いいんですよ!みんなが幸せならそれで!」
「……猫、好きか?」
「はいい?なんですか、突然」
「この間、外階段に捨てられてた猫、飼うことになったんだが、猫、好きか?」
「え!あのみゃあみゃあ泣いてた子猫、飼うんですか?!見たい!触りたい!」
「じゃあ、一緒に住むか?」
「は?」
「……隣の部屋だから、通い妻でも、いいけど」
「はぁ?!」
眉間に皺を寄せながら、端正な顔を真っ赤にして、轟課長がとんでもないことを言っている。
「冗談……」
「ではない」
「……それって」
自販機のぶうん、という冷やかすような音が鳴り響いた。
〈後日談・ダブルデート〉
「うわあ!てっしー、まじでかわいい!鎧塚課長にもメイクしてくれた?」
「一応、百合本も出ているキャラで合わせてみたんだけど……どうだ?」
「……ちょ、これ、恥ずかしいんだが。カメラで撮る側かと思って来たんだけど……ガータースカートとか、初めて履いた」
「ふうー!!鎧塚課長!素敵!きれい!鼻血出そう!(鎧塚のカメラで連写)」
「……なぁ、なんで俺は執事服着せられてるんだ?」
「あ!轟課長!ふたりの横に立って!そうそう!
FOOOO!!えっくせれんと!
やべー!ゆりゆりしい!鎧塚課長!ちょっと足をその台にのせて……きゃああ〜!!」
「……だ、だめ、やめて、恥ずかしい……」
「………(俺の鎧塚課長がかわいすぎる)」
撮影後の相良離席中の会話。
「今度、騙し討ちでウエディングドレスの試着に、相良を連れ出すから。
メイクとカメラ撮影頼む。(そっとコスプレ屋外撮影ツアー付き旅行券を差し出す)」
「……わかった。撮影は任せろ」
「……メイク、がんばります」
(*´Д`*)はっぴーばれんたいん!