一人ぼっちの隊長
熱い息に合わせて体が揺れる、周りにはたくさんの敵が倒れている。それが日常で、慣れてしまっている自分が嫌になってしまう。戦争はいつまで経っても終わらず、戦うたびに慣れきっていく自分は……戦場に住み着いた鬼か何かだろうか。
戦火で焼け果てた地は乾燥し、土埃が簡単に舞う。ふと、空を見ると土と血を洗い流すように雨が降った。
熱い体に冷たい雨が伝うのを感じて、ため息を吐くように呟く。
「帰還するか」
そうやって呟きながら傷を撫でれば、何事もなかったかのように傷が閉じる。
特異な体は余計に自分を孤立させて、特攻戦術について来られる人もいない。
それもそうか。傷がすぐ塞がるような化け物と、生身の人間じゃ話にならないだろう。
この体を誰にも知られたくなくて、ずっと一人で戦うことにしていた。
こうやって自分が戦う理由を『国のため』と掲げて戦場にいるのは、こんな体で普通に暮らせるわけがないからだ。
『気持ち悪いっ、なんでそんな体に』
非難された思い出の声に『こっちが聞きたいよ』と思いながら戦地を歩く。こんな激戦の後なのに無傷で帰ってくる自分へ、冷たい視線が向けられる。離れていく同国の人たちにも慣れてしまった。
ずっと一人。どこに行っても、どこで戦っても。
いや隊には所属している、隊員がいないだけで。
だから揶揄されて、こう呼ばれるのだ『一人ぼっちの隊長』ってね。