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24 父がいなくても息子は戦う


 子供ってのはいつだって大人が考えているより深く考えているものだ。子供は小さいだけで、もう大人なんだよ。

 まあ、聞いてくれ。

 僕の名前は、ウェスギニー・インドウェイ・アレンルード。国立サルートス上等学校経済軍事部一年生だ。友達はアレンって呼ぶし、家族はルードって呼ぶ。

 僕は男子寮で生活しているが、双子の妹は自宅から違う校舎に通っている。

 そんな僕は先日ちょっとしたおねだりを妹にしたおかげで、父からお仕置きを食らってしまった。ひどいよね。しゃれってのが分かってないよ。

 だけどその時、僕は違和感を覚えたんだ。


(てかさぁ、そりゃ僕も悪かったけど、フィル、僕になりきってたんだからよくない? そりゃ寝る場所もなかったのはまずかったけど、フィルなら叔父上呼びつけておうちに帰ってきただけじゃない? それにフィルしかあんな干し方できないよ。ただなあ、・・・エリー王子と一緒だったってのが引っかかる)


 双子の妹アレナフィルは、わざわざ面倒なことをしない怠け者だ。裏庭でロープに足を引っ掛けてどこまでダラダラしていられるかをトライするぐらいに変なことに根性入れてる。

 それがどうして他の校舎を渡り歩きながら授業を受けているんだか。

 男子寮は学校の敷地内にある。僕は妹が通学してくるのを大木の枝に腰かけて待ち、その行動を観察してみたらその事実が発覚した。


(あのなぁ、フィル。何をこの兄に無断で男と待ち合わせなんかしてんだよ。うん、潰そう。うちのフィルと待ち合わせ? うん、潰そう。さて、大事なのは相手の特定。顔はまぁまぁだな。てか、まあ美形か。フィル、ああいうのが好みなのか? ・・・・・・ん? げっ。おいおい、フィル。そいつ、変装してるけどエリー王子じゃないか?)


 髪の色も髪のまとめ方も、そして眼鏡をかけた瞳の色も違う。だけど僕の妹に近づく男子生徒なんてどうやって追い払おうかと観察していれば気づくものだってあるんだ。

 他人の空似かもしれない。瞳の色も違う。だけどあの眼鏡に秘密があるとしたら?

 参ったなと思った。

 アレナフィルは男子生徒の正体を知っているんだろうか。あの妹なら知らずに騙されていることもあり得る。

 だけど男子寮でばったり会ったことがあるって話だったし、妹は僕と同じ顔。王子の方はアレナフィルのことを知っている筈だ。だから一緒にいるのだろう。


(問題は、いつからかということだ)


 僕は、僕になりすましたアレナフィルが、エインレイド王子と一緒に夕食をとったというのはともかく、二名の寮監が同席したと皆から言われたこともあって、おかしいと感じていた。

 勿論、そこで寮監は僕とアレナフィルが入れ替わっていることに気づいて父に連絡したのだろうと、そのあたりは辻褄(つじつま)が合う。

 エインレイド王子から、

「夕食の後、部屋に呼んでくれて、一緒にいたずらしたじゃないか」

なんて言われたことには閉口したけど、それはまだアレナフィルにしてやられちまったぜと、そんなものだった。

 あのアレナフィルならそんな仕返しだってするだろう。食費込みのお小遣いを盗まれたけど、数日後には王子から返されてきたあたりも妹らしい。

 だけどあの警戒心の強いアレナフィルが、僕と入れ替わっているというのに王子をいたずらに巻き込んだ? 長く一緒にいればいる程、別人だとばれやすくなるのに?

 そこが()せなかった。

 だけど最初から別人だと知って協力してくれている相手ならばどうだろう。

 あの変装はどうしているのかと思い、放課後の二人を見ていたら一緒に移動車に乗せてもらっていた。


(これ、もう確定だ。どうしようもなく確定。フィルは、レイドと呼んでいる生徒の正体を知っている)


 勘弁してくれ、妹よ。お前は父にメロメロではなかったのか。

 そりゃ紳士的な振る舞いと顔はお前のボーダーをクリアしているだろうが、面倒なことは逃げ出す卑怯者だろう。

 勿論、僕だってアレナフィルが好きになったなら仕方がないとは思っている。だけど僕には分かる。アレナフィルは王子に惚れてない。父に向けるあのキラキラおめめがないのがその証拠だ。


(どうすっかなぁ。僕はフィルさえ守れれば他の奴なんてどうでもいいんだけど)


 僕に何も知らされていないということは、知らせなくても構わないと思ったのだろう。

 大人はいつもそうだ。自分達が決めた枠組みの中で子供達は飼いならされていればいいと考える。

 だけど子供だって子供なりに考え、動くんだ。

 あの寮監は、相談すれば守ると言ってくれたが、「生徒が何かしたら守ってあげられる」というのであって、生徒らが行動する前に止められるわけじゃない。

 逃げておけば大丈夫だ、お前にはそれだけのスピードも反射神経もあるだろうと、そう言われたらその通りだけど、あれじゃいつかアレナフィルが見つかってしまう。

 一般の部の校舎にいるなら見つかることもなかっただろうに、あそこまであちこちに出かけていたら、見つけてくださいと言わんばかりじゃないか。

 

(寮監も教師共も共犯(グル)かよ。人んちの妹、利用してんじゃねえよ。王子には髪のカールを気にしてばかりのご令嬢でいいじゃねえか。フィルに何かあったら、あいつら全員・・・・・・、あれ? そういえば父上、知ってるのか? あの父上がフィルの危険を傍観なんてしてるのか?)


 僕はよくよく思い返した。いつ、新しい授業スタイルが発表されたか。

 初めての男子寮全員による集団合宿。いつの間にか校舎の天井のあちこちに取り付けられていたカラーグラスの半球体は、あの合宿が終わった時からではなかったか。

 同じものが男子寮にもいつの間にか取り付けられていなかったか?

 火災報知器だと説明されたし、半球体のカラーグラスとセットで何か取り付けられているからそれはそうなのだろうが、廊下や階段や教室ばかりか、似たようなものが屋外にもなかっただろうか。


(父上のことだ。一人ぼっちのエリー王子とフィルを一緒に行動させる代わりに、凄まじい数の映像監視装置の設置を条件にした可能性は高い)


 いつからだろう。

 学校の敷地内をちょくちょくと巡回していた警備員達を、あまり見かけなくなったのは。

 

(なるほどね。・・・だけど父上。僕が、同じクラスの貴族達から、男子寮の部屋に招待しろと詰め寄られてることは考えてくれなかったのでしょーか。僕のことは放置ですか? 娘は守っても息子は守らないんですか? ああ、あの人、

「それぐらい断ればいいだろう?」

で終わるよな。ニコニコしながら言いそうだよな)


 父の愛が薄い。薄すぎる。

 だけどアレナフィル。僕の半身、僕の片割れ。気が強いくせにすぐ泣いてしまう怖がりな妹。

 君の体は守られてもその心まで守られるわけじゃないんだ。

 他の校舎にまで出入りしているのなら、僕と間違えられてあいつらに、

「いいかげんに寮に招待して王子との時間を持たせろよ」

と、特攻される可能性だって出てくる。

 その時に変装をかなぐり捨てて、あの王子が妹を庇わずにいられるだろうか。いや、絶対に背に庇うだろう。そうしたらいきなり王子と僕とのコンビが学校公開。同じ寮にいるのはともかく、学校での時間も全て一緒だなんて、もうラブだねって感じじゃないか。うん、泥沼だ。僕の人生が終わる。更に僕じゃなくて双子の妹だったと知られてしまえば、完全にうちの妹、全学年の令嬢を敵に回す。


(ヤバい。フィルがその時に黙っていじめられる筈がない。全校生徒を相手に喧嘩売りかねない)


 自分が甘やかされて可愛がられる為なら双子の兄のことさえ父に言いつけては利用する妹。それこそ王子が原因でみんなにいじめられるとなったら国王陛下に嘆願ぐらいしかねない。

 いいや、それこそ法律を盾にとって自分にどんな非があるのかと全教師を相手にして大立ち回りしかねない。


(そうだ。父上に近づくメイドを排除する為だけに、フィルは分厚い法律の本を広げて叔父上を裁判官代わりにした子だ。それこそ父上への性的加害者として通報するとまで言いきった)


 アレナフィルだけは駄目だ。あの子だけは何をやらかすか分からない。それでいてみんなに慰めてもらうことしか考えてないから(たち)が悪い。

 愚かな妹よ、一時の激情で自分の人生を壊してはいけない。だけど君に言ったところで、何も理解する気なんてないだろう。

 仕方ない。クラス担任教師に協力させるか。まずは叔父に、担任教師に協力してもらえるやり方を相談してみよう。やっぱり相談するなら父ではなく叔父だ。

 というわけで僕は外泊許可願いを出し、祖父達が暮らすウェスギニー子爵邸に帰ることにした。


「平日に外泊? そりゃまたどうして。ちゃんと届け出に理由も書けよ、ウェスギニー」

「はーい。んじゃ、これでお願いします。朝は学校まで直接送り届けてくれる筈なので、明日の夕方には寮に戻ります」

「・・・ぷっ、お前なぁ。まあ、そりゃ辛かったな。うん、外泊するぐらいに辛かったって聞けば、明日からは勘弁してくれるさ。よしよし。そんなに辛かったか」


 深く濃い群青色(ウルトラマリン)の髪をした寮監は、笑って送り出してくれた。


『外泊届:208号室 ウェスギニー・インドウェイ・アレンルード

 外泊先:ウェスギニー子爵邸

 外泊理由:肉を思いっきり食べたいから。野菜は肉じゃない 』


 うん、誰もが僕の行動を疑わなかったね。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 やはり僕は父よりも祖父や叔父の方が頼りになると改めて思った。


「沢山お食べなさいね、ルード。本当にここから通えばいいのに。送迎ぐらい出すんだから」

「ありがとうございます、お祖母(ばあ)様。だけどよそで暮らした経験がある方がおうちの有り難味も分かるって先生も言ってたし、僕は大丈夫です。外泊届さえ出せば抜け出してこられるし。それより聞いてください、お祖父(じい)様、お祖母(ばあ)様」


 夕食を食べながら僕の話を聞いてくれた祖父母は、登校したアレナフィルがエインレイド王子と待ち合わせ、放課後まで二人きりで行動しているという事実に打ちのめされたらしい。ランチはアレナフィルの友達と一緒だが、それは全く心の救いにならなかったようだ。

 

「うちのフィルと、二人きりだと? よりによってうちのフィルが、うちのフィルが・・・。いくらうちのフィルが可愛いとはいえ、何ということだ。それでは恋愛感情を(はぐく)めと言っているようなものではないか」

「何てことなの。ただでさえあの子に縁談が来ても止めておかなくてはならないという時に、まさか・・・、だってあの子は貴族相手の縁談にはしないと、そういうことだったから、令嬢教育もしていないというのに。しかもマナー講師をつけるといっても、全部断られて・・・。ああっ、だからちゃんとしておくべきだったのに・・・!」

「落ち着いてください、父上、母上。エインレイド様とフィルとの間に恋愛感情があるとは決まったわけではありません」


 こうなると僕も、黙々と分厚い牛肉のステーキを切り分けて食べるしかない。

 僕だってかなり混乱していたけれど、目の前で他の人が混乱してくれたら反対に落ち着いちゃうんだなって思った。

 だけど、ちょっと聞き逃せなかったことがある。

 祖母の言葉だ。うちのアレナフィルに縁談って何なの? いや、止めておかなきゃいけないってことは断るってことだからいいんだけど。

 そんな要求をするなんて父しかいないよと、僕はピンときた。

 あの身勝手な父のことだ。アレナフィルは一生結婚しなくていいからと、どんな縁談が来ても潰すよう祖母に伝えていたのだろう。それ自体は全く構わないからいいんだけど、僕達まだ13才。

 気が早すぎないだろうか。

 たしか縁談って、種の印が現れてから打診し始めるものじゃなかったっけ?


(父上だからな。あの人、ちょっとおかしいし。子供の年を間違えて覚えてたとしても驚かないや。だけど父上。フィルのことだけ止めさせて、僕は無視ってひどくないですか? 僕の縁談はどうでもいいんですか? 僕のことはおうちで甘やかして幸せに暮らせばいいって思わなかったんですか?)


 そりゃ僕はウェスギニー家を継ぐ子だからって言われたらそんなものかもしれないけれど。

 祖父母の溜め息があまりにも深すぎる。

 母のことをあげつらわれ、色々と心無い言葉をかけられたりするのは可哀想だからアレナフィルは貴族と結婚させなくてもいいだろう、一般の部なら貴族令息ともそうそう知り合わないだろうって、みんなものんびりしていたわけだ。僕もだけど。

 そうしたら貴族を通り越して王族と仲良くなるって何なの、アレナフィル。祖父母だって困っちゃうよ。

 大体、僕達の顔ってみんなから可愛いと絶賛されてるんだし、貴族の男子だってアレナフィルと結婚したがらない筈がないって、父上ってば本当に分かってなかったんだろうか。駄目すぎない?

 うちの父ってばそういう恋とか愛とか亡くなったうちの母にしか機能してなかったんじゃないかなって僕は思ってた。

 アレナフィルに一目惚れして本気で結婚したいって言い出す王族や貴族が出ること、父には理解できてなかったんだろう。あの人、自分の感性だけで生きてるから。

 そりゃエインレイド王子がアレナフィルに一目惚れしたかどうかってのは、あの様子だとあまりしてないような気がするけど、一人で過ごすのが上手な二人が出会って、そして二人で一緒にいたら気楽だったという流れなら分からなくもない。あの王子ならアレナフィルの身勝手さも気にしないだろうし、アレナフィルなら自分を変えようとしない相手なら王族でも気にしないだろう。

 問題はうちの父だ。あんな監視映像装置を多数設置する前に、僕にちゃんと話を通しておくべきじゃない? 一番知っておかないといけないの、僕じゃない? しかも自分の親と弟に伝えていなかったって何なんだよ。

 祖父母の気持ちはよく分かった。

 全ては父が悪い。


「仕方ない。ルード、明日からフィルと入れ替わるのだ。そうしてエインレイド様と仲良く過ごすがいい。まだ同性の友人であればどうにでもなろう。もし、好意を持たれても、男だと突っぱねればいいではないか」

「お祖父(じい)様。そりゃ僕達だって入れ替わりそのものは自信ありますけど、二人が普段どんな会話をしているかも知らないんじゃ、どうしようもないです。会話内容で別人だとばれます。僕、フィルみたいに変な子じゃないんです。それに、そんなことしたらフィルが経済軍事部で男子寮生活です。僕、父上に屋上から吊るされます」

「む。・・・そこは、どうにかなるであろう」

「なりません」


 ここで誰も父に相談しようと言い出さないところが凄い。その見捨てられ方が今までの歴史を物語っている。

 それこそが感覚の差なんだろう。

 うちのような子爵家の娘が王子に近づくこと自体が妃の座を狙っていると判断されるから引き離すべきだと考える祖父母。

 王子が変装していて娘が年上好みだと分かっているのだから後は映像監視装置で警備に監視させておけば安全と考える父。

 勿論、父とて貴族なのだ。説明すれば祖父母の気持ちも理解してはくれるだろう。してくれると信じたい。だけど反省はしない気がする。こう言っちゃなんだけどさ、父は何をやらかすかが分からなすぎるんだ。

 聞いた話だが、父はかつて18あたりの頃、出た印を蝶だと偽っていたのだとか。女の子ならともかく、男の子で蝶の種というのはあまり評価されない。髪型もおしゃれなんかじゃなかった父は、だから馬鹿にされていたそうだ。

 そんな父は何故か軍に入った。あんなにもおとなしい人なのに大丈夫だろうかと心配した叔父は、父を追いかけるようにして軍に入った。

 すると父は危険な敵地潜入及び戦闘を伴う工作部隊に所属していた。

 ウェスギニー家の大切な跡取りを殺す気か、それならば自分が代わると、蒼白になった叔父だが、そこで明らかになったのは、父の種は虎だったということだ。

 ・・・・・・父の薄情さがひどすぎる。

 家族に対し、年単位で種の印を偽るって何なの?

 それなら樹の種でいいだろうに、どうして蝶の種なの?

 叔父が配属交換言わなければ、ずっと騙し続ける気だったの?

 その理由を問えば、

「虎の種と分かると、好きでもない人と結婚させられるじゃないですか」

と、父は答えたらしい。

 息子として父と母との愛に感動する前に脱力した。

 おかげで僕は祖父と叔父から、

「お前の嫌な結婚はさせないから、嘘だけはつかないでおくれ」

と、何度も念押しされている。

 父は種の印を完璧に偽装していたそうだ。

 うちの家族、父にもう何も期待していない。

 

「ああ、もう私、今日は下がらせていただきますわ。ごめんなさいね、ルード。せっかくあなたが来てくれたのに」

「いいえ、お祖母(ばあ)様。フィルのことは僕、できることは何でもします。だからお祖母(ばあ)様。どうかあまり気に病まれないでください」

「あなたは本当にいい子ね。お願いね。あなただけが頼りなの」

「はい、お祖母(ばあ)様」


 祖母の頬にキスすれば、とても疲れきった顔で祖母は食堂を出ていった。

 

「わが家への招待だけでも頭が痛いものを。ルード、私はちょっとお前達の誕生日パーティを今年はここでやろうと思っておるのだ。招待したい友達がいるなら先にレミジェスに伝えておきなさい」


 毎年、僕達の誕生日のお祝いは、遊びたい場所へと連れていってもらうことが多い。家族でお出かけするんだ。

 高原のホテルとかで泊まって食事したりもする。

 今年は自宅でお祝いと言われても、今の僕の友達は男子寮の生徒がほとんどだ。つまり平民である。自宅で家政婦や下働きぐらいは雇っていても、さすがに貴族レベルとは言い難いだろう。


「うーん。寮の友達、ここに呼んだら距離を置かれそうだからいいです。僕、お祖父(じい)様とお祖母(ばあ)様、叔父上とフィルがいてくれればいいです」

「いい子だな、ルード。だが、今年はフェリルドやレミジェスの知人を招くかもしれぬ」

「お仕事関係なんでしょう? 大丈夫です。ちゃんとご挨拶します」

「お前は本当にいい子だ。頼むから何かあった時、勝手に客人を気絶させて天井に展示しないでおくれ」

「・・・できません」


 誰がそんなことをするというの? 父と息子は別の人格を持った別の人間だって僕は主張したい。非常識な父親がいるからといって、息子も非常識とは限らないんだ。

 祖父は眉間に指を当てながら食堂を出ていったが、僕は改めて父に逆らうべきではないと思った。


(なんでお客様を天井に吊るそうと思うかなぁ。あの人おかしいよ)


 それはともかくとして、時間は限られている。

 僕は叔父に、寮へ招待して王子との時間を作れとうるさい貴族がいること、そしてあんなにもアレナフィルがうろちょろと校舎を移動していたなら僕と間違えられて、貴族の生徒に捕まって招待するように要求される恐れがあることを相談してみた。

 アレナフィルの横にはエインレイド王子がいる。アレナフィルを(かば)おうと、あの王子が前に出てしまえば、色合いと髪型を変えているだけなのだ。声は変わらないし、すぐに変装がばれるだろう。


「なるほどね、それなら・・・。ルード、お前は自分に注目を集めておきたいんだね?」


 叔父は僕の気持ちを確かめるように尋ねてきた。

 性別的に僕より妹の安全を優先しないと取り返しがつかなくなると判断しているくせに、叔父はそれでも躊躇(ためら)いを捨てきれていないようだ。

 知ってる。叔父が僕を年の離れた弟のように、まるで本当の父親のように見守ってくれていること。


「うん。だって僕はお兄ちゃんだしさ。ああしてるとフィルは僕そっくりだし。要はフィルが女の子ってばれなければ女子生徒はどうにかなると思う」

「だけどそれじゃお前が恨まれちゃうぞ? 友達だってできなくなる」

「いいんだ。だって僕、フィルを守るって決めてるから。フィル、僕の手下だしね」


 王子のことだけなら放置しておけた。どうせ護衛はついているんだ。

 だけどアレナフィル。僕の半身、僕の片割れ。甘えん坊で何でも父に言いつければ願いが叶うと思っている狡賢い僕の妹。

 そんな君が王子のことを言わなかったのは、僕を守る為だよね。分かってる。あの面倒くさがり屋で怠け者なアレナフィルが人並みに動く時は、いつだって僕の為なんだ。

 すぐにピーピー泣いては僕に意地悪して、それでも僕のことが大好きなアレナフィル。

 それなら僕は王子ごと君を守るよ。だって僕は君の兄なんだ。

 



― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―

― ◇ ― ★ ― ◇ ―



 国立サルートス上等学校の経済軍事部は、重厚な雰囲気を打ち出したダークなイメージの校舎の中にある。他の部に比べて重々しい校舎内は机やロッカーもまた黒に近い焦げ茶色で統一されていた。

 サルートス上等学校敷地内の校舎はそれぞれ独立しており、生徒達も他の校舎にはあまり近づかない。

 そんな経済軍事部1年生から6年生までの生徒が集う校舎には、思いがけない激震が走っていた。

 それを言い出したのはエインレイドのクラスを担任している教師だが、どのクラス担任も全員一致でそれを受け入れた。


「なんといってもここは生徒の自主性を重んじ、正しく導くことにかけては最高峰たる教育機関ですからな」

「その通りです。いいかげん、いつまでも(うわ)つかれては困ります」


 何故ならば、ここは国立サルートス上等学校。

 学校のことにもかかわらず、軍から派遣されてきた士官や兵士達にお伺いを立てなくてはならないことに、教師達も鬱屈(うっくつ)が溜まっていた。

 ならば自分達で生徒達を抑え込めるかと言えば、そうとも言えない。

 今は生徒であろうと、いずれは自分達よりも身分が高くなる貴族の令息令嬢達など、その機嫌を損ねれば自分達が職を失いかねないのだ。

 王子エインレイドに群がる貴族の生徒達を止めたくても、柔らかな言葉で制止する程度しかできない状態で誰が聞くというのか。教師など無力だ。

 だから男子寮の士官達、そして警備棟の士官達といった生徒達を恐れる必要もない軍属達の指示に従うしかない。

 教育者としてどれ程に忸怩(じくじ)たるものがあっただろう。

 この状況を突破する可能性があるのなら、教師達もそれに縋りつきたい気分だった。

 これはあくまで経済軍事部校舎内のことなので、男子寮も警備棟も関係ない。

 教員室では、他の校舎の担任教師達も一緒になって話題にしていた。


「やってくれるじゃないですか。いや、面白い生徒ですな」

「一般部の妹に比べて突出したところはないと言われておりましたが、さて、どんなものか」

「たしかお父様がエインレイド様の警備責任者なのでしょう? だからでしょうか」

「あら、お話を通してきたのはウェスギニー子爵の弟にあたる方って聞きましたわ」


 キセラ学校長が乗り気なのは、持ち込まれたその話がかなり細かいところまで練られていたからだとか。


「そうそう。ウェスギニー家のレミジェス様でしたね。男子寮に、

『寮生の家族である身分証明書を持たない者は寮内立ち入り禁止という寮則変更を』

と要求したそうですよ。おかげで友人と面会用の屋外テーブルが寮の敷地外スペースに設けられたそうですが、ま、仕方ありますまい」

「屋外テーブルとベンチと屋根程度で静かになるならそれでいいですよ」

「そうですわね。私も生徒からせっつかれて困っておりましたもの。はっきり禁止としていただければ助かるというものですわ」

「今まで王族が男子寮に入ったことがありませんでしたからね」


 ウェスギニー子爵家長男アレンルードは、第二王子エインレイドと同じ男子寮で生活している唯一の貴族だ。

 エインレイドの取り巻きになりたがりもせず、クラブ活動のお試し体験に夢中である。体験なんて一日程度だろうに一週間単位でのめりこんでいる。全ての運動系クラブを体験するつもりではないだろうか。

 アレンルードを集団で取り囲んでいる貴族子弟達を教師が見かけたこともあったが、その中には親が有力貴族の生徒もいて、

「みんなで仲良く喋っているだけですよ、先生」

「そうです。別にお喋りしてるだけじゃないですか」

と、言われればどうしようもできなかった。

 その間に教師への見切りをつけたアレンルードは階段の手すりから落ちたと見せかけ、見事な着地能力で逃走した。

 本来は取り囲んで何かを要求しているような生徒達を指導しなくてはならない教師が、被害生徒に憐れみをかけられている有り様だ。

 いたたまれない思いに(さいな)まれたのはクラス担任だ。

 入学した王子エインレイドのクラス担任として抜擢(ばってき)されても、肝心のエインレイドはクラスで皆が集まってくる授業や休み時間に閉口して逃げ出した。今や変装して、ランチタイムまで一般の部で過ごしている。

 生徒同士で交流を深めようとしていると言われてしまえば教師だってどうしようもなかったのに、王子が見切りをつけて逃げ出す程の指導力不足とされてしまった。

 アレンルードの災難にも気づいてはいたが、自分にどうしろというのかと本気で悩んでいたところにもたらされたのがアレンルードからの「相談」だ。


――― 先生。僕、もう王子様に紹介しろとか詰め寄られるの、嫌なんです。だけど先生が言っても聞かないでしょう? だから黙らせる為に協力してもらえませんか? ・・・先生だって、王子様の担任なのに何もしてないと王宮に報告されるの、辛いでしょう? 権力には勝てないのに。だけど、違う形で結果を出してみませんか?


 担任教師も大抜擢どころか、来年度では降格される可能性に直面していた。今や一般の部でアレナフィルを担任している教師こそが、来年は経済軍事部担当に異動するかもしれないとまで言われている。


――― 怪我人が出てからじゃ責任問題を免れません。だから今、手を打ってしまいましょう。大丈夫です。僕は勝ちます。


 そこで微笑んだ少年は、可愛らしい外見に見合わぬ何かを(はら)んでいた。

 少女のような少年が差し出した提案は天使の救済か、悪魔の誘惑か。

 あちこちの校舎を回って授業を受けている肝心のエインレイドが知らぬ間に、経済軍事部の校舎では1年生から6年生までを巻き込んだイベントが開催されることとなったのである。




    ― ◇ ― ★ ― ◇ ―

― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 いい天気だ。

 今日のエインレイド王子とアレナフィルは、経済軍事部で受ける授業が入っていない。

 僕は経済軍事部の校庭で、1年生から6年生まで集合している様子を7段ステージ台の上から見下ろした。全員の目が僕に集中する。


「皆さん、おはようございます。僕はウェスギニー・インドウェイ・アレンルード。1年生です。

 さて、皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。実は僕のクラスにはエインレイド王子様がいます。そして僕は男子寮で生活していますが、やはりエインレイド王子様も寮で生活しています。

 そこで、僕にエインレイド王子様との時間を持たせるようにと要求する人が多くて困っています。

 自分は幼年学校でも親しかったとか、自分は幼年学校で王子様と愛を誓ったとか言われても、それは僕が関与することではありませんし、王子様の為にもお前が動くべきだと言われても、文句があるなら王宮の国王陛下にその人達が申し上げればいいことです。僕は無関係です。

 ですが、肝心の王子様に全く手紙も渡せないというのは気の毒なので、この場を設けてもらいました。

 僕に挑戦できるのは1年生のみです。挑戦しない1年生、そして2年生から6年生までは審判をしていただきたいです。

 勿論、参加したくない生徒はクラスへお戻りください。今から説明を始めます」


 僕はゆっくりと大きく腕を動かして、校舎を手で示した。何人かは帰りたそうにしたが、しかし皆が動かないのを見て留まることにしたらしい。


『なんだよ、あいつ』

『生意気だな』

『どう見ても女の子じゃないか』


 教師達、そして生徒達が僕を見極めるような冷たい眼差しを向けてくるが、そんなことはどうでもよかった。

 僕のアレナフィル。僕達に負けはない。


「我がサルートス国におけるエインレイド殿下。僕は国民の一人として、そのお心を尊重し、殿下がお望みにもならない人間の指示に従って、その者を案内したり、二人きりで会える場を作ったり、手紙を渡すことを拒否いたします。

 ですが、僕如きがエインレイド様の盾となり、全てを遮断するのは許せないと思う人もいるでしょう。

 だから毎月一回、勝負の場を設けます。そこで僕に勝利した生徒に、僕はエインレイド様との時間を提供しましょう。

 男子生徒には、クロスリーのシュートゲーム。そして女子生徒には私服ドレスの可愛さコンテストです。

 そこで僕に挑む権利を与えましょう。少なくとも、たかが子爵の息子にも勝てないレベルで、エインレイド様に近づこうというのが片腹痛いというものです」


 ああ、僕に向けられる殺意が凄い。

 てめえなんぞが何を生意気言ってやがるって罵声が無言で飛んでくる感じだ。

 どうしよう。クセになったら。・・・うん、父に近づくだけだからやめておこう。


「1日は男子生徒とのシュートゲーム。そしてもう1日は可愛さコンテスト。そこで僕に勝利した者が、エインレイド様との時間を持つことができます。

 尚、私服ドレスの可愛さコンテストですが、その画像とコンテストの結果は貼り出しますし、誰が誰に投票したかは、生徒章を押してもらうことでカウントします。

 どうぞ皆さん、よく考えて押してください。言っておきますけど、僕、たしかに身分低い子爵の息子ですけど、将来の子爵でもあります。やはり僕に投票しなかった令嬢との縁はなかったものとさせていただきます」


 ちっちっちっちと、沈黙が満ちた。

 うちは王族でもなく、公爵家でもなく、侯爵家でもなく、伯爵家でもない。爵位としては低い家格だ。

 だけど領地を持つ貴族で、更に会社も経営している為、お金はあると思われているのか、子持ちの父にさえ公爵家令嬢が未亡人となって戻ってきたからと、そんな縁談が持ち込まれていた。

 だけど僕が上等学校生になり、貴族の後妻を迎えて子供が産まれても次の子爵の地位は無理そうだと判断されたことでその数も激減している。


『きっ、汚いぞっ! なんて脅しだっ』

『そんなこと言われて、他の令嬢にスタンプを押せる女子生徒がいると思っているのかっ』

『無記名投票にすべきだっ』


 貴族令嬢とて姉妹全員がいい相手と婚姻できるわけじゃない。嫁ぎ先で心を病むケースも多い。

 今は平民の母を持つ僕を馬鹿にしていても、本当に結婚を真面目に考える時がきたら僕を望む令嬢は多くなるだろうと、叔父は言っていた。

 平民出身の母でさえ大事にされていたなら自分も大事にされる筈だと誰だって考えるからだ。

 うんうん、罵声が心地いい。


「大丈夫です。僕など論外だから、どなたもエインレイド様を狙っておられるのでしょう。

 それに男子生徒だって、ここは男を見せるチャンスです。気になる令嬢に投票することで、愛が芽生えるかもしれません。

 ただし、将来、自分に入れてくれなかったと知った令嬢との縁はなくなるかもしれませんので、どうかよくお考えになって投票してください。・・・ああ、ですけど、あえて男の僕に投票することで、女子生徒の可愛さを評価することよりも、自分はエインレイド様の心の自由を守って差し上げる方を選んだのだと、そう騎士道精神を見せることは可能でしょう」


 そこで5年生の生徒が手を挙げた。


「質問がある。何故、シュートゲームなのだ? 君とて仮にもエインレイド様の盾、守護騎士を名乗るのならば片手剣術であるべきだろう?」


 そうだそうだと、皆が賛同し始める。

 言わせるだけ言わせた後で手を挙げて皆を黙らせると、僕は笑ってみせた。


「すみません。僕、既に実戦経験者です。試合でだらだら剣を振り回す前に、まずは相手を殺します。僕は幼年学校時代に軍基地で訓練を受け、スコアを取られ、戦地に赴き、兵士として戦っています。・・・ここの生徒の中で、僕以上に人を殺したことのある生徒がいないことは確認済みです」

「・・・え」


 うっそでーす。そんな確認してませーん。けどさぁ、そんな経験ある奴いないだろ?

 だって普通に生活していて人を殺したら学生生活の前に牢屋行きだしね。

 僕は外国の無法地帯に連れていかれたから、罪にならなかったけどね。

 ついでに僕の片手剣術、曲芸を織り交ぜるから疲労が凄いんだよね。

 さすがに途中でスタミナ切れしたら不戦敗になってしまう。うん、シュートゲームが一番。

 父よ、あなたに感謝したことはあまりないけれど、ハッタリをきかせることはできたことだけは感謝してもいいかもしれない。


「生徒らしく、明るく楽しく今日は男子生徒の為のシュートゲームをしましょう。そして1週間後、誰もが分かりやすい『王子様にふさわしいガールフレンドは誰だコンテスト』、それでいいですね?」


 まさに、「片手剣術ぅ? 実戦で使ったことない剣って意味あんのぉ?」みたいな感じで笑ってみせれば、もう誰も文句を言わなかった。


『ま、まさか・・・』

『それで同じ寮に入ってたのか?』

『生徒として入ってきた護衛だったのかよ』


 うん、勝手な憶測だけが広がっていく。だけどこうなれば、楽なもんだ。

 ・・・え? シュートゲーム?

 大体さぁ、王子との時間を持たせろだなんて要求してくるの、貴族しかいないに決まってる。クラブ体験で僕をめためたにしてくれた先輩達だって、別に王子様に会ったところでそれで出世の道が開けるわけじゃないことぐらい分かってる。

 かえって不興を買うだけだ。

 僕とシュートゲームしてまで王子との時間を持ちたいと考えるのは、幼年学校で親しかったと主張する手合いばかりだった。

 うん、所詮はお坊ちゃま育ちのお貴族様。僕の敵じゃなかったね。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 戦う前に敵の力を()いでおく。

 それが大切なのだと、叔父は言っていた。だから僕はその1週間、シャツのボタンを外していたり、髪もぐしゃぐしゃにしていたりと、だらしなさをアピールしておく。

 

(叔父上に言わせると、王子の為に女装までしようっていう子爵の跡取りに張り合うのは、公爵家、侯爵家の令嬢だ。伯爵家、子爵家、男爵家はそれぞれの判断。母のいない僕は、嫁いびりされない花婿候補)


 どの令息令嬢も自宅に戻り、親を含めた家族に相談したことだろう。毎月一回、勝負の時間を設けるとなれば、僕にずっと勝ち続ければ毎月王子との茶会に参加できる。

 その価値があるか、ないか。そして僕はどういう立場の人間か。


(僕がこんなことをやらかしたのは王子の警備における父上関係だと思われただろう。その上でこのコンテストは王子の恋人候補選抜だと思われたかもしれない。大体、僕との縁はなかったことにさせてもらうと言ったところで僕まだ13才。誰も本気にする程でもないってね)


 ドレスアップして、自分の持ち時間を使い、いかに令嬢として優れているかをアピールするコンテスト。

 そうなれば何をアピールすべきか。美しく華やかに装うか、学生らしく慎ましく装うか。

 敵はだらしない恰好をして、大きな口を開けて欠伸(あくび)しているような男子生徒だ。誰もが「私の方が可愛いわよ」と、やる気になっている。


(エントリー令嬢が増えれば増える程、票は分かれる。いくらでも参加してくれたまえ)


 ここまでくると女子生徒はドレスやアクセサリーの用意にてんやわんやらしい。

 更衣室は用意するから自分で着替えるようにと伝えられているので、使用人に着せてもらうことは不可能だ。一人でも着替えられるドレスを着るか、友達に手伝ってもらうか。

 僕は今のサイズにドレスを作り直してもらっているからいいけど、女の子って大変。

 だけどクラス担任は、あのシュートゲーム以降、僕が絡まれるのを見なくなったのでほっとした様子だった。


(友達もいなくなったけどな。うん、めっちゃ凶悪な奴ってイメージついたしな)


 いいんだ、それでも。

 だって男子寮に戻れば、皆が肩を叩いてくれる。


『すげえな、アレン。お前は勇者だ』

『色々と言われてっけどさぁ、僕達は味方だから』

『カッコよかったぜ』


 経済軍事部校舎・全生徒の前でどんな大風呂敷を広げたところで、寮生は信じない。僕が男子寮でエインレイド王子とあまり交流していないってこと、みんな知っているからだ。

 朝はぎりぎりまで寝ていて、放課後はクラブ体験行っていて、戻ってきたら夕食とシャワーでおやすみなさい。そんな僕が王子との時間なんてある筈がない。

 そして家族以外の訪問者を男子寮では禁止したことで、皆も王子の部屋近くを案内してほしいとねだられる理由がなくなった。


(そりゃタイミング的にも僕のしたことだって思われて当然か。叔父上、ありがとう)


 全くさぁ、卒業後の進路を持ち出して要求される生徒達の苦悩を大人達は知るべきだね。寮生だって貴族じゃないからこそ、就職する時のことを考えなきゃいけないんだ。有力貴族を敵に回したくないのは平民の生徒の方が切実なんだよ。

 今回、僕のように勝手に王子の名前を出して勝負に持ち込んだならいけないことだが、それについては先に担任教師を通しておいたから王宮も了承済みだ。

 負けたらエインレイド王子に報告して謝罪し、大人も同席する茶会に参加してもらうよう頼むしかないが、僕が勝ち続ける限りは話さないでほしいというお願いは、子供のお遊びだからという理由で許可された。

 そんな僕の勝手な要望を飲んでもらうのも、肝心の王子へは事後承諾だというのも、全てはお前はナニサマだ、不敬すぎると咎められるところだったが、そこは王宮へのエサがよかったらしい。

 エインレイド王子が学校生活に引け目を感じることのないよう、黙っていてほしいという美談で押し通した。

 だけど僕が守りたいのはエインレイド王子ではなく、アレナフィルの存在だ。

 

『いいかい、ルード。フィルは軍から派遣されている警備達の監視下で守られている。だが、王子の生活を管理していた侍従達は、それに不満を抱いていることだろう。

 だからこそ、エインレイド王子に近づきたい令息と令嬢をその目で見てはいかがかと、話を持っていけばいいのさ。

 恐らく見に来るよ。そういう理由があれば、堂々と学校に乗りこんで観察できるからね』


 叔父のレミジェスは学校の教師達にも王宮の侍従達や女官達にも、食いつかずにはいられないエサを僕に撒かせたのだ。

 却下されたところで僕には痛くも痒くもないコンテスト。不快感を示されたなら即座に取り下げるというスタンスだったが、めっちゃ食いつかれた。

 王宮の侍従や女官達にとっては、エインレイド王子に近づきたい男子生徒より、女子生徒の方が気になるそうだ。将来のお妃候補だから?

 しかも生徒章をスタンプしての投票となると、誰が誰の好みなのか、もしくは家の繋がりがあるのか、ちょっとした参考にもなる。

 今、エインレイド王子も城に不在で退屈な彼等は、その情報がとても気になるらしい。

 クラス担任はコンテストのフォトと投票リストを渡すことを約束したそうだ。

 今や僕は、軍にお株を取られた教師達にとっての救世主である。いや、道化か?


『なー、アレン。エリー王子には言わねえの?』

『負けたらみっともねえだろ。何より男が女装すんだぜ。ま、負けねえよう、投票してくれよ』

『ああ。任しとけ』

『可愛いのにアレン、男前だな。ま、投票はしてやるからよ』

『ありがとうございます、先輩。僕の可愛さにクラクラしていいけど惚れないでね?』

『ぶぁっか』


 だけど誰か寮生から話を聞いてしまったのか、それとも経済軍事部校舎内で噂しているのを聞いてしまったのか、朝食をとってたらエインレイド王子に話しかけられた。


「あ、あのさ、アレン。僕の為にシュートゲームしてくれたって、本当?」

「まさか。ちょっと退屈してたんです。ほら、やっぱりどのクラブに入るにしても、アピールって大事でしょう? 目立たないと選手にもなれないです。おかげで勧誘にも熱が入ってくれて、笑いが止まらないですよ」

「だけど、・・・ドレスなんて、大丈夫?」

「着るだけでしょ? 平気ですよ。だけどくれぐれも妹には言わないでくださいね。双子だってばれたら意味なくなります。見に来られたら困るんです」


 その言葉でエインレイド王子は察したらしい。


「そっか。ごめんね、アレン。だけど大丈夫なのか? 令嬢としての魅力だなんて」

「そうですね。負けたら寮監先生立ち合いの元、優勝者とお茶でもしてあげてください。一回で終わるそうですから」

「う、・・・うん。僕も投票、行くよ」

「ありがとうございます」


 こう言っては何だけど、化粧で美人なんて作れるものだ。

 よく色々な人達から可愛いと言われる僕でも、その気になった貴族令嬢の前では所詮は男だし、勝てないだろうと王子も考えたのか。とても不安げな眼差しだった。

 もしかして油断しすぎてたか?

 というわけで、

「王宮からも未来の妃候補を女官達が見に来るらしい」

という噂を僕は流した。

 おかげで一気に出場者が増えた。本来は一年生ぐらいだろうに、上の学年からの出場者もエントリーした。

 ここで女官から王妃に報告されれば一気に・・・と、皆の欲望が燃えたわけである。

 そんな中、屋内体育施設で美少女コンテスト(ただし一名は男子)は始まった。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




「私は、40弦の竪琴(ハープ)演奏が得意です。どうぞお聞きください」


 1番目の令嬢は、淡い緑色のドレスを着ていた。髪はゆったりと後ろでまとめている。細かい細工の髪飾りがアクセントだろうか。(ひだ)が幾つも重なり合っているドレスなので、大型のハープを弾いていても足が見えない。シンプルでも上品さが際立つ感じだ。

 ・・・・・・眠い。よくみんな起きて聞いてられるな。


「私はずっと政治について学んでまいりました。きっとお話し相手としても退屈させぬ自信があります。まず、我が国の・・・」


 赤いドレスの令嬢は、なんだか生徒会長を目指したらぴったりという雰囲気だ。巻き毛を豪華に結い上げていて、官僚を目指した方がいいのではないかと思うぐらいに、理屈を展開していく。媚びる令嬢ではなく、対等に語り合えなくては意味がないだろうと糾弾する姿勢は、まさに攻めの一手だ。

 ・・・・・・強い。もういっそ女王を目指せばいいのに。


「大して特技はございません。ですが、縫い物が好きです。これは私が刺繍したものですが、どうぞご覧くださいませ」


 光沢のあるシルクに美しい湖畔の景色を刺繍してある時点で、既に大作だ。その令嬢は、華やかなフリルのついた桃色のドレスを着ていた。まるで一人一人と同じテーブルを囲んでお茶会をしているような笑顔で、語りかけるように話すから、まさに王道の貴族令嬢だ。

 ・・・・・・(かゆ)い。私、尽くすしかできませんけどってか。


「貴婦人の(たしな)みはサロンにあります。今から貴公子の務めを取り上げた詩の暗誦(あんしょう)をいたしたいと存じます。どうぞお聞きください」


 何百年前か知らないが、それまではただの少年だった貴公子が恋をして、自分の義務に目覚めたというくだりの詩らしい。慎ましやかな水色のドレスに身を包んだ令嬢は、歌うような抑揚で詩を(そら)んじた。王宮からの見物人が、どこそこの令嬢だの何だのとメモを取っている。

 ・・・・・・怖い。ちょっと気に入っただけの女の子にそこまで束縛されるのか。


「温室などを使い、花を育てるのが趣味です。甘い香りのお花などで心を(いや)して差し上げたいです。私が育てたお花を持ってまいりました。どうぞ皆様、お持ち帰りくださいませ」


 皆に一本ずつ、友達を使って皆に配るのは賄賂に当たるのではなかろうかと思ったが、たしかに禁止事項ではない。香りのいい薔薇を配らせたその令嬢は、白一色のドレスだった。レースが細かくついているのだが、全てが白色なので清楚なんだか豪華なんだか分からない。

 ・・・・・・(だる)い。男に花を一輪渡しても花瓶なんて持ってねえよ。


 なんだかさあ、緊張感って続かないもんなんだね。

 王城で王族の身近に仕える女官や侍従達が見に来るという噂を流したのがまずかったのか。

 一年生ばかりじゃ不公平だと、他の学年まで参加してきているから、むっちゃ参加人数多すぎ。

 え? 勿論、了承したよ。だって票が分かれてくれれば分かれてくれる程、助かるからね。おかげで、色々な令嬢のアピール凄すぎ。

 だけどそれで待ち時間が長い。長すぎる。

 話を聞きつけた他の校舎の生徒も見に来ていたらしいけど、投票権があるのは経済軍事部の生徒だけだ。

 興味ねえよって途中から僕は寝てたけど、誰かに肩を揺り起こされた。


「あのなぁ、アレン。寝てるかよ、普通?」

「あー。今、何番目っすか?」


 目を開ければ青林檎の黄緑色(アップルグリーン)の髪をした寮監がいる。

 わざわざ男子寮からやってきたのか。暇人だな。

 なんでサングラスを屋内で掛けてんだよ。しかもその濃紺のベレー帽って学校教師がたまにかぶってる奴だろ? まあ、寮監なんて学校の教師と似た立場か。


「22番目だ。お前、26番目だろ」

「そうそう、たしか最後なんすよね。そろそろ着替えに行ってきまぁす。そんじゃ起こしてくれてありがとうございました」

「お前なぁ。そんなやる気のなさで勝てると思ってんのか?」

「んな無茶言われてもぉ。僕、男なんすけど? 僕に負ける令嬢がいる方が問題ですって」


 更衣室に着替えをもって入れば、無人の部屋はひっそりとしたものだ。

 鍵を掛けて、鏡の前に座る。

 アレナフィルと一緒に育った僕は、女の子の髪のセットもできる男の子だ。そしてうちには今までの祖父や叔父の誕生日会に僕達が着ていたドレスがあって、同じデザインで今のサイズに作り直してもらえば全く問題ない。

 のどを保護してくれるとかいうハニーキャンディを口に放り込むと、僕は上から純白のフード付きローブを羽織って会場に向かった。




― ◇ – ★ – ◇ ―




 真っ白なフード付きローブは足首まで覆う長さだ。

 僕はその姿でステージの中央に出ていった。そして皆を見渡して一礼してみる。


「皆様、本日はいかがでしたでしょうか。どなたもご自分の魅力を余すところなく披露してくださった令嬢ばかり。まさに、恋の矢に射抜かれてしまった方々もおられるでしょう。

 だ・け・どぉ、このアレンちゃんがぁ、み・ん・な・に、教えてあ・げ・る。女の子はね、夢見る乙女が全てじゃないってことっ!」


 僕はばぁっと、真っ白なローブのボタンを外して放り投げた。


『おおーっ』

『かっわいーっ』

『めっちゃ可愛いーっ』

『うおおおおーっ、アレンちゃーんっ』


 黒いミニスカートは太腿の半分まで。背中には黒の可愛い翼を背負った僕は、背中から黒いシッポが垂れている。

 玉蜀黍の黄熟色(メイズイエロー)の髪を頭の両脇で二つにくくって赤いリボンを結び、小さな黒いイバラ模様の冠をつけているものだから、男子生徒の方が熱狂し始めた。

 サクラとして、男子寮の先輩にもちょこっと声援をお願いしておいたけど、それだけじゃないな。全く知らない声も入ってるし。

 うむ。貴族令嬢にはできない芸当だ。僕は男だから足を見せていても何とも思わないが、同じことなど王子の妃狙いの女子生徒にできはしない。


「声援、ありがとーっ! そんな君達にサービスしちゃうっ。アレン、歌いまーっす! みんなぁ、一緒に歌ってねぇっ。み・ん・な、用意はいいかなぁっ?」


 み・ん・なのところで、それぞれ左・真ん中・右と、両手をくるりんと手のひらを向けてみせる。

 ドレスデザインは妹担当、男を惑わす可愛い仕草は僕プロデュースで、ウェスギニー家パーティの主役を張る僕達。場数が違うのだ。


『いいぞぉーっ』

『アレンちゃーんっ』

『さっいこぉーっ』


 うんうん、いい感じだ。

 思えばよくこの手で、アレナフィル狙いの奴らを惑わしたものだ。うん、アレナフィルに近づく虫など殲滅あるのみ。


「はぁい、じゃあっ、『美しき流れ、祖国の愛よ』 いっきまーすっ」


 ホント、僕ってばいい選曲。

 こうなると皆が一緒に歌わなくてはならない。僕の歌が上手かどうかなんて、かなり隠れる。

 だってこれ、国歌だし。この学校、国立だし。

 音楽の教師にも待機してもらって伴奏お願いしておいたしね。

 そこは音楽の先生も見せ場とばかりに張り切っていた。王宮の人達が令嬢の撮影してたもんだから、僕の番までに髭剃って上着も着てきてたよ。


「 ♪ この胸によぎるは、熱き血潮に・・・

誇るは父と母の、美しき調べ・・・ ♪ 」


 いやぁ、僕ってば天才だよね。

 こういう時って合唱していても、上手な人ってステージにいるから分かる。

 おおっと思った上手な人に、投げキスを飛ばしておいたら、めっちゃ皆の歌声が大きくなった。

 女の子に対してもウィンクして、両手でハートマーク作ってみたら、きゃーって騒がれたけど。

 そして歌い終わりが近づいた時点で、僕は歌いながら黒いイバラの冠と赤いリボンを外して頭をばさばさっと振る。

 

「 ♪ 我らが導くは、悠久の歴史・・・

    (たた)えよ我が祖国、熱く燃える愛・・・ ♪ 」


 黒い翼と黒いシッポ付き真っ黒ドレスを、肩のリボンを外してひっくり返すようにくるりんと剥けば、いきなり白い翼付き純白ロングドレスに早変わり。

 そうしてクライマックスを僕は迎えた。


「 ♪ 地上を潤し、(あまね)く満たす・・・

    (たた)えよ我が祖国、この誇りにかけて・・・ ♪ 」


 伴奏の音が高らかに鳴り響き、やがてしーんと静まり返る。

 ぼくは純白の天使なロングドレス姿で淑女の礼をしてみせた。


『うおおおーっ、天使―っ』

『サイコーッ。アレンちゃーんっ』


 先ほどまでの小悪魔ぶりとは打って変わって、僕はアレナフィルのお持ち帰りスマイルを浮かべる。うちの妹は、よくそれで勝手に抱っこされて持ち帰られそうになっていた。

 だから僕はアレナフィルを隠したい。


「ありがと。アレン、嬉しい」


 あのたどたどしい話し方はちょっと問題あるような気がするけど、あれだから可愛がられるんだなと、僕は知っていた。

 少し頬を赤らめてはにかむような笑顔が、大人達の心を撃ちぬく。それは男子生徒も同じだったらしい。


『ぐおおおおーっ、男でもいいーっ』

『アレンちゃーんっ』


 やっぱりうちの妹、狡賢くて怠け者だからいいけど、そうじゃなかったら毎日が誘拐騒ぎだよ。

 本当にアレナフィルが笑いかけるのなんて僕だけでいいのにさ。

 そんなことを思いながら僕はにこっと、小さく手を振る。そうして真面目な顔を作った。


「皆様、本日はありがとうございました。どうぞ清き投票をお願いいたします。

 また、これはあくまでエインレイド様とのお茶会を賭けてのコンテスト。このひと時が終わりましたら、勝負のいざこざを明日からの学業に持ち込まぬようご留意ください。

 勿論、我が国において頂点に立つサルートス上等学校の生徒の方々。皆様におかれましては浮き足立つことなくイベントはイベント、学業は学業と、明日には忘れ去ってくださることと信じております」


 純白のローブから黒い翼の小悪魔アレンちゃん、そして白い翼の天使なアレンちゃんへと早変わりした僕のそれは、以前、アレナフィルに付き合わされたものだ。

 祖父の誕生日だったのか、叔父の誕生日だったのか。毎回、色々とやらかすからもう覚える気にもならない。

 子熊バージョンもなかなか好評だったけど、さすがにあれはイロモノすぎた。

 

(次はオオカミから子ウサギ変身バージョンでいいかな。一週間だとこの天使悪魔バージョンが一番早く出来上がるシロモノだったんだよね)


 ちなみにコンテストはぶっちぎりで僕が優勝しました。

 うん、当たり前だよね。男子生徒のほとんどが僕に入れてくれた。


――― いいかい、ルード。所詮は王子狙いの令嬢なんて、どの男子生徒にとっても自分を見てくれない令嬢にすぎないんだ。

 最初から自分達より身分の高い男子生徒を狙っているような女子生徒なんて、どんな清純なことを言っていても計算高いとしか思えない。

 そんな令嬢、たとえ振り向いてくれても「妥協しましたわ」な扱いだろ?

 だけどね、その中で唯一、君だけが王子様狙いではないと分かっている参加者なんだ。そこで王子様ではなく全ての男達に愛嬌を振りまくことで勝利は生まれる。


 本当に叔父はよく分かっている。ウェスギニー子爵の全権限を掌握している叔父はとても有能だ。父ではなく叔父に相談して良かった。

 なんでそのまま子爵になっちゃわないのかなって、そこがたまに疑問だけど。


――― 内緒だよ、ルード。代理で居続けるから、私は兄上を手に入れているようなものなのさ。

――― 意味分かんない。叔父上いないと父上、子育てできずに僕達終わってたよ。だけどそれ、叔父上が子爵してた方が確実じゃない?

――― いいんだ。いつかお前が子爵になる頃には、お前はどんな子を好きになってるのかな。大きくなりなさい、ルード。愛しているよ。


 僕にとって叔父こそが目標だ。いつだって僕を導いてくれる。このやり方だって、叔父は僕だけに味方してくれた。妹は何も知らない。

 だから僕は勝てたのだと思う。

 女子生徒は仲がいい同士とかいろいろとあったみたいだけど、票がばらけた時点で敵ではない。

 皆が投票する前に、いつの間にかエインレイド王子は生徒章スタンプではなく、メッセージでもって一票を入れてくれていたようだ。



『天使の心を持った小悪魔さんへ清き一票を捧ぐ エインレイド

 追伸 だけど君、僕とお茶どころか会話もしたことないよね

  仮にこれで優勝しても、君は僕に何も望まないことだろう

  無償の心で僕の為に立ち上がってくれた君に感謝をこめて』



 それを読んでしまった生徒達が、一気に僕に感動したようだ。

 なんか僕、とってもいい人じゃない? 素晴らしく人間ができた人じゃない? 可愛さでも優勝したけど、人間性なんて至高って言ってもよくない?

 そんなエインレイド王子からのメッセージは、皆を冷静にさせた。

 

(寮生なら話したことないなんてすぐ嘘って分かるけど、どうせ誰もバラさないからいいよね)


 来月からの二回目以降は、開催する必要がなくなった。

 誰もがそこまでして恥をかきたいとは思わなかったのだ。


(あれだけのご令嬢が揃って、男の僕に負けたんじゃねえ。エリー王子との時間を持ちたいからと僕に挑む方がカッコ悪くなってるし)


 そして誰に何を聞いたのか、どこかからの差し入れということで、男子寮の次の日の夕食は、まさに(そび)え立つかのような厚切り高級牛肉ステーキと、クリーム入り焼き菓子のチョコレート掛けがみんなに出された。

 寮生全員に1缶ずつ、キャンディ詰め合わせも配られた。

 とても美味(おい)しゅうございました。





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