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ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
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坑道での会敵

 

「では、ここで待っていてくださいね」


 アヴァンとソシエールにそう言い残すと暗黒神父パストールは暗闇の中に飛び込んでいった。


挿絵(By みてみん)  


 胸元の護符を握りしめ、神父は走る。 

 彼の目は暗闇をものともせず、疾走をしていても、一切の物音をたてなかった。


 アヴァンとソシエールは、走り行くパストールを目で追うことができず、暗闇で立ち尽くしていた。

 

パストールは本坑道と横坑道が交わる『ト』の字状の場所に到着した。

 そっと本道から横道を覗き込む。


 横道は三人並ぶ程度の幅で、本道より一回り細くなっていた。

 パストールの魔眼が、微かに金属の反射光をとらえる。

 遭遇者はパストールの予想よりも大分遠くにいた。


──鎧が光っているのか?


 どうやら金属鎧で武装した者がいるようだ。

 カンテラの炎は、辺りを警戒しているのか足元を照らす程度に抑えられていた。 


「面倒なので、呪文で黙らせてから誰何(すいか)しましょうか」


 護符をかかげ、走りながらパストールは小声で聖言を唱える。

 

「アムル正教会信仰奇跡『くちチャック(サイレンス)』!!」

 

 彼の手にある護符と口から焔が吹き出して、坑道が一瞬赤く輝く。 


『パストール!! 気を付けて! 抵抗(レジスト)されました!!』


 呪文発露後間を置かず、パストールの頭にミスランティアの念話が響く。


『先程から私の索敵を阻害する領域と、貴方の目の前の相手は重なります。魔法抵抗の力を、相手は有しています。一旦下がっ……、』


 ミスランティアが言い終わる前に、彼女からの念話は途切れてしまった。


――接近により私も魔法阻害領域に入ってしまったか。


 先程の『くちチャック(サイレンス)』の炎で発生した黒煙で、闇の坑道は一瞬さらに黒く覆われ、微かなカンテラの光も遮られた。


「……!!!」


 その、パストールの前に充満した闇の中から、鉤爪を持った鋼鉄の右手が飛び出して、パストールの、左の肩口から右の腰まで振り下ろされた。


「キッ?!」


 パストールの視界がずり落ちて、彼の半身は坑道の床に転がった。

 鉤爪の通った場所を境に、パストールの体は分断されてしまったのだ。


「ほう、吸血鬼か。外でゴブリンどもが騒いでおると思ったら。お前の仕業か?」


 激痛で遠退くパストールの意識にそんな声がこだました。


※※※※※※※※


 本道で待つアヴァンとソシエール。

 彼等が固唾を飲んで見守るなか、横坑と交わる辺りが一瞬炎で赤く輝き、その直後パストールの悲鳴が聞こえた。


「…………」


 パストールからの合図は無かったが、アヴァンとソシエールは顔を見合わせ、パストールの元に向かおうとする。


「待って、索敵魔法がやっと通った! 敵対反応!! 相手はパストールを攻撃したわ!!」


 ソシエールの借りた杖の先で、精霊人形のミーちゃんが、腕をパタパタ降りながら訴える。


「だから行くんでしょ。助けに!!」


「だめよ! パストールがやられるなんて、並みのモンスターではないわ!」


「…………、そうなの?」


「貴方達は入り口まで戻って……」


「キェェェェーーー!!」


 ミーちゃんは言葉を続けようとしたが、坑道の先からパストールの奇っ怪な叫び声が聞こえてきたので、アヴァンとソシエールは駆け出した。


「危ないわよ!!」


 所詮ソシエールに運ばれる杖であるミーちゃんには、二人を留めることは出来なかった。


※※※※※※※※ 


「キッ、キッ、キェェェェ…、不覚をとりました」


 切り離された後もその座に立ち尽くしていたパストールの下半身は、傷口から黒い濃密な闇が吹き出し、そのまま闇のなかに溶けていった。


 地面に転がる上半身から、当然ながら血が吹き出したが、それは、たちまちに固まり、下半身を形作った。

 

 素早く立ち上がったパストールは、高速回転バク転で距離をとり、さらに坑道の天井に飛び上がって逆さまに張り付いた。


「アムル聖教会信仰魔法『(ホーリー)(エンチャント)』!!」


 パストールは懐からコインを一枚取り出して、それを祝福した。

 銅貨は聖なる光を一瞬帯びたが、吸血鬼の放った神聖呪文は忽ち呪われて、炎が光を打ち消した。

 呪いの炎は辺りを照らし、暗黒神父の姿を明らかにした。

 残念ながら衣服の復元を失念しているのか、下半身が剥き出しである。


「やれやれ、不意打ちですか。誘拐の被害者かと、油断してしまいましたね。……兄従僕、ご覧になれますか?」

 

『ああ、エルダーリザードマン4体と……、あれは、ドラゴニュートか!?』


 パストールの視線の先、横坑の奥から、前後の左右に二人ずつ四人の大きなトカゲ男を従えた、さらに大柄な全身鱗鎧の怪物が、パストールを興味深げに見上げていた。


挿絵(By みてみん)  


「鎧だと思った光は、竜鱗だったのですね、わっ!」


「火球!!」


 片手に火の玉を産み出した鱗人は、それをパストールに投げつけた。


 あわてて飛び退いた天井に火球は当たり、石礫(せきれき)を撒き散らして爆発した。


「そうれ、落ちたぞ、始末しろ。切り刻んだ後に念入りに焼いてやる」


 鱗人の掛け声に応じ、だんびら刀と丸盾で武装したトカゲ人間が3体、パストールに殺到した。

 カンテラを掲げる残り1体は竜男の近くに控えている。


「クカカカ!! 見くびられたものですねえ!」


 色々マロビ出たまま、パストールは振りかぶって、未だ手にしている燃える銅貨を先頭の1体に投げつけた。


「ぐえぇぇ!!」


 怪力により、あり得ない速度で放たれた銅貨を、トカゲ男は防ごうとしたが、構えた丸盾も鉄製らしい鎧も突き通して、コインはトカゲ男の胸の辺りにめり込んだ。


「『讃えよアムル(ビブラ・アムル)!!!』」


『ドカン!!!』


 パストールがアムル神を讃える聖言を唱えると、くぐもった炸裂音と共に、コインが突き刺さったトカゲ男の胸の辺りが爆発し、血と臓物を撒き散らしながら肉体は四散した。


 突然の出来事に残った二人のトカゲ男の突進は止まった。


「クカカカハ! 爽快ですねえ!!」


 愉快そうにパストール笑うパストールの手の指と指の間にはさらに銅貨が二枚挟んであった。


「乱暴で粗野な者が、暴力で思いのままになると思い込んでいる者が、更なる暴力で理不尽に打ち倒される様は爽快だと言いたいのですよ!!」

 

挿絵(By みてみん)  


 闇の中、吸血鬼の赤い瞳が煌めく。

 これで彼がズボンを穿いていたのなら、さぞかし戦慄的な光景だったのであろう。

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