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ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
32/48

3VS3

『竜闘士ドロワ・マッハバアニィ!!』

『同じくゴーシュ・マッハバアニィ!』

 

 それぞれ大きい方の片腕を、盾のように前に構えて突進する左右の二竜。

 翼は畳まれて背中に張り付いている。

 近づいてきてはじめて判ったが、体躯は巨大で、馬を含めた四頭立ての馬車ほどの大きさだった。 

 未だ中央の宝物山に鎮座するグアラカンを含め、三竜とも人化の魔法を解除して、竜の姿に取って戻っている。

 竜の姿に戻っても不釣り合いに大きい片腕で、床に転がる金貨や宝石を掃き散らし、かき分けながら、二竜は破邪覇道に迫る。


「アムル聖教会、信仰奇跡『(ホーリー・)(エンチャント)!!!』」


 先陣をきったパストールは、先程着服した古銭を祝福し、竜に投げつける。


 飛翔しながら火を噴き出したコインは、赤い軌跡を引きながら竜の手前の床に突き刺さる。


 右手の大きいドロワは、床でくすぶるコインなどものともせず、踏み越した。


「ジュ・ヴ・サリュー!! ジル・ヴ・ラム・アムル!!」


 手を組み、聖ゲロンデイクスの護符に口づけ、高速で(ひざまづ)いたパストールは祈りの言葉を唱える。


 挨拶程度の簡単な『アムルを讃えよ(ビブラ・アムル)』ではなく、聖教会での正式な祈りの言葉である。


『クオッ!!』


 右竜ドロワ・マッハバアニィの腹の下で爆発が起こり、彼の巨体が浮き上がる。


 腹の下で、コインが爆発したのだ。


「グハッ!」


 上体が起き上がり両脚立ちになるドロワ。

 胸の下には爆発でできた痕が、黒い花のアップリケのように残っていた。

 

「やったわ!」


 ソシエールが歓声を上げる。 


「ブエッホ!!」


 パストールの口と鼻と耳の穴から黒煙が噴き出す。

 聖なる祈りの言葉は発声したパストール自身をも(さいな)み、彼の発声器官は発火した。


「ほう! 竜を残仰け反らすとは高火力だな。しかしウロコは突破できていない」


 デルモンドは未だ後ろに控えている。 

 

「さて、お嬢。お主もドラゴンナイトの称号が欲しいのか?」

 

「えっ? あたし? あたしゃ要らないわよ!! 何で魔法使いが騎士位を取らなきゃいけないのよ」 


 デルモンドの隣でミーちゃんをいじっていたソシエールは、慌てて否定した。


「では、パストールちゃんの支援をしましょうね」


 今まで沈黙していた杖の先っぽのミーちゃんが、ペロペロキャンディーを振り回しながら復活した。 


「ああ! ミーちゃん!」


 ソシエールはミーちゃんに抱き付く。

 

「ムギュギュ。ゴメンね。用事が一段落したから戻ってきたわ。ちょっとエステル!!」


 杖のミーちゃんはペロペロでデルモンドを指す。

 

「ム? なんですかな母様?」


「アナタ日が暮れるまでには帰るのよ! そうじゃないと、お母さん暴れちゃうわよ?!」


「はあ、まあ、元よりそのつもりですぞ」


「なら良いけど。コッチにデール候国方面から謎の軍団が向かって来ているけど、それはお母さん、何とかしますからね」

 

「はあ…………。は?」


 一瞬聞き流しかけたデルモンドであった。


「ちっ、ちょっと待て母様! 謎の軍団って」 


「気にしないでぇ。あ、でも、早く帰って欲しいのは本当よ。さあさあ! 若い子達が頑張ってるんだから、あなたもしっかりおやりなさい。そして早く帰ってきてね」

 

「ヌオワ!!」


 ミーちゃんは重力操作魔法を使って、デルモンドを左右竜のもう一匹、パストールの背後に回り込もうとしていたゴーシュ・マッハバアニィの目の前に放り投げた。


弟従僕(おとうとじゅうぼく)よ。すまなんだ』 


 パストールの頭にクープの声が響く。


「ああ! 兄従僕(あにじゅうぼく)様!! わたくし寂しゅうございました!!」


 場所が特定できないので、空中を見つめながら、身悶えするようにパストールはクープに呼び掛ける。


『きっ気持ち悪いのう! しかし、お主等も運が良いのか悪いのか。竜が三頭もおったのか。しかも、見たところ、中央はAAA(トリプルエー)。左右はAA(ダブルエー)位じゃろう』


「そう仰られるならば、お助け下さいよ!」


『すまんが、こちらは手が放せんのだよ。三頭討伐したら、パーティーとしてAA。人数割りしても一人につき一頭ならば、全員AAランクを確約しよう。だから早めに狩って戻ってくるのだ』


「五候国冒険者ギルドでダブルエーランクを頂ければ……」


『各国の要職に引っ張りだこじゃのう』


「ふおお!!」


 奮起したパストールは、懐から掴めるだけのコインを取り出した。


「せっかく着服したお宝ですが、栄達のために放出しますぞ!! ソイッ! ソイィィッ!!」

 

 右竜ドロワにコインを乱射するパストール。


「ふぬぬ」

 

 高みの見物を決め込もうとしていたが、ミーちゃん魔法で左竜ゴーシュの前に運ばれたデルモンドは、立ち上がって僧衣の埃を払った。


『お前が相手か?』


 標的をアヴァンからデルモンドに変更する左竜ゴーシュ。


「そうらしいな」


 指をバキボキと鳴らして、デルモンドは構える。



 

「ほー。俺がブエナ山てやっつけた火竜よりデッカいなあ。お前がさっきの竜人間か?」


『左様。そして、ブエナ山の火トカゲと一緒にするなよ!』

 

 中央ではアヴァンとグアラカンが対決姿勢をとる。  





「さて、出世立身の踏み台となっていただきますか」  


『まあ、そうは言っても、吸血鬼の段階で公職追放なんじゃけどなぁ』


「あ、兄従僕!! それはあんまりな!!」


 右側では、パストールVS右竜ドロワ。




   

「急いでおる。なんの恨みもないが、。拙僧はそこいらのヒヨッコ共ほど、優しくはないからな。お主も不運を呪うが良い」  


『…………』


 左側では、デルモンドVS左竜ゴーシュ。


 三人対三頭の戦いが始まった。



 

「あたしは…………?」

 

 ソシエールが残される。 


「あなたは後方支援よ。その前に、あなたに私の魔法知識の一部を転写するわ。ちょっとおでこをくっつけて」


 闘技場の物陰で、ソシエールとミーちゃんは何かを始めた。

 

 



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