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ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
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竜の誠を捧げる


 

 激闘が終了した『闘技場』の隅では、人化して倒れ伏している剣の悪魔マルキス・ヴェルキスを、戦僧デルモンドと竜殺しのアヴァン・ガルドが介抱している。

 

「ああアヴァン! 死なないで坊や……、」


 悪夢にうなされるように、マルキス・ヴェルキスはうわごとを言いながらアヴァンにしがみついている。


「勝ったよ姉ちゃん、俺達、勝ったんだよ。だからもう休んでいいんだよ」 


 マルキス・ヴェルキスの上半身を抱きかかえ、アヴァンがそう伝えると、夢うつつながらマルキスは安心したのか、「ほう」と息をつき、静かな寝息を立て始めた。


「ククルカン信仰格闘術『悪魔回復(ダイモンヒール)』」


 デルモンドはマルキス・ヴェルキスに回復魔法をかけると、後はアヴァンに任せ、少し離れたところにしゃがんでいるソシエールの元に向かった。


「……ここで、水流と、加熱した溶岩を合わせて……」


 ブツブツ言いながら魔法錬成台の上で踊る魔法陣や魔法単語をコネクリ回して、魔法シンボルを次々と作り出しているソシエールの手元をデルモンドは覗き込む。


「何だ嬢。まだ錬成台で遊んでいるのか? ん? 何か新しい魔法を作っているのか? ……んんん? イカンぞ嬢! 水と溶岩を急にくっ付けると大変なことになるぞ」


 組立途中の魔法構文を差して、デルモンドは問題点を指摘する。

 デルモンドを見上げたソシエールは、しかし、その指摘点には答えを持っていたようで、いつの間に覚えたのか、錬成台上に図形を出現させて説明する。


「うん。前にね、遊びで池に『マグマウォール』の魔法を撃ち込んだら、すごい湯気を出して爆発したの。それを思い出してね。その力をどうにかコントロールしようと思うの。そのまま爆発させるだけだと威力は火球(ファイアボール)と大して変わらないから……、前段のシークエンスで、物理障壁を、こう、筒と云うか円錐形で展開して、その中に水とマグマを入れるの」


 人、多分ソシエール自身を模した人形の図が錬成台現れ、その図の人物が手をかざすと、手の先に向こう側が尖った円錐形が現れる。

 その円錐形の中に多分水と溶岩を表す赤と青の光点が入り込む。


「そんな事したら、行き場を失った蒸気で物理障壁内部が!!」 


 錬成台の中、円錐形の図形内部で赤と青の光点が接触し、『ボンッ』と爆発エフェクトが表示される。


「ここで、物理障壁の先っぽを解放する!!」


 円錐内部で発生し、爆発的に膨張した蒸気が、ソシエールが故意に欠けさせた円錐先端から、一直線に飛び出すシミュレーション映像が錬成台上に表示される。


「……ね? 名付けて『蒸気爆裂(スチーム・パンク)』」


 ソシエールは自慢げにデルモンドを見る。


「うーむ。確かに膨張した蒸気を収束させ指向性をもたせれば、ある程度の威力が……。まてよ、円錐の中に熱に強い球体を入れ、円錐の先をもっと長い筒状にして爆発力で射出できるかも……、しかし待てよ、こんな大仰な射出台を目の前で組まれたら妨害されるか、せめて避けるだろう。空間に固定するこの方式ならば、種明かしされたら容易く避けられるぞ。……うーん、でも攻城戦ならば……、いやいやソシエール! 興味深いが後にせい。」


 デルモンドがパチンと手をたたくと、ソシエールの錬成台は消えた。


「ミスランティア、クープ、拙僧、イスカンダリア候フレデイン、そして嬢。この魔法錬成台を扱えるのは、この大陸でも母様とその高弟達だけで、五人しかいない。なし崩しのようで仕方がないが嬢が五人目だ。くれぐれも悪用せぬように。誰かが悪用したときは、他の者が成敗する取り決めだ」


「……判ったわよ」


「まあ、今は母様の『宵待ちのローブ』に貯蔵されている魔力でやりたい放題出来るが、本来魔法錬成はそれだけで膨大な魔力を使う。構文を丸々記憶できれば、作った魔法を使うことは出来るが、錬成出来るのは今だけだと思った方が良いな」

 

「……うん」


 ソシエールはつまらなそうに膝を抱えて座り直し、視線を闘技場の中央に向け、デルモンドの僧衣の裾を引っ張る。 


「ねえ、おじちゃん……。あれ……、大丈夫なの?」


 ソシエールがデルモンドへ指で指し示す先。

 闘技場の中央では、暗黒神父パストールが腕組みをし、何故かアイムチャンピオン的佇まいで屹立している。

 彼の足元には何処から湧いたか三人の裸の女がいた。

 一人、獅子のたてがみのような、見事な赤髪長髪の女が胡座をかいて座る左右に、赤髪短髪の二人の少女が、しなだれかかるように寄り添っている。

 真ん中の獅子女には片腕の手首から先が無く。もう片方の手は血がにじむ首元に沿えられている。

 彼女の額の左右からは角が生えていたらしいが、その角は両方とも折れていた。

 獅子女にへばり付く少女達には慎ましやかながら角が生え揃っていたのだが、パストールとの話し合いがどんな風に転んだのか、突然立ち上がり、二人して自身の角に手をかけてポッキリ折ると、パストールに提出してしまった。


(いにしえ)の~、竜の作法にのっとり~、角の生え揃うその時まで~、心の誠を捧げまする~」

 

 ヒラヒラと舞い、間延びした調子で二人の少女はそう言うと、今度はパストールの左右に(はべ)った。


挿絵(By みてみん)  


 パストールは少女達の奇行に特に反応せず、いまだに胡座をかいて目を瞑っている獅子髪の女を見下ろしている。


「暗黒冥府を統べる闇の仔を孕みし聖母よ、此処に今、傷負いし闇仔が居りますれば、疾く疾く神意顕現し、奇跡降ろしたまへ!! 暗黒聖母奇跡『竜回復(ドラゴン・ヒール)!!』」

 

 パストールは獅子髪女の首元に手を添え回復魔法を唱える。

 女は瞑目無表情でされるがままである。

 

「…………」


 首元の傷はたちどころに治った。

 獅子髪女は一つ深呼吸をして、大きなルビーのような瞳を開きパストールを見上げる。


挿絵(By みてみん)  

 

「……うむ。重畳」


 そう一言呟くと艶やかに笑う獅子女、改め竜女は、口から焔を漏らした。


「我の完敗だ。火竜グアラカン・マッハバァニィと我が妹ゴーシュ、ドロワの三竜。角の生え揃うその時まで、ドラゴンナイト、アヴァン・ガルドとその仲間の虜となろう」


 ルビーの瞳は赫々と煌めく。


☆★★登場人物紹介★★☆


挿絵(By みてみん) 

火竜グアラカン・マッハバァニィ(人化) 




挿絵(By みてみん)  

妹左竜ゴーシュ・マッハバァニィ




挿絵(By みてみん)  

妹右竜ドロワ・マッハバァニィ



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