《紅蓮の魔女と契約者》
何時になったらマスクつけずに出かけることができるようになるだろう...
気付けば学校全体はお祭り騒ぎだった。
今日は3学年全てにおいて授業中止、俺と楊淳の対戦の見学になっていた。
授業という授業がないからだろうか、理佐姉と会長が本土まで足を運べているのは。
俺は昨夜、理佐姉に男子寮長室に呼び出され、刀を受け取った際、楊美やメアリーと話したことを打ち明けた。
姉貴と楊麗の親しげそうなメールのやり取り、損害状況から考えて、競技場を崩壊させたのは魔法魔術の類ではなく、現代兵器である可能性が高いということ、
日本と中国の関係を悪化させようと企む何者かがどちらかの国に関与していること。
もちろん女子寮に侵入したことは黙ったまま。
せめてヴァルプルギスが留まってくれれば、とそう思ったのだ。
だが...
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『無理だ』
『え?今なんて...』
『手遅れだと言ったんだ、白墨。
その仮説、筋は通っているしこれまで謎だった点にも辻褄が合う。
だがな
私は明日生徒会長とその他数名の講師と共に本土へ呼び出されている。
仮にそれが本当だとしても今からでは遅すぎる。
校長には私から話を通しておくが、試合は中止にはならないだろう。
お前は何が起きてもいいように明日の試合に集中しろ。』
は?
『おい、待てよ理佐姉!
生徒会長と理佐姉がいれば万事解決だろ!?
この学校の生徒の命がかかってるかも知れないってのにどうしてここに残れないんだよ、生徒の命より大事な事があるってのか!?』
俺の激昂した姿に驚いたのか目を丸くした理佐姉が諭すように語りかけてきた。
『...落ち着け。
お前を信用していない訳じゃない本土に行くのもワケありの案件なんだよ。』
理佐姉は白衣の内ポケからライターを、胸ポケからケースを取り出し煙草を吸いながら続ける。
『大体お前らしくないぞ?
誰かを頼ったり、迷惑かけたり助けてもらうのはお前が1番苦手、いや嫌いな領分だったはずだ。
頑固頭なお前に一体どんな魔法をかけたんだか、アイツらは...』
煙草を吹かしながら窓の外....女子寮を眺める理佐姉。
『とにかく、あれからもう数年経ってまだ引きずっているのかと思えば。
随分やる気のある瞳(目)をするようになったじゃないか。
あの3人には感謝しなければな...』
理佐姉に頭をわしゃわしゃと掴まれる。
...昔から理佐姉って頭撫でるの下手くそだよなぁ...
『私も出来るだけ手を打ってみる。
お前は今自分に出来ることを最大限やれ。
それは今でも変わらないお前の専売特許だろ?恋。』
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そうして寮長室から追い出された。
俺一人でどうにかなる問題だとは思えない...
思考を巡らせながら競技場へ向かう。
どうしたら、楊淳も俺も死なず、奴らの企みを阻止できるだろうか。
相手の戦力もわかってない上にこちらはASWRを付けた生徒総勢がいる。
最悪人質に取られるかもしれない。
守りきれるだろうか.....
『きゃっ.....』
『うぉっ...悪い、大丈夫か?.』
考え事ばかりしていて周囲を見ていなかった俺は前から来る誰かとぶつかった。
その子は車椅子を使っていて、左目は前髪で 隠れて見えていなかったが、鼻上から耳下へ通る糸のようなもので察せられた。
幸い車椅子ごと倒れてはいない、ただ返事はない。
『おーい....大丈夫か....?』
改めて様子を観察する...
『 ..ス ....デソ』
『はっ?』
かなりの小声で聞き取れなかった。
が、その言葉は1度や2度ではなく何度も何度も繰り返された。
『Je suis désolé...Je suis désolé....Je suis...』
日本語じゃない... どこの国だ....?
意味は分からない。
ただなにかに脅えて泣き出し、車椅子に座ったままま蹲る彼女を黙って見ている他なかった...
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【Mary Side】
『やぁ、ミス・メアリー、初めまして。
それともヴァルプルギス・フレイムマスターと呼んだ方がいいかな?』
教職員のゲート前の駐車場。
ガードマン2人を伴って高級車から降りてきたのは日本の政治におけるトップ、確か名前は...
『東条正信だ。
今日はよろしく頼むよ』
『私の自己紹介は不要みたいね。それにしてもこんなどこから狙われてもいい職員門からやってくるなんて不用心過ぎるのでは?』
彼は首を振った。
『だからこそさ、私はこれでいいのだよ。
虎穴に入らずんば...
ああ!!
いやはや. ...これは使い方間違っているね!!済まなかった忘れてくれ!』
大丈夫だろうか...
『天皇陛下は?』
『もう既に中でお待ちです。』
絶対は私の仕事の範疇じゃないんだけど!!!
心の中で文句を言いつつ、駐車場を首相と共に後にした。
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試合開始まであと10分くらいだろうか。
『どう?落ち着いた?』
競技場の休憩コーナーにある自販機で暖かいココアを手渡し、ベンチに座る。
『はい....ごめんなさい。』
『あ、日本語話せるのか。
さっきはぶつかって済まなかった、考え事しながら歩いてたもんだから...
どこか怪我とかしてないか?』
『大丈夫です...』
『競技場に向かう最中だったのか?だとしてもなんで1人で....
こういう生徒に対して先生なら気を配ってやるものだろうに....』
俺の愚痴を聞いた彼女は俯いていた顔を上げて真っ直ぐな瞳で、先程までの態度が嘘のように、ハッキリと否定した。
『違います!私が後から向かうと言って先生のご好意を断ったんです!』
ハッ、と言わんばかりに彼女は我に返り、また謝罪の言葉を口にする。
『驚いただけだから別に謝らなくても .....むしろ謝るのは俺の方だ。』
気まずい沈黙。
『そ、そういえば、まだ名乗ってなかったな。
改めて白墨恋だ。
今はあまり時間はないけど、この借りは時間がある時に必ず。』
『....貴方が...レン・シラズミ?』
『ああ、まぁ多分名前くらいなら知ってるんじゃないか?』
『知ってるも何も今から見に行く試合があなたとAクラスのジュン・ヤンの試合ですから...』
『まぁ、だよな....ハハ、ハハハ...』
あれ?でも待てよ、じゃあ方向同じじゃないか。
何でこの子と正面から衝突したんだ....?
『よければ送っていこうか?』
『あまり時間が無いって言ったのは貴方では...?』
Oh...取り付く島もない。
『シラズミ...さん。』
『ん?何か?』
『貴方は... 』
また、その真面目な瞳は─逃げ場を探して涙を堪えているような瞳で、俺を刺す。
『貴方の戦う理由は...なんですか....?』
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[第三戦闘競技場]
9:59
『レディース エーーン、ジェーントルメーーーン!
今日の一試合は見逃せない!先日メアリ嬢と戦った白墨恋と1-A中国代表楊淳の決闘だ!
司会は前回に引き続き私ダニエル'・スワンが兼ねて解説をしていきます。
楊淳はもうアリーナで準備運動を済ませています。
が、どうした白墨恋!!試合開始まで残り30秒を切ったぞ!?』
『恋、大丈夫かな....』
『安心しろ兄貴、昨日あれだけ大口を叩いたんだ、逃げる気はないだろう。』
『じゃなくて!例えばどこかで襲われたり捕まったりしてるかも....』
『アイツはそんなやわな奴じゃない。』
『おっと!!白墨恋の到着!!両者揃いました!!』
『見ろ、来たぞ。』
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『.......間に合った....』
10:00ジャストか...危なかった。
『やる気が感じられないな?時間ギリギリとは...』
到着早々、楊淳が余裕そうに挑発をかけてくる。
『悪いな、お前と戦うより大事なことなんて山ほどあるもんで』
『では両者揃いましたので、日本国天皇陛下からのご挨拶から』
以降、天皇陛下、東条首相、中国首相の話が続く。
まあ正直どうでもいい。
ん?そういえば首相って東条さんだっけ?
『それでは大変長らくお待たせ致しました。
これより国家間代表御前試合を行います!』
『は?』
なんか日本代表にされてるんだが....
『まず、日本代表、我らがIPSS日本支部の誇るCクラスでありながら序盤からヴァルプルギス・フレイムマスターと互角に渡り合う、白墨風華流の使い手、白墨恋!!』
とりあえず一礼...
『対するは中国からの孤独なる挑戦者、力量は未知数のミステリックボーイ!楊淳!!』
相変わらず、礼儀知らずだな....一切微動だにしない。
『ルールは簡単!相手を交戦不能にした方が勝利となります!
個性能力を使っても問題なし!
切ってよし殴ってよし!打ってよし!
あ、ただ殺さないように!死んでしまっては表彰式すら受けられません!!』
会場から笑いが起こる。
なら真剣持たせんなよ....
というかこれ御前試合なんだろ?そんな物騒なジョークかましていいのかよ.....
というか天皇陛下笑ってるし....大丈夫かよ....
『あと会場内で、いえ、この学校での賭博行為は禁止されておりますのでご注意ください~!
では、両者、礼!』
姿勢を正してお辞儀をする
『両者構え!』
腰に佩いた太刀の柄を握り、開始の合図を待つ。
数秒と言うには体感時間が長く一瞬でもあった──
相手は槍、こちらは刀。
武装相性的にはこちらが不利だ。
槍は刀の間合いの倍以上の距離で真価を発揮する。
一方的に攻撃し、かつ相手の攻撃は退きつつ受け流せるからだ。
相手の土俵で戦えば串刺しで、当たり前だが距離を置け攻撃は当たらない。
なら槍が扱いにくい距離までいっきに飛び込むしかない
踏み込みの準備を────
『は?』
淳は
上体を逸らし、槍を背中に背負うように投擲の構えをしていた。
『戦闘開始!!』
しまった、と思った時には、合図の声が響き、同時に槍は俺の頭目掛けて1寸の狂いもなく、投げられた。
『』
横に跳び、回避したものの甘かった。
『青天光ッ!!』
淳の叫び声。
弾丸のような勢いで体が突進してくると共に鳩尾に拳が迫っていた...
回避は不可能だった。
『ゴハッ....ッッ!!』
俺はフィールド端まで吹き飛ばされた。
アンジェラ・ヴェスコンティ
2078年 =16歳 1-E
2079年 =17歳 2-G預かり
2080年 =18歳 3-G
※Eクラス以降のカテゴライズ
F....芸術
G....医学
H....工学
I.....法学
J.....その他
ざっとこんな感じ
身長150cm、体重40kg
2062年12月24生まれ
好きな物は動物(特に鳥)、苦手ものは人間(恐怖心故に)。
他人と話す事は苦手、趣味は歌。
金髪、スマート体型。
右眼は緑、(死んだ魚のような目)
左目は失明していて眼帯をつけた上で前髪で隠している。
足が不自由で常時車椅子で生活している。
体が不自由な分頭はよく回る方で座学ではかなり優秀だが体が動かせない故にIPSSでの評価は実技が[-](評価無し)という特別な立ち位置にいる為Eクラスになっている 。
苗字がヴェスコンティとなっているがその常、人身売買によって貴族に買われたフランス東部出身の孤児である。
(この世界では2068年に起こった欧州対戦という能力者と国の大規模な紛争で南ドイツを中心にチェコ、スロバキア、フランス東部、リヒテンシュタイン、オーストリア等の国が消滅してしまっている。)
アンジェラという名前は本来の母親に名付けてもらったようだがその他の昔の事は思い出したくない。(幸せすぎてかえって辛くなる)
フランス東部が崩壊してからは孤児院にいたのをヴェスコンティに身柄を保護されるも自らの地位を回復するための道具にしか過ぎなかった。
彼女の本家は魔王戦において勇者パーティーを導いた[ANGEL]の家系であったようで
『お母様の名前はアンジェラ、お祖母様の名前もアンジェラ、お父様は...よくわからない。(見たことも聞いたこともなかった)』
と発言している。
生まれてから1度も能力といった能力を発言させたことはない。
左目の失明と両足の付随はお家復興の為の力として利用しようしたヴェスコンティ家当主が
なけなしの資産を投入して探し出したにも関わらず、一切力を何も持ってないアンジェラに八つ当たりをした結果である。
(もともと彼女はオッドアイであり、失われた左目は光り輝く金色だったという。)
月日を重ねる毎に顔も見たくない、という理由で日本のIPSSへ入学へ出した。
暴行を加えられた日の痛みと恐怖にトラウマを抱えており
転んだり、人とぶつかったりバスの急ブレーキなどの強い衝撃によりフラッシュバックを引き起こしてしまう。
(次第に改善されていくが、完全には治らず怯える)
日常的に怒鳴られ暴力を振るわれてきた彼女は最早自分で考えることをせず、自分を押し殺して生きてきた。
しかし、誰か、何かを守ろうとする恋の言葉に心揺すられ、自らの意思で動き始める。
本来は作品3人目のヒロインだったが、しっかり構想を練っているうちに順序が変わってしまった。
なお、2人目の廃れた神社の巫女さんは今後おそらくたぶん出てくる、Maybe
自分のためではなく誰かの為なら感情を顕にできる優しい女の子。




