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ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
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ゴブリンカンパニー



「ククルカン信仰格闘術!!走り(ランニング)拝み(プレイ)!!」

 

 禿げ坊主が、合掌しながら駆け抜ける。

 加齢臭と慈神の癒やしを振りまきつつ。

 

「喝! 喝! 喝!」

 

 戦僧(バトルボーズ)デルモンドは、矢を恐れ身を丸めるソシエールとナイフを受けたアヴァンの近くに素早く駆け寄ると、ソシエールに迫るゴブリンの矢を、手刀で叩き落とした。


「ククルカン信仰格闘術『護神の防壁』!!」


 素早く手印を組みデルモンドは物理結界を展開した。

 不可視の防壁が茂みと街道の境界に、木の高さまで指し渡り二十メートルの幅で出現する。


 ゴブリンアーチャーの矢は、その壁に阻まれて街道まで届かなかった。 

 矢が一時止んだ頃合いを見計らい、デルモンドはソシエールの下で呻くアヴァンの脇の下からナイフを引き抜く。

 

「あっ! ぐぅぅ!!」


 アヴァンの苦悶の唸り声とともに、傷口から血が吹き出す。


「ククルカン信仰格闘術! 『癒やしっぺ(ヒーリング・ガス)』ふん!!」


 デルモンドは、まるで『握りっペ』のように拳に溜めた癒やしの効能のある『なにか』をアヴァンに投げ付けた。

 アヴァンの傷口が見る間にふさがってゆく。

 ソシエールに怪我がないことを確認したデルモンドは素早く馬車まで戻る。


「はっ! どうした? どうなった?! きっ傷は……?」


「アッ、アヴァン!! 大丈夫なの?!」


 二人共倒れていたり伏せたりしていたのでデルモンドが駆け寄って回復呪文を使った事に気付いていない。

 回復したアヴァンが飛び起きて、ソシエールの手を引いて起こす。


 ちょうど時を同じくしてデルモンドが展開した物理結界が消えて、ゴブリンアーチャーの弓撃が再開した。


「おーい。どうしたー降参かー?」


 馬車まで戻ったデルモンドが二人に声をかける。


「くっ、やるさ! まだやれる!!」

 

 再び飛来し始めた矢を払いながらアヴァンは怒鳴り返す。


「よろしい。では、頼んだぞ。」


 デルモンドは、自分の腰をトントン叩きながら馬車の中に戻って行った。


「確かナイフで刺されたかと思ったんだけど……。気のせいかな? ソシエール、そっちはどうだ?」


 剣で矢を払いながらアヴァンはソシエールに訊ねる。


「え、ええ。やれる。私はまだ本気を出しちゃいないわ!!」


 ソシエールはうなずいて立ち上がり帽子をかぶり直した。


「あのオジサン、近くでなんか言ってたような気がしたんだけど」


「詮索は後だ!!」


『ブォォオオオオーーー!!!』


 再び角笛が鳴り響き、赤盾と短槍で武装し、無骨な作りのトゲ鎧を着たゴブリンの一団が現れた。


「ゴブリンガード!! 単体脅威ランクD!」


 遠くからクープの声がするが、馬車の向こうなのか、アヴァン達からは姿が見えなかった。


「ズゥィィール・ブォロロローグ・アダン!!」


 ゴブリンの背後の森の中から、しゃがれた男の声がする。

 ゴブリンアーチャーの弓撃が止んだ。

 ゴブリンガード達は灌木を越えて整列し、赤い盾を並べる。

 統制の行き届いた軍隊の動きである。


「何なんだよ! この国のゴブリンは!! ゴブリンったら、ザコ中のザコだろ?!」


 アヴァンは舌打ちをして剣の柄を握り直した。


「シャッサゥルルル・アダン!!」


 再び声がして、その声に呼応するように、ゴブリンガード達は盾の列の間から槍の穂先を出す。


「ヴォルルルルレン!!」


 隙間なく盾と槍衾を並べたままゴブリンの一隊は馬車に向かって前進した。


「ソシエール! 森が焼けたってかまわない、やっちまえ!!」


 アヴァンが叫ぶと、ソシエールは小さな声で何事かつぶやきながら、懐から取り出した小袋の中身をゴブリンの方へ振り撒いた。


 その時、茂みの向こうから再び正体不明の声がした。


「ムンバアァァァル・ヴォルルルレン!!」


 ゴブリンの横陣は、密度を保ったまま駆け足を始める。


「ゴブリン小隊(プラトゥーン)突撃(アサルト)じゃ!!」


 また、何処からかクープの声がする。


「第三階位魔法、『ファイヤ・ウォール』!!」


 ソシエールが前方に手をかざすと魔法が発動し、炎の壁が街道の左右にある木々の高さまで立ち上がる。

 しかし、ゴブリン達は最初の火の萌芽の段階で走り込み、吹き上がる炎を飛び越え、こちら側に到達していた。


「ゴメン! 避けられた!!」


 ソシエールは短く叫ぶと、次の呪文の用意を始めるが、駆け足のゴブリン達がソシエールの前まで到達するまで、僅かな時間しか残されてはいなかった。


「何なんだよ! ゴブリンだろ?!」


 木の陰からゴブリンアーチャーの弓撃が再開される。

 ほぼ真上に打ち上げられた矢は、上空で隘路を吹き抜ける風に乗り、炎の壁を越して、測ったかのように冒険者達の頭上に殺到する。

 ゴブリンが迫る今、上を見上げてばかりもおれず、ソシエールとアヴァンは、矢が外れることを祈り前面のゴブリンを迎え撃とうとする。

 

「地疾り旋風剣!!」


 アヴァンは両手剣を片手で振り回す。

 両足と空いた片手を地面につき、半ば伏せた姿勢で勢いを付け、三度回転させた大剣の切っ先をゴブリンの横陣にぶつけた。


「グゲェ!!」


 軌道の低いアヴァンの攻撃は、先程のように盾で跳ね上げられることもなく、隊列の端のゴブリンに叩き込まれた。

 直撃を受けた一体と巻き添えの一体が共に街道脇の木の幹に叩き付けられる。


「第二階位魔法『火球(ファイヤ・ボール)』!!」


 隊列の中央にソシエールの杖の先から撃ち込まれた火弾が炸裂し、四人のゴブリンが爆風で飛んだ。


「やった……! きゃ!!」


 ソシエールは小さくガッツポーズをしたが、時を同じく頭上から降ってきたゴブリンアーチャーの矢が肩に突き刺さった。


「ソシエール!!」


 命中したのはその一本だけだったが、ソシエールはその場でうずくまってしまった


「ぐっ、なんだよ!!」


 アヴァンの強撃とソシエールの火焔魔法によって、ゴブリンガード小隊の半数は吹き飛んだが、残りの半数は狼狽えず、先ずはアヴァンを標的とし、彼を取り囲むと盾を押し付けて押さえ込みにかかった。

 

「くっ、くそぅ、なんでびくともしやがらねぇんだ!!」


 矮小なゴブリンであるが、地面に突き立てた大盾の後ろから体重をかけて六人がかりで圧されると、腕や足を動かす余地が無くなり、剛力のアヴァンでも、身動きできなくなった。

 包囲に加わっていないゴブリンが、単槍を構えてアヴァンに迫る。


「アヴァン……、ううう、」


 ソシエールの受けた矢に、毒が塗ってあったのだろう。

 彼女は一度顔を上げ、自ら矢を引き抜き、アヴァンを助けに向かおうとしたが、肩を押さえて呻くと再び地に伏してしまった。


「ソ、ソシエール!! ガッ!!」


 槍の『石突き(刃の無い方)』で兜をしていない後頭部を強打され、アヴァンは気絶した。



※※※※※※※※



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