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※挿入タイミングが思いつかなかったので時期は留学前の曖昧な時節ネタ
何気ない時間にふと思いつく。
「そういえばこの世界にエイプリルフールはあるのかしら?」
修行の合間、日々己を鍛える時間のポケット、空いた隙間に入り込む雑念。
──これをイベント脳というなかれ。
ゲームに酷似した世界で転生なり憑依なりした身ではやむを得ない事態なのである。ゲームのストーリー進行とイベントは切っても切れない関係であるからして。
「セバスティング、エイプリルフールって知ってる?」
「はて、お嬢様のバカさ加減と何やら関係が?」
「誰がバカですって!?」
「ご自覚が無さそうであればこのセバスティングの不徳。何せ『愚者』の神に愛されたアルリー様を称えたお言葉でしたゆえ」
「……なんか誤魔化された気がするけどまあいいわ」
そういえばタロットの愚者は『ザ・フール』だったわね。
上手い煙巻きはともかく有能執事の反応を見るに、この世界には企業がこぞって悪ふざけを始める嘘を付いていいタイミングは無いようだ。
少々残念な反面、まあ納得できる部分はある。
このロミロマ2世界、ファンタジー脚色で魔導魔術魔法が入り乱れ、または『戦争編』の都合で通信移動技術が未発達な事情を除けばほとんど前世の現代日本ナイズされている。
食べ物なんて普通に洋食和食が出てくるのだ、和ってどこよ、遥か東方にジパングでもあるのか。
……あるのかもしれない。
何せロミロマ2の舞台にして中心地ゴルディロア王国の四方にはインドモデルのリンドゥーナを始め他国モデルのそれっぽい国が配置されているのだから。設定資料には無かったけれど今度暇を見つけて調べてみようと思う。
見た目は西洋ファンタジー風デザインが為されているが中身は現代日本人に分かり易い雰囲気が乗せられた世界、それがロミロマ2。
(ならハロウィンのようにエイプリルフールもあるかと思ったけど……よくよく考えたらエイプリルフールって乙女ゲーム向きのイベントじゃないわねェ)
或いはそこがポイントかもしれない。
ハロウィンは第1部『学園編』でコスプレの機会を逃さないとばかりに用意されていたわけで、実際に1枚絵スチルが集団写真と個々別に数枚用意されていた。
対してエイプリルフール、四月バカは日常系コメディなら1回は使いたいネタかもしれないが若人のイチャコラ絵に映えるかと言われると。
『そもそもエイプリルフールってどんな謂れのお祭りなのか』
『エイプリルフールの起源はハッキリしないが、一番有力視されてるのはグレゴリオ暦採用説だな』
『ぐれ?』
『簡単に言うと昔は4月1日を新年と祝っていたのに突然1月1日に変更しますってお上が定めたので、じゃあ4月1日は嘘の新年かよってバカ騒ぎを始めた説』
『おおう、いかにも馬鹿馬鹿しい話でわたしは好きだわ兄様』
『他にもインドの揶揄節、悟りを開くのに迷いを生じまくる時期がこの辺で、すぐ迷うお前はバカだなってからかったのが由来説なんてのもある』
『兄々はくだらないことに詳しいバカよねェ』
『はっはっは、もっと褒めてくれたまえバカの妹よ』
掘り出した前世記憶の微笑ましいエピソードも全く乙女ゲームには合わない。
あえて拾うなら隣国リンドゥーナには揶揄節転じてのエイプリルフールがある可能性が残るが、努力する他人を小馬鹿にする系イベントが学園における男女のウフフイベントに当て嵌まるかを問われると
「率直に言って無理ね!」
「今日もお嬢様はお元気で何よりです」
「そのバカを見るような目をするの止めてくれないかなァ!!」
有名イベントだからって必ずしも乙女ゲームに組みこまれるかと言われるとそうでもなさそうである。
……そういえば節分も無かったな。いけすかないバカボン一味に豆をぶつけるのは割といけそうな気がするのに。




