表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
46/48

開戦 後


『ビュィィィイイイイイイー…』


 長く余韻を残し、門楼から放たれた鏑矢かぶらやが、猪獣人(ワーボア)の族長ガルボアの頭を越し、峠の下方に広がる森へ消えていった。

 

 ガルボアが率いるワーボアの戦士達は、五候国が一つ『イスカンダリア候国』と、同じく五候国(当時は七候国と呼ばれていた)の一つであったが、滅亡した旧デール候国との国境まで進軍した。


 彼らワーボア達と、彼らと同じく火竜アンカランの呼び出しに応じ、不本意ながら仇敵と肩を並べて進軍してきたワーウルフ達の連合軍約六百は、軍装を整えたゴブリンの軍団をすり抜け、最前線に立たされた。

 

──坂の上には剣呑な城壁、振り返ればゴブリンどもの槍衾。

──我らはあの砦の人間と戦うのか?

──何のために?

──しかも、尻をゴブリンにつつかれながら……。

──これはどうやら、我ら一族は良くない路に迷い込んだようだな。

 

 貧相ながら武具を辛うじて身に着けているワーボアは獣人化し、二足歩行の猪の姿になっている。

 装備を持たぬ者は獣化して大きな四足の猪姿になり、人化したワーボアを乗せている。

 隣にたむろする狼人間(ワーウルフ)達も、同じような布陣である。 


 鏑矢の耳障りな音に、ワーウルフの戦士達が疎ましげにうなり声をたてたが、頭はうなだれ尾は腹下に丸め込まれている。


「Gurururu……、ガルボア!」

「おお、プリムステイン」


 ワーボアの族長ガルボアの元にワーウルフの族長プリムステインが駆け寄る。

 二足で歩く狼の姿をしたプリムステインは、つい最近まで血みどろの抗争を繰り広げていたワーボアの戦士達を、うなり声で威嚇しながら道を作り、ガルボアの横に並び立つと、坂の上に立ちはだかるいつの間にか建造された城壁を見上げた。


「Hyuumm? ガルボア! 貴様ゴブリンどもの言葉はわかるか?」


「プリムステイン……。お主は言葉も解らずに、ゴブリンどもの口上をどうやって知ったのだ? それとも訳も分からずについてきたのか?」


 呆れ顔でガルボアがそう言うと、狼男のプリムステインは唸り声を上げてガルボアに噛み付くような仕草をした。


「Guwarun!! 吾輩とて鉄火の森の小ゴブリン共の使うキーキー言葉はわかるわい!」


「わかるも何も、ワシら獣化人が使うのと同じ言葉だろうに」


「Wamhu!! この森に昔からいる小さいゴブリンの言葉ではない。吾輩が言いたいのは最近森の北で見かける火竜の代理人を気取るあの大きなゴブリンの言葉だ。お主は古い言葉を知っていると、よく自慢するだろう? あそこのキーキー言葉に混じるギーギー言葉はわかるのか?」 


 プリムステインが親指で背中越しに指し示す先。

 獣化人達の陣を背後から威圧するゴブリンの軍は、十人くらいの小隊が多数集まり構成されており、各小隊には体格の抜きん出た大ゴブリンがたいてい一人は配置されていた。

 大ゴブリン達は人間の戦士もかくやという豪華な武具で、たいていは赤竜の彫られた盾を手にしている。


「…………」


 ガルボアは暫くゴブリンの陣地に聞き耳を立てていた。

 大ゴブリンは小ゴブリンに何かどやしつけるように命令している。


「Wam?」


 プリムステインはガルボアの顔を覗き込む。


「……猪と狼をけしかけて、様子を見ようぞ。奴らが逃げ出さないように槍で脅せ……」


「Gamwasshu!」


 ガルボアの翻訳を耳にしたプリムステインは、うなり声をたてる。


「あれは古いドワーフの言葉だ。……何故ゴブリンが『鉄火語』を使う?」


「fuuumm.. そもそもヤツら、赤盾の大ゴブリンは、この逃げ場も行き場もない鉄火の森『火竜の遊び場』に、何処からどうやって来た……、」


『ブオオオオォォォォー』


 プリムステインの自問は、背後で吹き鳴らされた角笛にかき消された。


「シングンセヨ! シングンセヨ! イダイナル『ホムラ』ノタイテイは、ニンゲンのチをヨクス!」 


 ゴブリン達は一斉に槍の石突きで地面を打ち鳴らし、ワーボアとワーウルフに進軍を促した。


「攻城兵器も無しに。あの石壁をよじ登れとでも言うのか?!」


 ガルボアは思わず背後に叫ぶ。


 その、ガルボアの悲痛な叫びに応えるように、ゴブリン軍団の背後から大きな火の玉が、ちょうど先程の鏑矢の軌跡を逆に辿って、城壁に命中した。


『ドゴォォォン!!』


 火の玉は命中したとたんに爆発し、縮尺のおかしい大輪の紅い花が咲く。  


 爆風は火球の軌跡を追って、後ろから頭上、頭上から前の城壁まで視線を移したガルボアとプリムステインの顔を歪めさせた。


 ワーボア、ワーウルフ連合軍の後ろ側にいた彼等でさえ、この有様である。


 前衛では転倒する獣化人まで出ている。


『…………?!』


 城壁は無傷であった。

 石組みの一つ一つには光る文字が浮かび、上空にも光る文字の壁が、城壁を延長させたように広がっている。

 爆風が完全に遮断されていたので、すべて跳ね返って侵攻軍の前衛を打ち倒してしまったのだ。


 そんな惨状はお構いなしに火球、氷塊、岩塊が次々にゴブリン軍団の背後から発射され、それらは城壁に殺到する。

 間断無く爆発が起こり、それらはすべて跳ね返り、間断無くワーボア・ワーウルフに襲い掛かった。


「ゴブリンどもに殺されるのか!!」


 うめき声をあげるガルボア。


「伏兵! 伏兵!」


 爆風で連合軍の前半分は瓦解した。

 そこに、城壁の近くに残っていた木々の陰に潜んでいた、ガニシカ・アルマンの死霊兵が一斉に飛び出して、襲いかかったのだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ