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ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
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氷結の獄門


 縦坑底部に集結したリザードマン軍団は、再び『闘技場』へ侵入を試みた。


 先程、第一陣を蹴散らしたデルモンドは、奥に退き、今、闘技場への出入り口に立ちはだかっているのは、ソシエールひとりだった。


『グワカカ!! これより我ら第二陣、密集突撃を敢行する!』


 相手は着膨れした人族の娘っ子1人ではあるが、第一陣の敗退を踏まえ、リザードマンの指揮官は厳しい鳴き声で号令を発する。


『グエロゲロ! 前列戦士族、腹這え! 後衛魔法族、攻撃魔法! 目標、前方、人族魔法使い!』


『ギャワワワ! アクア・ブラスト!!』

『グゲゲゲー! ファイアボール!!』

『アシャシャ! ライトニング!!』


 魔法を使えるリザードマンウィザード達が、魔法の集中砲火をソシエールに向けて放つ。

 水球は火球の爆発で蒸気となり、そこに雷撃の大電流が注がれると、ソシエールの周りに濃密な雷雲が召還されたかのように、紫電舞い踊る殺傷空間が出現した。

 

『カカカカ! 目標はどうなった! 焼けたか? 焦げたか? 痺れたか?』  

 

 明らかにオーバーキルな、軍団規模の遠距離攻撃によって、出入り口の辺りは埃と湯気が充満し、それがおさまるまで、視界は遮られた。


『??!』

 

 霧が晴れると、そこには先程と変わらず、ソシエールがちんまり立っている。

 彼女の周りには、魔法陣と何だか良く判らない光の盾のようなものが浮遊している。

 ソシエールの両掌は、見えないテーブルでも有るかのように、目の前にペタリと置かれ、彼女はそれをペトペト動かしている。

 

『シュッ! シャシャー!! 投擲部隊!! スロー!!』


 指揮官の号令で中衛軽装歩兵集団が、手にしていた短槍や腰に下げていた手投げ斧を、ソシエール目掛けて次々と投擲する。

 魔法使い達も辺りの石を拾いソシエールに投げつけた。


『??』


 しかし、それら、またまたオーバーキルな飛び道具も、ソシエールの近くまで飛ぶと、いきなり前進する勢いを失って、その場で手放したかのように真下に落ちて積み重なった。


 ソシエールはペタペタしながらポテポテ前進を始める。


『シギャァアアアアア!! ファイアドレイクを前へ出せ!!』


 悲鳴のような指揮官の号令で、部隊は縦に四つに割れた。

 割れ目の一番奥、軍団の背後にいた大きな火トカゲに、三本の進む道が開かれる。

  

『ロロロロロロ!』


 その間隙を、後ろから操者にけしかけられたファイアドレイクが、炎混じりのうなり声を上げながら駆ける。

 

「えーっと、第何位か判らないけど、『氷結の獄門』発動」


 目標範囲を順に指差しながら、ソシエールは自分の視界の片隅にある魔法発動のシンボルを『キラッ』っとさせた。


『バキン!』


 一瞬である。

 一瞬で三体のファイアドレイクは、床から突如発生した人の背丈ほどの霜柱を凶悪に巨体化させた氷の槍の稲穂原に取り囲まれて、そのまま氷の立像と化してしまった。

 単に水が凝結しただけのただの氷ではない。

 白煙を吹き上げる、やばいタイプの氷だ。

 

「ありゃま! これはヤバいよ、凍りすぎだよ」


 ソシエールが他人事のような感想を漏らす。


『ア“ア“ア“ア“ア“ア“ア“ー』


 直後、ファイアドレイクの蹂躙を見物するため、進軍を控えていたリザードマン達は悲鳴を上げる。

 泣き叫ぶ。

 冷血のリザードマンにとって、カチンコチンは最も恐れる死に様である。


 我先にと逃げ出そうとするが、退路は縦坑を登る階段一つだけ。

 殺到した途端、内面の壁に杭を打ち込んだだけの階段ステップはポッキリ折れてしまった。

 

 その後リザードマン軍団はトカゲらしく壁をよじ登って逃走しようとするが、喧騒で巻き起こされた風に乗って、『氷結の獄門』から発せられる冷気が、ヒタヒタと縦坑に充満し、その風に当たったリザードマンは、冷たくなって眠りについてしまった。

 壁からトカゲがぼたぼた落ちてくる。

 リザードマン軍団の半数は命からがら縦坑を脱出でき、残りは底部で強制的に冬眠させられたのだ。

 

「なんか、かたづいたみたい」


 ソシエールは振り返り、見守っていたデルモンドに告げる。


「うむ。火トカゲは気の毒だが、リザードマン軍団は無益な殺生をせずに追い払ったな。偉いぞ」


「この氷、いつまで大きくなるのかしら?」


「……ううむ! 錬成する時、注ぐ魔力の量を指定するのを忘れておった!」  


「ええ? どうなっちゃうの? 氷、まだまだ大きくなってるわよ!」


「魔法の錬成なんぞ久し振りだったものでなあ、」


 ちょうど出入口の辺りで固まった、ファイアドレイクの氷像から生えた氷の槍は更に密集し、成長を続け、とうとう出入口を塞いでしまった。


「魔力が切れれば、魔法は終わる、のだが……」

 

 デルモンドが珍しく狼狽したように言いよどむ。


「魔法の供給源は母上の魔力貯蔵庫……、大陸が氷付けになるまで終わらんかも」


「ええええ!」

 

 そんな事を言っている間にも、塞がった氷の壁の向こうから、パキポキと氷が成長する音が響いてくる。


「なんてな。お主が魔法を止めれば良いのだ。『氷結の獄門』を示すシンボルを『キラッ』させて待機状態に戻すのだ」

 

「き、きききっ、キラッ!」


 慌ててソシエールが言われたとおり操作すると、氷の軋む音は止み、冷気の噴出は治まった。


「……。まあ、これで良いだろう。……さて、残るは竜の大将だけか」

  

 デルモンドは闘技場の中心へ目を向ける。

 竜と剣士の戦いは、最終局面を迎えているようだった。


 


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