3VS3
『竜闘士ドロワ・マッハバアニィ!!』
『同じくゴーシュ・マッハバアニィ!』
それぞれ大きい方の片腕を、盾のように前に構えて突進する左右の二竜。
翼は畳まれて背中に張り付いている。
近づいてきてはじめて判ったが、体躯は巨大で、馬を含めた四頭立ての馬車ほどの大きさだった。
未だ中央の宝物山に鎮座するグアラカンを含め、三竜とも人化の魔法を解除して、竜の姿に取って戻っている。
竜の姿に戻っても不釣り合いに大きい片腕で、床に転がる金貨や宝石を掃き散らし、かき分けながら、二竜は破邪覇道に迫る。
「アムル聖教会、信仰奇跡『聖別!!!』」
先陣をきったパストールは、先程着服した古銭を祝福し、竜に投げつける。
飛翔しながら火を噴き出したコインは、赤い軌跡を引きながら竜の手前の床に突き刺さる。
右手の大きいドロワは、床でくすぶるコインなどものともせず、踏み越した。
「ジュ・ヴ・サリュー!! ジル・ヴ・ラム・アムル!!」
手を組み、聖ゲロンデイクスの護符に口づけ、高速で跪いたパストールは祈りの言葉を唱える。
挨拶程度の簡単な『アムルを讃えよ』ではなく、聖教会での正式な祈りの言葉である。
『クオッ!!』
右竜ドロワ・マッハバアニィの腹の下で爆発が起こり、彼の巨体が浮き上がる。
腹の下で、コインが爆発したのだ。
「グハッ!」
上体が起き上がり両脚立ちになるドロワ。
胸の下には爆発でできた痕が、黒い花のアップリケのように残っていた。
「やったわ!」
ソシエールが歓声を上げる。
「ブエッホ!!」
パストールの口と鼻と耳の穴から黒煙が噴き出す。
聖なる祈りの言葉は発声したパストール自身をも苛み、彼の発声器官は発火した。
「ほう! 竜を残仰け反らすとは高火力だな。しかしウロコは突破できていない」
デルモンドは未だ後ろに控えている。
「さて、お嬢。お主もドラゴンナイトの称号が欲しいのか?」
「えっ? あたし? あたしゃ要らないわよ!! 何で魔法使いが騎士位を取らなきゃいけないのよ」
デルモンドの隣でミーちゃんをいじっていたソシエールは、慌てて否定した。
「では、パストールちゃんの支援をしましょうね」
今まで沈黙していた杖の先っぽのミーちゃんが、ペロペロキャンディーを振り回しながら復活した。
「ああ! ミーちゃん!」
ソシエールはミーちゃんに抱き付く。
「ムギュギュ。ゴメンね。用事が一段落したから戻ってきたわ。ちょっとエステル!!」
杖のミーちゃんはペロペロでデルモンドを指す。
「ム? なんですかな母様?」
「アナタ日が暮れるまでには帰るのよ! そうじゃないと、お母さん暴れちゃうわよ?!」
「はあ、まあ、元よりそのつもりですぞ」
「なら良いけど。コッチにデール候国方面から謎の軍団が向かって来ているけど、それはお母さん、何とかしますからね」
「はあ…………。は?」
一瞬聞き流しかけたデルモンドであった。
「ちっ、ちょっと待て母様! 謎の軍団って」
「気にしないでぇ。あ、でも、早く帰って欲しいのは本当よ。さあさあ! 若い子達が頑張ってるんだから、あなたもしっかりおやりなさい。そして早く帰ってきてね」
「ヌオワ!!」
ミーちゃんは重力操作魔法を使って、デルモンドを左右竜のもう一匹、パストールの背後に回り込もうとしていたゴーシュ・マッハバアニィの目の前に放り投げた。
『弟従僕よ。すまなんだ』
パストールの頭にクープの声が響く。
「ああ! 兄従僕様!! わたくし寂しゅうございました!!」
場所が特定できないので、空中を見つめながら、身悶えするようにパストールはクープに呼び掛ける。
『きっ気持ち悪いのう! しかし、お主等も運が良いのか悪いのか。竜が三頭もおったのか。しかも、見たところ、中央はAAA。左右はAA位じゃろう』
「そう仰られるならば、お助け下さいよ!」
『すまんが、こちらは手が放せんのだよ。三頭討伐したら、パーティーとしてAA。人数割りしても一人につき一頭ならば、全員AAランクを確約しよう。だから早めに狩って戻ってくるのだ』
「五候国冒険者ギルドでダブルエーランクを頂ければ……」
『各国の要職に引っ張りだこじゃのう』
「ふおお!!」
奮起したパストールは、懐から掴めるだけのコインを取り出した。
「せっかく着服したお宝ですが、栄達のために放出しますぞ!! ソイッ! ソイィィッ!!」
右竜ドロワにコインを乱射するパストール。
「ふぬぬ」
高みの見物を決め込もうとしていたが、ミーちゃん魔法で左竜ゴーシュの前に運ばれたデルモンドは、立ち上がって僧衣の埃を払った。
『お前が相手か?』
標的をアヴァンからデルモンドに変更する左竜ゴーシュ。
「そうらしいな」
指をバキボキと鳴らして、デルモンドは構える。
「ほー。俺がブエナ山てやっつけた火竜よりデッカいなあ。お前がさっきの竜人間か?」
『左様。そして、ブエナ山の火トカゲと一緒にするなよ!』
中央ではアヴァンとグアラカンが対決姿勢をとる。
「さて、出世立身の踏み台となっていただきますか」
『まあ、そうは言っても、吸血鬼の段階で公職追放なんじゃけどなぁ』
「あ、兄従僕!! それはあんまりな!!」
右側では、パストールVS右竜ドロワ。
「急いでおる。なんの恨みもないが、。拙僧はそこいらのヒヨッコ共ほど、優しくはないからな。お主も不運を呪うが良い」
『…………』
左側では、デルモンドVS左竜ゴーシュ。
三人対三頭の戦いが始まった。
「あたしは…………?」
ソシエールが残される。
「あなたは後方支援よ。その前に、あなたに私の魔法知識の一部を転写するわ。ちょっとおでこをくっつけて」
闘技場の物陰で、ソシエールとミーちゃんは何かを始めた。




