表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/68

25 ガルディアスは見つめている


 王族や貴族にとって、自分の立つ位置はとても大きな意味を持つ。

 俺の名前はサルトス・フォリ・ラルドーラ・ガルディアス。軍では中尉として在籍している。

 何かと面倒なこともあり、エインレイドが心配で強引に国立サルートス上等学校の男子寮の寮監として入りこんでみたら、珍獣が二匹も男子寮に飛び込んできた。

 一人はウェスギニー・インドウェイ・アレンルード。ウェスギニー子爵フェリルドの嫡男でありながら、俺ばかりか、エインレイドの顔も知らなかった間抜けだ。

 もう一人の珍獣は、ウェスギニー・インドウェイ・アレナフィル。アレンルードの双子の妹だ。こっちは兄よりも救いがなかった。


(全てはウェスギニー家の教育方針が問題だとは思うんだが、事情を知ってしまえば仕方がないか。たしかに子供は何も考えずに口に出してしまう。母親が殺されたことを知らせたくなかったなら平民として育てるしかなかったのだろう)


 俺やエインレイドとて、この身分あっての俺達に対する皆の態度だと分かっている。身分がなければ、俺達には何が残るだろう。たしかに誰もが忠誠を誓ってくれるし、大切にもしてくれる。だが、それは俺達が彼らに与えるものがあるからだ。

 エインレイドは進学を境に変わってしまった友達の思惑に傷ついていたが、アレナフィルの影響か、そこまで思い悩む必要はなかったのかもしれないと、最近では考え始めた。

 本当の友情というものは違うものだと、アレナフィル達といることで気づいたらしい。

 

『アレル、僕の為にお出かけ計画出してくれてるんだよね。もういいって?』

『いや、まだ下見が終わってない。それならと周囲もチェックして、許可範囲を広げているところだ。お前だってもっと見てみたいだろ? あと少し待て』


 アレナフィルは糠喜びさせたくないからと、こっそり打診してきていたが、その手配をするのも俺達の業務の一つとなれば、とっくに王宮側も学校側も警備棟もツーカーだ。

 必然、エインレイドも知っていた。

 アレナフィルが打診してきたエリアより拡大して許可される見込みだからだ。

 

『そっか。うん。なんかさ、アレルって本当に言わないよね。だけど裏ではこっそり大事にしてくれるんだ。どうやったらそんな風に優しくなれるんだろう。僕、してもらってばかりだ。・・・だけど、みんなが僕に期待するようなもの、アレルは欲しくないと思う』

『そうだな。何かしてあげたいならお前だってアレナフィルと楽しめることを考えてみろ。本当の友達なんて持ちつ持たれつだ』

『うん。・・・そういうものなんだね』


 アレナフィル本人は、王子と仲良くなろうものなら、学校中の人達から通りすがりに足を引っかけられて転ばされ、上から花瓶の水をぶっかけられ、ロッカーにはゴミを入れられて服を切り裂かれてしまうと怯えていたそうだが、あいつはかなりのトリ頭だ。

 違うことに気を取られたら、それまで気にしていたことをすぐに忘れてしまう。

 変装していたら誰も王子の正体に気づかないしと、毎日仲良くエインレイドと過ごしていた。

 今回、エインレイド達は一年生ばかり五人で成人病予防研究クラブを立ち上げたが、クラブ棟のクラブルームを与えるよりも、警備棟の一室を使わせた方がいいのではないかと、そんな流れだ。

 教師の中にはクラブルームはクラブ棟と決まっていると、難色を示した者もいたらしいが、クラブ棟に映像監視装置を取り付けたり、クラブ棟で他のクラブに勧誘されたりする際にエインレイドの顔をまじまじと見られたりするよりはマシだということになった。


(どんな騒動が起きたとしてもその生徒が所属するクラブの顧問が責任を持つようにと伝えたからな。そりゃ誰だって怖じ気づくだろ)


 何よりアレンルードが他のクラブルームに出入りしている時、アレナフィルとすれ違ったりしたら双子だとすぐばれる。

 その時、アレナフィルの存在を隠そうとしたアレンルードがどれ程に怒り狂うかも分からない。

 アレナフィルがアレンルードとそっくりな恰好でエインレイドと一緒にいるのは教師全員が知っている事実だ。その上でコンテストなんぞの許可を取って王子の為に動いたアレンルードは、双子の妹に対する安全を学校側に要求したという。


(入学したばかりの生徒にあそこまで見事にやられちまったらなあ。教師だって何も言えなくなるだろ)


 本来、生徒一人の要望などあまり重きを置かれない。けれどもアレンルードは結果を出した。教師が踏みこめなかったそれに。

 そして使い勝手のいい生徒ということで終わらせない実行力を匂わせた。

 学校側もアレンルードが人を殺したことがあるというのは本当かと、父親であるウェスギニー大佐・フェリルドに問い合わせたらしいが、

「軍の特別作戦について調べるとは漏洩罪、反逆罪分野となるが、処刑も覚悟の上か? こちらも拘束し、尋問を行うことになる」

と、冷たく問い返され、即座に引っ込めたとか。

 教師達や経済軍事部において、アレンルードの存在は「触るな危険」と認識された。

 肝心のアレンルードは、普通の一年生として過ごしている。


『先生。王子様、きっとみんなに騒がれたくないからあんなことしてるんですよね? 僕の妹、その為に利用してるんですよね? それなら、協力してくれますよね? あの二人と違う時間割で、僕の授業も組んでください』

『あ、ああ』

『あと、僕が誰に絡まれていようが無視していいですけど、妹は別です。僕が、

「妹を傷つけられ、貴族の子供達を骨折させた」

なんて事件を起こさないよう、全ての先生に妹を保護してくれるよう頼んでもらえませんか?』

『そ、その心配は要らない。・・・これは内々のことだが、今後五年間、エインレイド様を含めて全ての男子生徒及び校内にいる男性から守り、必要ならば相手を強制排除すべしと、国王陛下が命じられた。君のお父上が指揮を執っておられる』

『あー、・・・あの父が。それはお騒がせしました。だけど安心ですね。では、どうかよろしくお願いします。何かありましたら教えてください』


 エインレイド達とは違う時間割での組み合わせをアレンルードはクラス担任に要請し、様々な校舎を渡り歩いて授業を受けている。アレナフィルを自分だと見せかける為だ。

 家族間の情報交換が全くできていないことには呆れたが、父親が放置していた理由もこうなると理解できるというものだ。


(あの双子、どっちも個人での対応能力ありすぎだろ。・・・息子を戦場で囮にしたっつー噂はあった。だから搾取する為の子供かとも言われていたが、それ以前にできる子だったってことかよ)


 警備棟にある第2調理室をクラブルームとさせれば、目も行き届く。

 エインレイドが参加するクラブが単なる運動や文科系ならばどこでも良かったが、王子が口にするものを作る以上、クラブ棟はあまりにも不用心すぎたのだ。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 警備棟の第2調理室は1階にあって、玄関を通らずに直接外から入れる大きな扉がついている。

 生徒達が出入りする際も、警備棟のメンバーと顔を合わさずにすむのだ。

 かつて大勢の兵士を学校内に配置し、だがどんな兵士が混じっているかも分からないということで警備棟内への立ち入り禁止とした際の名残りである。

 長く使われていなかった為、警備棟の責任者エドベル中尉・エイダルバルトは徹底的に清掃させた。

 下見にやってきたアレナフィル達を見かけて声を掛けましたといった体を装っているが、しっかり待ち受けていた彼は直接反応を見たかったらしい。

 外側から搬入口を開けさせてもらったアレナフィル達三人は、まず第2調理室のスペースに驚いた。

 

『うわぁ、広ぉい。調理台もこれだけ大きいなんて、お店みたい』

『アレルアレル、先頭で立ち止まらない』

『諦めろ、レイド。ビーバーはまず縄張り確認するんだ。あまりうるさく言うと、シッポで叩かれるぞ』

『棚もガラス扉ついてるっ。冷蔵庫と冷凍庫もあるっ。焜炉(こんろ)もあれだけあったら同時調理できるぅっ。調理台も一人一台、余裕で使えちゃうっ』


 背後の二人の言葉など全く聞いていないアレナフィルは、大興奮だ。

 一番後ろから見ていたエドベル中尉ばかりか、ここで映像を眺めている全員が笑い出しそうな顔になっている。 


『使えそうかい? ここはずっと閉鎖されていてね。欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれていいよ。すぐに回してあげよう』

『これ以上ないってぐらいに素敵ですっ。しかも埃だって全くなくてとっても綺麗っ。ほんっとに、ここいいんですかっ』

『勿論さ』

『えっと、焜炉(コンロ)動くかどうかとか、試してみてもいいですか?』

『ああ。清掃は定期的に入れていたが、それらは自分で確認してくれたまえ』


 エドベル中尉、実は徹底的にそこらを点検させた。少しでもぐらついたりしている物は交換した。

 きゃいきゃいと冷蔵庫や冷凍庫を開けて、ちゃんと冷えるかどうか手を突っ込んだり、水道の水を確かめたりする様子は、かなりしっかりしていると言えるだろう。

 

『お水も濁ってないですっ。あ、だけど長く使ってないなら、お水通した方がいいから、ディーノ、全部の水道栓開けて、ゆっくり30秒数えて、その間、出しっぱなしにしておいてね』

『ああ。水、出しっぱなしでいいのか?』

『そう。古いお水を出して新しくしないといけないの。水道管の中の剥がれ落ちた金属もそうやって洗い流しちゃうんだよ。全部を一気に出した方がいいの』

『へー、分かった』


 愚かな奴だ。清掃が入っているのならば水は使っていると気づかんのか。

 エドベル中尉の顔が、「清掃させた時に十分に水なら出したんだが」と、語っている。


『金属とか剝がれたりするものなの、アレル?』

『うん。どうしても古い物とかは仕方ないんだよ。それとかお水の中の成分とくっついてちょっと体に悪いお水になってることもあるの。お水が限られる場所なら贅沢は言えないけど、そうじゃないなら安全の為に、まずは一気に流しておいた方がいいの。ちろって舐めて金属臭がしたらアウト。使われてない別荘とかは特に要注意』

『・・・ん。大丈夫。変な味はしないし、金属片とかもなさそうだぞ、アレル。じゃあ、閉めるな』

『はーい』


 エインレイドとベリザディーノが、そういうものなのかと興味深げにしているが、この二人なら使用人もついていくから不要な知識じゃないのか。

 エドベル中尉の顔が興味深げになったのは、アレナフィルが、いずれ二人がどこかに出かけた時の知恵として教えている気配を感じたからだろう。

 生き残るのは危機管理意識の高い奴だ。そして王子には危機管理意識を高く持っていてほしい。

 アレナフィルからはどこかそんな感情が察せられた。


『あのね、レイド。今からコンロの火をつけてみるけど、あまり使っていない時は、変なガスが漏れる時があるの。だからね、爆発事故が起きにくいよう。風が直接当たらないような場所を少し開けるの。沢山開いたら、風で火が消えちゃう』

『このあたりでいい?』


 エインレイドが窓を細く開ける。

 王子様なんて恐れ多すぎると喚き立てる割に、アレナフィルは王子使いがとても荒い。頭が悪いんだろう。


『うん、完璧。でね、二人共。最初に使う時、こうして泡立てた液を管につけておくと、ぷわって膨らんだらガス漏れって分かるんだ。一人暮らしする時、古いおうちだと管が傷んでることもあるからね。見えない無臭のガス漏れを見つける方法、覚えておいた方がいいよ。特にこれは念入りにしておくこと。あれ、おかしいな? 泡が立つぞって思ったら栓を完全に閉めて、工事の人を呼んで管を交換。ガス爆発事故は死ぬか大怪我かのどっちかだよ』

『そうなんだね』

『よく知ってるな、アレル。そこは素直に感心する』


 そのチェックは完了している筈だが、エドベル中尉の眼差しが好意的になった。

 アレナフィルが二人に対し、見えない危険の確認方法を教えているからだ。

 上着を脱いでからガスの連結管をチェックし、一つに小さく火を点けて、アレナフィルは二人に説明し始める。


『服に火がついたら治らない大火傷になったりするから、絶対に火のそばで遊んだり、ふざけたりしちゃ駄目だよ。それでね、服の袖もすっきりしたものか、まくっておいた方がいいの。服に火が燃え移ったら大変だからね。上着も着てると焦がしやすいんだ。火を使う時はちゃんと上着を脱いでから。気をつけてね』

『うん、分かった』

『けどさ、アレル。下見に行くって言ったら、あの二人も来たんじゃないか? なんか馴染んでるし』


 ベリザディーノがダヴィデアーレとマルコリリオを誘わなくてよかったのかと問いかけているが、五人は仲良く一緒に授業を受けているようだ。


『そうかも。だけどほら、後から加わったから、二人共まだ気を遣ってるでしょ。あれなら大丈夫だと思うけど、たまにいるんだよ。女の子に注意されるのムカつくって男の子。そういう時は男の子から言ってもらった方がいいんだよね。最初は事を荒立てず、二人から言ってもらった方がいいかなって思う気持ちもあったし。

 幼年学校でさ、それで

「ボクだってできるんだっ。おまえ、ナマイキだ」

って、それまではおとなしく聞いてたのに、いきなりやらかして怪我した男の子がいて、それからはちょっと気をつけてる。最初のチェックって、どうしても私が指示しちゃうって分かってたし』


 はあっと溜め息をつくアレナフィルは、そんな自業自得にもまだ心を痛めているのだろうか。


『つまり僕とディーノはそれをしないと、信頼されていたと思っていいのかな』

『うん。レイドとディーノが知っていたら、二人に教えてあげられるもん。それに私が教えるにしても、二回聞けば、もう忘れないでしょ。安全確保ってとても大事なの。二人共、ちゃんと覚えておいた方がいいよ? 自分がまず自分を守る気持ちがなきゃ、どんな安全も守られないんだからさ』


 全ての焜炉に火をつけながら、アレナフィルは口を動かしていた。

 そして管に手を這わせながら不自然な泡が出ていないかをチェックしている。二人の少年も上着を脱いで腕まくりし、同じように管を触り始めた。


『けっこう頑丈な管だな。これなら大丈夫じゃないか? (さび)もない感じだ。どっちかっつーと、校舎の管の方が、錆とぐらつきがヤバイ気がする』

『そうだね。特に泡とかもなさそうだ』

『やっぱり一般家庭用よりも頑丈なのかな。警備員さん、やっぱりここって業務用のがっしりしたのを入れてるんですか?』

『そうだね。一気に数十人の食事を作っていたこともあったらしい。だから、かなり頑丈なものを入れていた筈だ。だけどアレルちゃんの安全チェックは立派だ。やっぱりお父さんから教わったのかな』


 褒められて、嬉しそうにアレナフィルが笑う。ぴょんぴょんと跳ねるような軽やかな動きで火を消していった。


『えへへへー。叔父に教わりました。何があろうと口にするものは全ての道具から材料まで点検しろって。特に山とか、自然のガスが発生している地域もあるそうなんです。臭いのないガスには気をつけろって、見えないガスチェックの仕方を幾つか教わってます』

『ああ、なるほど。それは大事だ。だが、叔父君は貴族だから士官から始められただろう。そういうことをするのは兵士の役目の筈なんだが』

『ああ。それはですね、貴族だからしなくちゃいけなかったみたいです。特に上等学校だとクラブ活動で、みんなで別荘にお泊り合宿とかもあるそうなんです』

『ああ、そういえばそうだね』


 大抵、軍に入るような人間は運動系のクラブ活動経験があるものだ。エドベル中尉も例にもれず、そうだったらしい。

 映像を見ているこのメンバーにしてもクラブ活動経験はあるだろう。俺はないが。


『男女混合でしょ? お料理もみんなで作ったりするじゃないですか。そうなると、恋が叶うおまじないとかで、キスした氷砂糖やチョコレートや、眠り薬とか血とかを入れる人、ちょくちょく出るらしいんです。食べさせられた男子生徒達が知らないだけで、大抵のかっこいい生徒はそういうの食べさせられているらしいですよ。特に手作りお菓子はヤバイです』

『え・・・』


 軍に入った奴で、そんなのを今更気にする者はいないだろうが、映像を見ていた皆の動きが止まった。


『それぐらいなら最初から全てを点検し、つきっきりで自分も一緒に作れば変なものを入れられたりしません。叔父は女子生徒とお料理も一緒にしてたので、他の男子生徒に馬鹿にされたらしいですけど、おかげで安心安全だったみたいです。特に人気があった男子生徒なんて、色々な人がおまじないを入れた物を食べさせられたらしいですよ?』

『そ、そうなのか』

『はい。叔父、見てないフリして見てたんです。だから自分の作った物を食べないかと声をかけようとしたら、先に

「お前は自分で作るしかないんだな。僕は女の子達が作ってくれるけど」

と、自慢されて言う気が失せたそうです。その男子、食べ終わった途端、寝こんだんですって』

『え・・・』

『叔父は、女の子に危険な作業はさせたくないからって、切ったり火をつけたりする作業を全部担当したから、叔父のグループが一番美味しくて、女の子もいっぱい集まったらしいです。・・・ほら、この二人、見てくださいよ。どう見ても知らないうちに眠り薬を盛られる顔だと思いませんか?』


 アレナフィルがエインレイドとベリザディーノを、エドベル中尉に示す。

 肝心の二人は、表情が固まっていた。


『どう見ても、いずれ女の子に狙われますよね?』

『あ、・・・ああ、そうだね』


 サルートス国の王子とアールバリ伯爵家の息子だ。色々な意味で狙われるだろう。


「さすがアレルちゃん。安全の意味がいきなり変化している。しかも叔父のモテ自慢」

「物理的な危険対策から、さらっと色仕掛けリスクに移行したな。その眠り薬の分量が気になる」

「寝てしまった男子生徒はどうなったのか」


 映像を見入っていた何人かが呟いた。


『だけど道具のチェックとかもできる男の子なら、ちょっと手出しは控えますよね?

 ああいうのはばれないって思うからやるものであって、目の前でやるものじゃないです。私もいつかレイドとディーノが眠り薬を飲まされて襲われる日を思うと、せめて自衛の知識だけでもって考えちゃうんです。友達だから』


 悲し気な表情で訴えるアレナフィルだが、あの無力さをアピールするような仕草にあまり意味はないのではないかと、俺達は気づき始めている。


『あのさ、アレル。そこで僕達、守ってくれないわけ?』

『全くだ。何を不吉な予言してるんだよ。そんなら女子生徒の中に混じって、アレルが監督しといてくれればいいだけだろ』

『えー。女の子が男の子を狙う時なんて、私、真っ先に排除されるもん。そこは自分でどうにかしなよ。男と女の事に友達は口出しできないの。それまでにお料理得意になれば大丈夫だよ。うちの叔父も、コレやばいって特訓したんだからさ。一緒に作ろうって言えば好感度下がらないよ』

『・・・大変だったんだね。だけど受け取らないか、食べなければよかったんじゃないの?』


 エインレイドの言葉がとても常識的だ。見ていた俺達もうんうんと頷いた。


『身分の高いお嬢様はね、結婚相手にはうちを選ばないけど、恋のときめきや甘い時間の為なら近寄ってくるんだって。叔父ってば色々なスポーツで目立ってたから。だけど人の縁なんて分からないでしょ? 叔父も深入りせず、恨みを買わないよう苦労してたみたい』

『見たことないけど、お前の叔父さんに同情する』

『それ、ディーノ達もそうだよ? 数年後にはスポーツとかで目立ったりして、女の子にきゃーきゃー言われるかもしれないでしょ。その時に冷たい対応して、その子がいつか自分の兄弟や親戚の縁談相手になったらどうするの? その時、ディーノのおうちにとってまとめたい話だったら? もしくはいつかディーノに娘が生まれて、その女の子にも息子が生まれて、子供同士が結婚したら? ディーノの娘が、かつての恨みで嫁いびりされちゃうんだよ。そういうことも考えて、無難にやり過ごしておいた方がいいことってあるんだからね』

『どこまで遠い未来に話を広げてんだっ』


 ばしっと言いきるアレナフィルに、ベリザディーノも顔を真っ赤にして小さく怒鳴りつける。


『んもぅ、子供なんだから。さて、これなら大丈夫。明日が第一回目のクラブ活動。仲良くやれるといいなぁ』

『大丈夫そうだけど。ディーノもダヴィとなんか気が合ってるっぽいよね』

『お互いに顔は知ってたからな。こっちにしてみりゃレイドとアレルが市立に通っていたってことが信じられないよ』


 三人は案内してくれたエドベル中尉に「ありがとうございました」のお礼を言っているが、アレナフィルだけに、つい彼が手を伸ばして頭を撫でてしまったのは、無意識だったのだろう。

 撫でられたと知って丸い目を大きく見開き、次の瞬間には嬉しそうに笑う表情がとても可愛くて、つい見入ってしまった。・・・・・・不覚。

 いや、本当に顔は可愛いんだ。顔はな。




― ◇ – ★ – ◇ ―




 次の日、第2調理室には、五人の生徒がやってきた。


『第一回クラブ活動は、必要な物の買い物に行こうと思います。マイカップは各自一個、予算は1ロン内で好きなものを選んでください。

 ハーブティー用ポットとティーカップ、保存用瓶はガラス製で1ローレ以内だけど2ローレまでなら大丈夫。そしてプランターはとりあえず10個程で5ロン以内。少しぐらいならオーバーしてもいいけど、常識的な範囲でお願いします。

 ハーブの苗は潰れたらまずいから、明日にでも有志で行くことにしましょう。プランターに入れる石や土は、明日、うちから持ってくるね』


(※)

1ロン=1000円

5ロン=5000円

2ローレ=2万円

物価的に貨幣価値は1.5倍なので、感覚として1ロンは1500円、5ロンは7500円、2ローレは3万円

(※)


 (しょ)(ぱな)からリーダーしている女子生徒がいるのだが、お前な、昨日、女が指示したら反発する男がいるって悩んでなかったか?

 もう忘れたのか? ああ、こいつ一晩で忘れそうだな。


『あのね、アレル。いくら何でも女の子が土を運んでくるのは無理だよ。それならガーデンデザインクラブか園芸クラブから土や堆肥を小分けしてもらえばいいんじゃないかな。代金はクラブ費用から支払う形で。プランターも持ってると思うよ。形や材質に(こだわ)らないなら、使ってないのを安く譲ってもらえばいいんじゃない?』

『リオ、ナイス。よく知ってるね』

『うん。お試し体験した後だからね』

『それもそうだった。じゃあ、他に何か必要な物ってある?』


 暗い苔の緑色(モスグリーン)の髪をしたマルコリリオに、ハーブを育てる為に必要なものを書き出させていくアレナフィル。この作業は押しつけておこうと、そんな思考が顔と言葉に滲んでいる。


『なあ、アレル。たしか菓子も作るんだろ? よく分からんけど、鍋とかいるんじゃないのか?』

『そっちはもう私が買ってくるよ。そういうの、一度オーブンを動かしてみないと分からないからさ。最初は家で余ってる鍋とか型とかを持ってきてみる。良いのを買っても、無駄になったら悲しいし。高ければ使いやすいわけじゃないしね。火の通り具合も耐熱ガラス製ってちょっと・・・なことあるし』

『それは、金属製やガラス製とかで違いが出るということか?』


 質問したのはベリザディーノだったが、ダヴィデアーレが重ねて問う形になっている。


『うん。本当はガラス製の方が見た目も分かりやすいし、ハーブティーのポットとカップもそっちを考えているけど、食べ物は理科の実験じゃないからね。ガラス製じゃない方が味がいいかもって思ってる。だけど金属製だと熱が通り過ぎることもあるしね。比較するのも面白いかもしれないけど。ダヴィ、そういうの、比べてみたい人?』

『できればね。無理にとは言わない。材料を無駄にしてまでのことじゃないだろう』

『別に遠慮しないでいいよ。毎回、そういう記録をとっていけば、研究しましたって気分も出るよ。じゃあダヴィが記録係やってくれる? 私、多分、やったらやりっぱなしだから』

『ああ。そんな感じだな』


 知り合って間もないのに、アレナフィルの性格が把握されていた。

 それを気にしないところがアレナフィルなのだろう。


『で、ディーノが会計ね』

『いいけど、なんで僕だ?』

『だってレイドだと、支払いの際に「今ならこれもつけて幾らだよ」とか言われて断りきれずに買いそうじゃない? ディーノはそこらへんがけち臭そうだし、無駄遣いしない気がする。そしてリオが植物の世話し始めたら、そっちにかかりきりになりそうでしょ。あ、軍手とかスコップとか、必要なのは買ってあげてね。これが出納帳(すいとうちょう)と最初のお金。まずは5ローレ (※) 』

『誰がけち臭そうだよ。本当にお前、可愛いのは外見だけだな。ま、レイドはたしかに売りつけられそうなとこあるか』


(※)

5ローレ=5万円

物価的に貨幣価値は1.5倍なので、5ローレは7万5千円

(※)


 ベリザディーノがエインレイドを見て頷く。その評価にエインレイドは戸惑っているようだ。


『だが、それだと僕のやることがなくないか?』

『そうでもないよ。レイド、私のお手伝いだから栄養価表とか忙しいよ。クラブ活動が本格的に始まったらみんなで協力してお茶を淹れたり、お菓子作ったりするしね。調べ物も出てくるし、どういう市販品があるかも市場調査するよ。その上で、みんなで味見した時とか忘れずにダヴィが記録しなきゃいけない責任者で、そして植物はみんなで水やりとかするにしても、一番この中で上手そうなリオに監督者をお願いするんだよ』

『ちょっと待ってっ。アレル、みんなもその水やりっ、やらなくていいからっ』

『へ? なんで?』


 マルコリリオが焦ったように小さく叫ぶ。アレナフィルが、針葉樹林の深い緑色(フォレストグリーン)の瞳をぱちくりとさせた。


『みんながまちまちに水やりしたら一気に根腐れしちゃうよ。いーい? なんかみんな分かってなさそうだから言うけど、土が湿ってる程度でいいのにみんなが水やりなんかしたら常に水浸しになっちゃうんだからねっ。腐っちゃうよっ。変に気を遣って、かえってひどいことしないでよ? そっちは僕が一人で世話するから』

『待てよ、リオ。それなら世話の仕方を札に書いて、プランター毎に表示しておけばいいんじゃないか? そういうのもクラブ活動の内だろ。基本的にリオが世話するにしても、抱え込まずにみんなを使えよ。僕達だって何も育て方を分かってないんじゃクラブ活動の意味がないじゃないか』

『う。そうだね。うん、そうするよ。ごめん、言ってくれてありがと、ダヴィ』


 どんなものかと思ったが、それぞれに自分の意見は言えるようだ。

 後から加わった二人は、自分の進路にも重なる知識が欲しかったのだろう。


『まずは自分のカップを買いに行こうよ。あとね、基本的にクラブ活動では飲み物ってお水らしいけど、私達、五人しかいないから、必要経費の中からお茶代ぐらい出せると思う。みんな、好きなお茶とかコーヒーとか高くないなら買えると思うよ』

『あのさぁ、アレル。たしかそのお茶がハーブティーなんだよな? 僕、普段からそういう健康的なお茶を飲むのかと思ってたんだけど』

『そうしてもいいけど、健康にいいハーブティーを試飲したりするのとは別に普通のお茶も飲みたいでしょ? 私ね、コーヒーはミルクと砂糖と生クリームとキャラメルクリーム入れるのが好き』

『・・・それ、本当に飲み物か? もう菓子じゃないのか? 凄く甘そうなんだが。本気でアレル、クラブ活動内容とは真逆の方向に生きてるんだな』

『文句あるなら飲んでからいいなよ。甘くて美味しいよ。ダヴィは食わず嫌いなんだね』

『ええっ?』


 健康に根差した知識を追求するつもりだったらしいダヴィデアーレが、がぁんとショックを受けた顔になっていた。

 さて、うまくやっていけるのか。それとも途中で分裂するのか。


『それよりみんなでお出かけって楽しそうだよね。私ね、ワニの形をしたカップとかディーノにピッタリだと思うんだ』

『なんだそりゃ。目ぇつけてたんなら自分で使えよ』


 今日の買い物は警備棟から士官や兵士も出て見守る形をとる。

 他の少年三人が何も知らない以上、多少はルートをずれてもいいと言ってはあるが、エインレイドも楽しみにしていたようだ。


『やだよ、あんな使いにくそうなの。だけど取っ手がワニのシッポで、ワニの(あご)がカップからうにゅって出てるんだよ。絶対面白いよ』

『自分が使いたくない物を人に勧めんなっ。そんならレイドに勧めろよっ』

『レイド、勧めたら嫌だと思ってもそういうものかもしれないと思って我慢して笑顔で使いそうでしょ。そういうイジメはいけないんだよ。ねー、リオ? ダヴィだっていじめはよくないって思うよね?』

『僕にならいいというのかっ』


 ベリザディーノとアレナフィルが口喧嘩っぽいやりとりなら、ダヴィデアーレは真面目に考えてから口を開くタイプだ。

 同意を求められ、ちょっと考えたらしい。


『ディーノならいじめられてないからいいんじゃないか? とりあえず僕も断る。レイドは無駄に女の子に遠慮しそうなところがあるから、たしかにいじめになっちゃうな』

『ごめんね。僕もそういうのを使うのは嫌かな。レイドも嫌なことは嫌って言った方がいいと思う』


 マルコリリオはおとなしいが、問われればはっきり自分の気持ちを伝える少年だ。

 ベリザディーノとアレナフィルが発進(スロットル)なら、ダヴィデアーレとマルコリリオは制動(ブレーキ)か。エインレイドは、皆の勢いに乗り遅れ中だ。頑張れ。


『え? 何それ。君達のその思い込みがどこから出てきたか知らないけど、僕だって勧める本人が使わない物を使いたくないよ。それより必要な物リストに、リオのお世話札も書いておきなよ、アレル』

『うん、レイド書いといて。みんなでやるのが大事なんだ。ほら、お仕事いっぱいでしょ? あ、そうだ。図書室から植物図鑑も借りてこないとね。あと、ハーブの効果事典もあるかなぁ。五人で行けばかなり借りられそうだよね』

『アレルが思いつくままの垂れ流しを記録するのが副長の仕事だとは・・・。苗を買ってきたら次は図書室っと』


 五人が楽しそうにわいわい騒ぎながら出かけた後、残されたテーブルの上にはメモや予定表が散らばっていた。

 少年と少女のペアといった組み合わせなら変な奴に絡まれることもあったかもしれないが、あの五人ならば大丈夫だろう。護衛をつけるまでもなく、あんな元気な集団に危険はない。


「あいつ、本当に子爵家のご令嬢か? 普通、全て新品の高級品じゃないと許せないわ、キーッてなるもんじゃないのか? 鍋とか、家で余ってる中古や安物でもいいのかよ」

「学校側もそう思ってクラブ予算を多めに出していたそうですが、なんだか浮いたお金を自分達の飲食費に使う気満々でしたね。しかもあの予算、かなり堅実的な・・・」


 警備棟責任者・エドベル中尉も困惑した表情だ。

 王族が一人、伯爵家が二人、子爵家が一人、平民が一人の五人グループだ。一流品の食器を使うかと思っていたら、なんだか一般市民の金銭感覚によるマグカップ予算が映像の中で語られていた。


「別にいいのでは? あのお嬢さんならきっとエインレイド様に、変なおまじない入りの差し入れを食べなくていいようにしてくれるでしょう。軍手なら倉庫にもあると思いますが、中古の鍋だって埃をかぶっていたと思います。ちょっと運んできます。使わないのは引き取ればいいでしょう」


 淡紫混じりの桃色(シクラメンピンク)の髪を掻き上げたボンファリオが、楽しそうに笑って部屋を出ていく。

 そうなれば皆も、第2調理室に色々な物を運び入れ始めた。使用感はあるものの、鍋や食器、調理道具などを調理台の一つに積み重ねておく。

 コンクリート打ちっぱなしの床には、土の入ったプランターや名前札、スコップなどが置かれた。

 やがて沢山の荷物を手分けして抱えて戻ってきた五人だが、アレナフィルは調理台の上に置かれた食器や鍋に、まず目が行ったらしく、「おおおお」と、感動していた。


『なんと。これで我が家の物置をあさらなくてすむ。ここには家事の妖精(ブラウニー)さんが住んでいた・・・』


 お前はどこのファンタジー世界の住人だ。


『いや、アレル。横着すんな。ほら、お礼言ってこようぜ』

『やっぱり警備員さんだよね。メモ見て、それならって、くれたんだよね。どうしよう、いい人達すぎる。こんなにお鍋取っちゃって、明日から使うお鍋ないかもしれない』

『さすがにそれはないだろ。埃をかぶってる様子を見ると、使ってなかったんじゃないか? メモ見て、それなら余ってるってくれたんだろ。ちょうどよかったじゃないか』

『うん。・・・えへっ。重い荷物持ってこなくてすんだぁ』


 ベリザディーノに向かって笑顔を見せるアレナフィルは、本当に嬉しそうだ。映像を見ていたアドルフォンとボンファリオが照れくさそうに笑う。

 五人は警備棟の休憩室に行ってお礼を言ったようだ。

 しかし買い物の量、多すぎないか?

 

「なんか元気なの、二人だけじゃないか? 他の三人、へばってないか? あの荷物は何なんだ。カップとかにしては多すぎないか?」

「荷物はともかく、思うにアレナフィル嬢の元気さについていけたのが、普段から体を動かしていたアールバリ家のベリザディーノ君だけだったのでしょう。エリー王子は、人に酔ってしまったのかもしれませんね」

「ああ、なるほど」


 マレイニアルの言う通りかもしれない。

 思えばエインレイドは、人ごみの中を歩いたことも初めてだっただろう。




― ◇ – ★ – ◇ ―




 昨日の友達と一緒に行く買い物とやらは、エインレイドにとって衝撃を受けることばかりだったらしい。

 乗り合い路面車もアレナフィルの真似をしてコインを入れて乗ったが、誰も初めてとは気づかなかったそうだ。揺れるから先にバーを握っていなくてはならないことにも驚いたらしい。


「本当に立ったままで乗り続けられるんだね。転ぶ人もいないんだ」

「俺達の場合、個室で座席もしっかりしているからな」

「それに歩きながら、お菓子を食べちゃったんだよ。怒られたらどうしようってドキドキしちゃった。だけどパンを食べながら歩いている人もいたんだ」


 揚げ菓子を途中で買って皆でつまみながら歩くというのも、他の伯爵家の息子達も気にせずやっていたものだから、試してみたら美味しかったそうだ。あとでアレナフィルからは

「お行儀悪いから、内緒ですよ」

と、囁かれたらしいが、護衛が見ていることをあの珍獣はどうやら忘れていたらしい。アホだろ。

 そして四人も荷物持ちがいるとばかりに、アレナフィルは色々な物を買いこんだ。

 物陰から見守っていたグラスフォリオンは、自分用の物は別予算としてまとめ買いで値切り、その大量の荷物を持たされる羽目になった少年達の顔に腹を抱えて笑っていたらしいが、兵士達は

「適当な理由をつけて堂々と同行すればよかった」

「そうすれば代わりにお持ちできたのに」

と、地面に膝をついていたとか。

 今日の映像でも、放課後のアレナフィルは人使いが荒かった。


『じゃ、リオ。ダヴィと安くていい苗か種を選んできてね。なかったらないでいいからさ』


 苗を売っている市場はちょっと離れた場所にあり、そこまでは外出許可を取っていなかったからだろう。アレナフィルは適当な理由をつけて、ダヴィデアーレとマルコリリオの二人で行かせることにしたのだ。


(人使いが荒すぎて、エリーが突発的な外出を許されていないことに気づかれないってのもな)


 知り合って短いダヴィデアーレとマルコリリオだが、特に問題なく二人で行くことを了承した。アレナフィルが植物の育成を二人の管理下としたからだ。


『大丈夫じゃないかな。あそこはかなり有名だし。ダヴィが気になる薬草とか香草も買っていいんだよね?』

『うん。どうせならみんなで楽しみたいからね。予算オーバーしない限り、実がなる苗とか、リオが育てられそうなら幾らでも買ってきていいよ。ダヴィの薬効がある木とかも。ただし鉢植えサイズね。できれば毒はやめてね。なるべくみんなが口にできるものにしてね』

『当たり前だろう。何かあった時に自分でさっと使えるものがあるならというだけの話だ。じゃあ、明日、持ってくる』

『うん。私が行くと、果樹とか買いこみそうだもん。じゃ、よろしく』


 クラブ活動の為の第2調理室には、クラブ活動とは違う予算で買いこんだアレナフィルの買い物が、今、一番スペースを占めている。

 二人を見送ったアレナフィルは先にエインレイドを警備棟に行かせて、ベリザディーノと教室で二人きりになっていた。


『で、どしたの、ディーノ。二人で話したいって』

『なあ、アレル。やっぱりあの断り方はまずかったんじゃないか。もう少し恥じらいながら、

「まだそんなこと考えられなくて・・・」

って、お断りにしといた方が良かったと思うぞ』

『断ったって? 宿題? ちゃんと手伝ってあげたじゃない』

『違うっつーのっ。お前が、

「君には惚れたよ。仲良くなろう」

って言われた奴っ。上級生から言われただろっ』


 もしかしてベリザディーノがアレナフィルに男女交際でも申し込むのかと思って映像に見入っていた面々は一気に頭を抱える。

 映像監視装置とて万能ではない。こちらも常に見ているわけではないし、死角がないわけでもないのだ。何かの際にアレナフィルが告白されたのだろう。


『ああ、あの変な人と、お取り巻き達。うん、だからディーノが言う通り、断ったじゃない。恥じらいながら、まだそんなの考えられないって』

『全然違うだろっ。お前は相手の体を値踏みしてからっ、

「男は社会に出てから評価するポリシーなので、お子様に興味ないんです。十三年後に縁がありましたらお願いします」

とか言ったんだろうがっ』

『意味、一緒』

『十三年後って、どんだけだよっ。赤ちゃんから育つっつーのっ』

『私の見たところ、彼が成長するには少なくともそれぐらいはかかるかと・・・』

『お前の方が育っとらんっ』


 叫んだベリザディーノだが、すぐに気を取り直した。


『まあ、お前はそーゆー奴だ。ビーバーだからしょうがない。だからアレル。ちょっと付き合え。仲良く見せつけて、あとは別れ際に抱きしめるフリでもしとけばいいだろ。・・・どうやら男爵家の息子らしいし、俺になんか言ってきたら、うちは伯爵家だ。どうにかなる。レイドが知ったら真面目に対応しそうだからな』

『おお。ディーノが男の友情を見せている。レイドに言わなかったの、巻き込みたくなかったんだ』

『そりゃあな。だってあいつ、殴られたりしたら黙って受けそうじゃないか。アレル、その代わりに伯爵家の息子狙いって思われるけどいいか?』

『えー、私、ディーノは好みじゃないんだけど。よそのお嬢さんの恨みなんて買いたくないよ』

『はいはい。いいアライグマかタヌキがいたら紹介してやる。ほら行くぞ、ビーバー』


 こいつはもうどうしようもないなと、ベリザディーノがアレナフィルの手首をつかんで連行していく。

 エインレイドの正体を知らないというのに、アールバリ家のベリザディーノはいい子だ。

 そこは感心するが、見ていた俺達はちょっと疑問に思った。惚れたというが、そもそも男子生徒といつも一緒にいる女子生徒を好きになる奴がいるのかと。

 そして貴族の子弟は大抵が経済軍事部だ。アレナフィルのクラブに入った二人は、はぐれ者としても。


「アレンを呼んでこい。でもってエリー達の授業、経済軍事部には立ち入らない時間割にさせろ」


 これでいちゃいちゃしていたら、逆効果もいいところだ。

 俺の顔は、貴族の息子なら誰もが知っている。どこぞの子爵の息子は除くが。

 ここはボンファリオを行かせるべきか。




― ◇ – ★ – ◇ ―




 ボンファリオはアレンルードと一緒に、ちょうどベリザディーノとアレナフィルが校門前で仲良さそうに立ち話している様子を少し離れた場所から、

「ちくしょう、抜け駆けかよ」

「何が違うってんだ」

と、睨みつけていた上級生達の横を通り過ぎたらしい。


『あれがお前の弟か、アレン』

『そうなんですよ。僕と違って女装はしませんけどね。体も弱いし、人見知りも凄いんです。だけど友達ができたならよかった。さすがに僕がシュートゲームとかドレスコンテストしたの、弟は知らないんですよね』

『どうせ校舎も別だ。あの時限りだったんだからよくないか? それより入るクラブ、決めたのか?』

『はい。頼りになる上級生がいて相談にも乗ってもらってます。お試し体験もさせてもらいました』


 アレナフィル達を恨みがまし気に見ていた上級生達は、ボンファリオと仲良さそうに話しているアレンルードに、あれ? あれ? と、なったとか。

 手を振ってボンファリオと別れたアレンルードが一人になったところで声をかけてきたそうだ。

 ボンファリオが物陰から見守っていたところ、

「上級生にお友達が増えるの、心強いです。よろしくお願いします、先輩方」

などとアレンルードに言われ、アレナフィルと違って素直そうな笑顔に、

「勿論だ。何でも相談してくれ」

と、たちまち仲良くなったらしい。

 早速、男子寮の外に設けられたテーブルとベンチエリアでお喋りしていたそうだが、見かけた寮生達も声をかけて参加するものだからかなり賑やかだったらしい。

 誰だって味方になってやろうと声をかけて十三年後に出直してこいとか言われたら怒るだろ、そりゃ。

 その点、アレンルードはただのやんちゃで人懐っこい少年だ。見た目も可愛い。

 改めてみんなで一緒にクロスリーボールをする約束をしたようだ。


(なんで女の妹より、男の兄の方が上級生男子達を(てのひら)の上で転がしてんだ?)


 この際とばかりに、アレンルードは上級生達から情報を集めていたそうだ。いいトレーナーのいるクラブや、学年ごとで気をつけなくてはならない行事やその約束ごとなども。

 育ててやりたいと思わせてしまうのがアレンルードの強みか。

 

(その点、妹はどこまで自分一人の幸せを追求してんだろな)


 何も知らないアレナフィルは校門のところでベリザディーノをハグしてから見送った後、第2調理室でエインレイドと二人でレムレム茶を飲みつつ、お喋りしながらオーブンで何やら焼いていた。

 俺や寮監をしている奴らとしてはやはり友達なら双子の兄の方が性根もまっすぐでいいと思うのだが、エインレイドにとっては双子の妹一択らしい。

 アレンルードが目標に向かって一直線に進むなら、アレナフィルは矛盾と蛇行が面白い生き物だからだろうか。

 この双子はそれぞれに評価が分かれ、寮監側がアレンルードなら警備員側はアレナフィルだ。

 肝心のエインレイドは、アレンルードのやらかした勝負とコンテストには感謝するものの、あれでやっぱり僕には無理だと分かったと呟く。


『ねえ、アレル。なんか君だけクラブ長権限で棚、かなり占領してない?』


 クラブ人数は、五人だ。だから壁添いにある棚だって一人で一つの棚を使っても余裕は十分にある。そしてカバンと上着と少々の私物を置くのなら棚の半分程度しか使わない。

 他の生徒が一つというのに、アレナフィルは棚を三つも占領してしまった。

 エインレイドも呆れるものがあったらしい。

 しかし棚の中身をチェックした俺達は仕方ないと思ってもいた。四人に荷物持ちをさせて買いこんできた量が多すぎたのだ。


『色々とあるから仕方ないんですよ。だってクラブ活動は多くて週に三日。私達は毎日ここに来ているのに、どんどんとクラブ用の物を消費していたら不公平になります。それに使い始めたら使わせてあげますけど、やっぱりいい道具っていうのは使い勝手が違うんです。だけど学校のクラブ活動にそこまで良い物は必要ありません。私の棚の中にある道具は私のですから』


 アレナフィルは、キャラメルシロップやチョコレートシロップ、蜂蜜も数種類、ジャムや砂糖漬け、ココアや紅茶も数種類、そしてコーヒー豆、焙煎用グッズ、おろし金、泡だて器数種類、粉ふるい、香辛料(スパイス)や小麦粉、ジャガイモ粉、トウモロコシ粉、数種類の乾燥豆、塩や砂糖といったものを自分の棚に詰めこんでいた。


『アレルの気前が良いのか悪いのかが分からない。だけど今のお菓子は普通のお菓子なんだよね?』

『ええ。まずはオーブンのクセをつかまないと。どこの位置が焦げやすいとか、どういう型だと火が通りやすいか、通りにくいかも。まずは普通のお菓子を焼いてみて、それを見ていきます。初めてお料理やお菓子をする人が、そこで失敗して(つまづ)きやすいんです。先に私がオーブンのクセを把握しておけば、失敗しにくいですからね』


 アレナフィルは、いくつものレシピ本を見た上で、大体のレシピを書き出していた。

 それぞれ違う著者のものだが、それらを参考にして自分のノートに自分なりのレシピを作りたいようだ。 

 

『ん、焼けた。やっぱり途中で上段と下段をひっくり返せばよかったかな。まあ、生焼けじゃないからいいや。・・・ほら、見てください、レイド。二回目でもやっぱり少し焦げている位置とそうじゃない位置があるでしょう? そして上段と下段の焼け方も違うでしょう?』

『あ、そうだね。焼き色が一回目よりはっきりしてる』


 一回目のクッキーは、少し離れた場所で放置されている。比べてみれば、焼き色の違いも分かりやすい。

 エインレイドは、そういうものなのかと思ったようだ。


『余熱したつもりでも、やはり一度目はそこまでオーブンの中が熱くないってことです。だから二度目の方がもっとオーブン内が熱くなっていて、焦げやすいんです。こういうクセを把握しておかなきゃいけないですね。私達の場合、人数的にも一度で終わるとは思いますけど』


 変なものを入れていないのは作業を見ていたから分かっている。だが、アレナフィルの料理の腕が心配だ。

 目くばせすると、ボンファリオが出ていった。そしてしばらくすると、第2調理室にコンコンというノックの音が響いて、淡紫混じりピンク(シクラメンピンク)の髪をしたボンファリオの姿が映る。


『甘い匂いが漂っていますね。上手にできましたか? エリー王子も楽しそうな声が廊下まで響いていましたよ』

『あれ、寮監先生。レイドの様子を見に来たんですか? 簡単にどこの位置が焦げやすいか、どこの位置だと火が当たりにくいかを見てたんです。少し冷ましてから食べてみて、さくっとするかどうかをたしかめてみるつもりです。明日はケーキを焼きますけど、生焼けだとまずいし、レイドには食べさせないから大丈夫ですよ』

『えっ!? なんでだよっ。一緒に作らせといて、僕、食べちゃいけないのかっ?』


 今、焼いているクッキーは冷めてサクサクになったら食べていいと言われていた。しかし明日のケーキは食べられないとはどういうことかと、エインレイドがショックを受けている。


『何言ってるんですか、レイド。生焼けのお菓子であなたがお腹を壊したら大変です。レムレム茶は私が一緒に飲んで毒見してますけど。そんなに口寂しければ、明日はナッツを軽くローストしたのを食べていいですよ。今から焼きますから』


 卵や牛乳も新鮮じゃないと危険なのだと説明するアレナフィルは、食中毒リスクを考えたらしい。

 アレナフィルが自分の棚からナッツを取り出し、ざらざらと天板に入れ、オーブンの中に放りこんだ。

 ボンファリオにもポットのレムレム茶を入れて渡し、一回目のクッキーを皿に入れる。

 一番薄い焼き色のものを食べたアレナフィルが

「ん。大丈夫。食べていいですよ」

と、二人の間に皿を移動させた。

 ボンファリオが一口食べる。その顔を見ると、悪くない味だったのだろう。

 エインレイドも美味しそうに食べ始めた。

 

『ウェスギニー君は本当に手際がいいですね。そんなに沢山ナッツを焼いてどうするんですか?』

『ローストして蜂蜜に漬けこんでおきます。健康を考えた場合は素焼きのアーモンド、私達の舌に美味しいのはバターや塩を絡めたアーモンドといった具合で、その場合のカロリーや塩分差とかの比較を書き出していくつもりなんですけど、そこへどどんっと蜂蜜漬けナッツ入りハイカロリークッキーを並べておこうかなと』

『それなら蜂蜜漬けで出すべきじゃないですか? 他はナッツにちょっと味付けしたり加熱したりしている程度なんでしょう?』

『私達は子供なんです。子供は体に悪いものが大好きなんです。甘くて砂糖たっぷり脂肪分たっぷり、酸化した油と塩分どっちゃり、炭水化物を沢山食べたいんです、先生』


 どう見てもアレナフィルは、自分が立ち上げたクラブの名称を忘れているとしか思えない。

 ボンファリオも首を傾げている。


『たしか成人病を予防し、日々の健康を考えた食生活研究クラブなんですよね? 塩分や糖分を控えめにした・・・』

『はい。何事も早め早めの対策が大切です』

『それなら何故・・・?』


 お菓子作りクラブではなく、君達のクラブは成人病予防研究クラブなのだよと思い出させてあげたボンファリオの優しさに気づくことなく、アレナフィルはとても深刻そうな表情を作った。

 あの何かを憂いているかのような表情に意味はないだろうなと、最近の俺達は察している。


『人は自分に甘い生き物です。どんなに健康にいいと分かっていても、粗食より美食に飛びつきます。よくいるんですよ。上から目線で

「健康を考えるならこれぐらいできるだろう」

とか言いながら、自分はやらずに腹をでっぷりさせてる人とか。そして自分はその健康に良い食事をしたことがないから、全くもって具体的な説明ができない人とか』

『・・・・・・えーっと、13才でしたよね、ウェスギニー君?』

『はい。ピチピチぷりぷりの一年生です』


 どうしてそういう言葉が出てくるのかと困惑しているボンファリオを尻目に、アレナフィルは棚から蜂蜜の瓶を取り出した。


『図書室から借りてきた事典などを調べ、私達はいかにローストしただけのナッツが健康的かという結論に達するでしょう。素焼きナッツの横に置かれた、バターや塩で味付けされたナッツ。それはきっと魅惑の味。手が止まらない。いかに酸化した油脂や塩分が纏わりついているか、自分達が調べた資料に出ていても』

『アレル、・・・君は僕達をどうしたいの』


 エインレイドの戸惑いは、全ての人に共通だったかもしれない。

 一体、あの小娘は何がしたいのだろう。


『そして更に蜂蜜漬けナッツ入りクッキーという罪の味。どんなに太る為だけの食べ物か分かっていても、もう手は止まらないのです』

『アレル、・・・君の着地点が分からない』


 エインレイドの困り果てた顔に、アレナフィルは偉そうな表情を作った。


『まだまだですね、レイド。そうして私達は理性で止められない人間の欲深さ、罪深さを、自分達の行動で理解するのです。そして口先では

「健康を考えたなら食事制限ぐらい簡単だよ」

とか言いながら、自分達は全くもって欲望に勝てない、弱く情けない人間だと知るのです。

 そう、人は自分が愚かで悪であるということを知って、善に目覚めるのです・・・!』

『・・・・・・』『・・・・・・』


 お前はいつから宗教家になった。

 ふぅっと息を吐いたボンファリオは、理解できない生き物を理解しようと思うことをやめたらしい。


『多感な少年達が食べたい物を食べられなくなったらどうするのかな、ウェスギニ―君?』

『大丈夫です。私だってそれはそれ、これはこれで食べてますから』


 たしかにアレナフィルは立派なことを言ってみるだけの生き物だ。自分の欲望が絡めば、それらを全てひっくり返す。つまり芯がない。

 ゆえに俺達はアレンルードの方を評価するのである。


『それに今はいいけど、数年後、汗臭くて脂ぎとぎとな少年になられたらイヤじゃないですか。野菜を多く食べることで体臭も変わるんです。私の求める肉体には及ばないのは仕方ないとして、今から食生活改善していれば数年後、周囲がニキビに悩むお年頃になっても、みんなはすっきり爽やかボーイでいられますよ。そうして好きな女の子ができた時、みんな私に感謝しちゃいますねっ』


 腕を組んで胸を張るアレナフィルの自画自賛が止まらない。

 しかもあいつ、しれっと自分の友達を侮蔑しやがった。やはり13年後なのか? お前は友達に対しても13年後じゃないと価値を認めないのか?

 

『えっと、ウェスギニー君。あなたが男の子に求めるのは顔とか家柄とかじゃなくて、肉体・・・ですか?』

『ええ。顔は見たら分かるし、親しくなったらあまり気にならないものでしょう? 何より顔立ちなんて生まれた時点でほとんど決まってます。努力で変えられるのは肉体ですよ、先生。家柄なんて鑑賞する際、関係ないじゃないですか』

『そ、そうですか。では、たとえば私の体なら?』


 ボンファリオよ、お前の犠牲は忘れない。

 自らの体をあの珍獣にジャッジさせるとは。


『いい体をしてると思います。だけどすみません、先生。私、もっと包容力のある肉体が好みなんです。こればかりは個人的な好みの問題ですから』


 悲し気に睫毛を伏せ、視線を斜め下に向けるアレナフィルだが、ボンファリオの体は決して貧相ではない。

 現在、この上等学校に勤務している警備員にしても男子寮の寮監にしても、かなり優秀な者が選ばれているのだ。


『そうですか。いえ、別にどうでもいいんですけど、なんだか釈然としないのは何故なんでしょうね』

『気にしないでください、先生。誰だって好きな人の体が一番なんです。お互いに縁がなかった、それだけだと思います。先生が私に興味ないようなものです』


 お前、肉体ありきって言わなかったか? さっきの発言は何なんだ?

 好きな人の体が一番なら、肉体がどうこう言う必要ないだろ?


『あのさ、アレル。アレルの求める肉体って、どんなの? やっぱり理想的な体ってあるんだ?』

『勿論ですよ。当たり前じゃないですか』

『それって、実在する具体的な人とかいる?』

『はい、私の父です。叔父も安定感があって大好きですけど、一番は父です。制服姿もシャツ姿もうっとり見惚れるダンディ。夏の薄着なんてめっちゃいい体ですし、汗をかいた時は先にシャワーを浴びてからという心配りも全てが完璧です。祖父母の誕生日ではいつも私が父の服を選ぶんですけど、もう色々なお姉さん達が見惚れてしまって、ホント大変』

『・・・ああ。うん、知ってた。その答え、僕、知ってた』


 自分より年上の子持ち男と比較され、魅力がない体だと言われてしまったボンファリオ。

 たしかにウェスギニー大佐フェリルドはいい男だ。しかし妻は、彼の女絡みの事件で殺されたとか。職場で女同士の刃傷沙汰を引き起こした男など、普通は懲戒処分もしくは左遷だ。

 それでも出世し続け、悪い噂に包まれながらもシッポを掴ませない巧妙な男だ。


(その娘を欲しがった俺が言うことではないんだが。しかし調べさせても途中で何故かぶつ切りにされちまうんだよなあ)


 そんな父親がどこまで好きなんだ、アレナフィル。アレンルードを見ろ。とっくに父親に見切りをつけているじゃないか。

 双子でも兄に比べて妹がおかしすぎる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ