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ランク詐称は許さない!!  作者: 山内海
11/48

背教神父パストール

「喰らえ! エリートゴブリンラッシュ!!」


 大湾刀を振り回し、アーゾックの高速連撃がデルモンドを襲う。

 

 「ふん! ふん! ふん! 打擲(ちょうちゃく)!」


 デルモンドは掌で湾刀の攻撃を二撃弾き、三撃目を逸して空振りさせ、体制を崩して傾いたアーゾックの頭に拳骨を叩き込んだ。


「グガッ!!」


 アーゾックはあっさり一発で沈み、前のめりに倒れた。


『ちーーん。南無〜〜』

 黙祷を捧げるデルモンド。


 アーゾックはこの峠にゴブリン五百人を集め、軍隊を組織し、訓練を重ねていた。

 待ち伏せしてきたエリートゴブリン小隊はデルモンドのゲンコツと石礫で失神し、大隊の残りはクープの戦いを見て逃げ出していた。

 

 年寄り二人にゴブリン大隊は壊滅したのだ。


「バッバッバッバッバカモンド!! 盾を一回も使わせないで倒してしまう奴がどこにおる!! これではこのゴブリン大将がどの位の強さか分からんではないか!!」


「やかましい! 拙僧のククルカン信仰格闘術『マグナム折檻せっかん』は、Aランク以下は問答無用で失神させてしまうのだ! Aランク以下な事はわかったのだから良いではないか」


「Aランク以上のゴブリンが、そうそうってたまるか! 何もわからんのと一緒じゃ!」


「じゃあこのゴブリン回復させるからお前やってみせろ!!」


「くぬぬ……、ワシの剣は、ミスリルより強固な物でないと、スパッと切れちゃうのじゃ!」


「何が、『切れちゃうのじゃ!』だ! 結局同じではないか」


「じゃ、じゃから、モンスター個体のランクを測るため、Aランクパーティーに護衛を依頼したろうに! 所詮ワシらではドラゴンより弱いモンスターは、測れん。師匠の魔法なら調節自在じゃが、物理戦闘能力を測るには、ワシらでは……」


 白目を向いて倒れいるアーゾックを見下ろして途方に暮れている老人二人に、ミスランティアは歩み寄る。


「では、やっぱり『破邪覇道』さんに頑張って貰いましょうかねぇ」


「しかし師匠。あ奴らときたら、からっきし弱いぞ。先程の負けっぷりを見ていたでしょう。もしかしたら、パーティーとしてはDランク位かもしれませんぞ」


「それは仲間が一人抜けていたからでしょう? まだこちらの二人は牧師さんの裏切りに気付いていないようですし、ここは彼に改心していただいて、パーティーに復帰してもらいましょうよ」


 老人会の三人は街道脇の茂みの近くで血溜まりの中に沈み動かなくなっているパストールを眺めた。


「……この牧師、拙僧の見たところ、度し難いクズですぞ。多分冒険者ギルドで行った前回、前々回のここへの探索にも関わっておるでしょう。クエスト失敗の原因かも知れません」


 デルモンドの言葉を微笑で受け止め、ミスランティアはパストールに歩み寄っていく。


「師匠。この牧師は後幾許(いくばく)も経たずに死にます……。ま、まさか師匠、こんなボンクラを『眷族』になさるおつもりか!」


「この牧師さんは、このままでは罪を負ったまま、世界から去ってしまいます。ご自身で罪を償う機会を作って差し上げましょう」


 深緑のローブのフードを背中に捲り、ミスランティアの頭があらわになり、豊かな銀髪が溢れ出してきた。

 その髪を後ろでゆるく束ねると、後れ毛からぴょこんと長い耳が飛び出す。

 長耳と銀髪は、精霊の加護をうけたハイエルフの証であるが、丸眼鏡の下から覗く彼女の瞳の色は、ハイエルフの常である銀灰や、蒼、緑ではなく血のような紅だった。


「私もまた遥かな昔に、自らの罪を償うため祖霊や精霊の声の及ばぬ暗闇を歩む道を選びました。それは、辛い至難路ではありますが、恥をすすぐ機会があるとするならばどうするのか、……せめて彼に聞いてみましょう」


 ミスランティアは背教牧師パストールの法衣を引き千切り、首筋を露わにした。

「かぱり」、と開けられたミスランティアの口に毒蛇を思わせる二本の牙が見受けられる。

 ミスランティアはパストールの首筋にその毒牙を突き立てる。


『ヂュゥゥウウウウ』


 口をすぼめ恐ろしい勢いで血を吸い上げるミスランティア。

 背中に致命傷を受け血塗れのパストールは、更に血の気を失い、僅かながらに残っていた彼の生気は、全てミスランティアに吸い尽されてしまった。 


「ぷはぁ、」


 唇を血に染めて、ミスランティアは首筋から口を離し、吐息を吐く。

 彼女の抱くパストールはしなびだミイラのようになっていた。

 

「パストール。あなたの血と温もりは私が奪いました。代わりに()()を受け取りなさい」


 ミスランティアは再びパストールに噛み付く。

 今度は何かを吹き込むように。


『ジュルルルル……』


「カハッ!」


 若干潤いを取り戻したパストールは、目を大きく開けて、血混じりの吐息を吐き、そして空気を吸い込んだ。 

 生前その瞳は黒かったが、今はミスランティアと同じ緋色である。

 

「ア、アアア? アア!」


 赤い瞳が渇望とともに獲物を求めさまよう。そして程なく目の前の獲物、白磁の肌を持つミスランティアの()()()に焦点を合わせる。


「ガフウ!」


 躊躇なくパストールはミスランティアの首筋に今生えたばかりの牙を立てる。

 衝撃でミスランティアの牙は離れ、今度は吸う側と吸われる側が逆転した。


『ヂュルルー…』

「フグゥ、フググゥ!!」

 

 既に青年の姿を取り戻したパストールは、鼻息荒く夢中でミスランティアの血をすすった。

 服は破れたままだが、その内部にある肉体、アーゾックに赤盾の爪で刺し貫かれた背中の傷は消えていた。


「はい。そこまでよぉ」


 ミスランティアが笑顔でパストールの肩をトントン叩く。


「はは、これは失礼いたしました御主人様(マイ・ロード)


 ミスランティアの言葉にパストールは即座に反応し、ミスランティアをそっと立たせて、自らの離れ深々と礼をした。  

  

従僕(サーヴァント)パストール。血の契約に基づき、貴方の奉公を許します」


 襟元を直したミスランティアが姿勢を正し、女王然とパストールに言い放つ。


「はは! いと尊き御主人様(マイ・ロード)! ハイエルフ吸血鬼(エルフェンヴァンプ)夜素馨ヨルソケイミスランティア様!!」


 片膝をつき臣下の礼をするパストール。


「まずは最後の選択を。我が意に染まぬなら、陽光の下で死ぬ事を許しま、」


 ミスランティアが言い終わる前に、パストールは片手を上げて、彼女の挙げ句をさえぎった。


「美しき夜の大輪が尖兵として、全ての陽光に背こうとも、御主人様に仇なす徒花あだばなことごとく、手折りに手折って見せましょうぞ! ふは! ふはははははははははははははは!!」


「『ヴァンパイア・サーヴァント』。並の吸血鬼の眷族ならば、初期ランクはBだが、師匠の()()であれば、初めからAAランクじゃろう。また、厄介な者をお作りあそばしたな」


 パストールの魔力が発露し、それは全身を覆い、漆黒の法衣を形どった。

 背教神父パストールの誕生である。



☆★★登場人物紹介(更新)★★☆


白牧師『パストール』 → 暗黒親父『パストール』

挿絵(By みてみん)  




クープ博士とデルモンド僧正の『階梯新書』


【ゴブリン】

改定前 ランクE

改定後 野良ゴブリン ランクE

    ゴブリンソードマン ランクE+

    ゴブリンアーチャー ランクE+

    ゴブリンガード ランクD

    ゴブリンコマンダー ランクC


【ホブゴブリン】


改訂前 ランクD

改訂後 ランクC~B

        

クープ(以下『く』):「今回は話末で、ワシが簡単な説明をするぞ」

デルモンド(以下『で』):「うむ」


く:「さて、雑魚モンスターの代名詞といえばゴブリンと、云うことになっておるが、しかし一方で、モンスターによる人的被害の最多は、このゴブリンが起こしていると言って良い。冒険者ギルドへの依頼もゴブリン討伐が件数抜群じゃ」


で:「奴等は開拓民の集落を襲い、その廃墟を拠点として、付近の街道を封鎖するのが常套手段だからな」


く:「人間を食い物にしておるからのう。所でデルモンド。やつらの出自を知っておるか?」


で:「創造神の真似をして、邪神が作ったのであろう?」


く:「少し違うな。邪神には、無から何かを作り出す事は出来なかったのじゃ。じゃから邪神は『原初の人類』であり、創造神が寵愛する『エルフ』を拉致って拷問し、洗脳し、改造してゴブリンにしたのだ」


で:「なぬ!? あの矮小で愚かなゴブリンは、実はエルフなのか?!」


く:「ほら、高尚で麗しい『ハイエルフ』の師匠様とは違って、エルフにも、黄緑のワンピースを着てお花畑で一日中『あはは、うふふ、あはは、うふふ』と、やっておる輩が居るじゃろう?」


で:「ああ、のどかなヤカラだな」


く:「あんなのをだな、お花畑からヒョイっと拐って、拷問してだな……」


で:「くっ、言語道断!!」


く:「お主……、チンマイ生き物が好きだからのう……、ソシエール嬢を襲うなよ」


で:「バカもン!! ククルカン僧は、女性の素肌に触れてはならんと云う戒律があるのだ!」


く:「なるほど、僧正の想像上では、さっそく触れておると、」


で:「なんでもかんでも、そういう方面に話を待っていくな、お主、頭の中身は修行僧か?!」


く:「なんじゃ、その切り返し。ククルカンスラングか何かか? そして修行僧にあやまれ」


で:「くっ、悪魔には通じんか……」


く:「で、話を進めるが、『赤盾のアーゾック』じゃが、これは、恐らくゴブリンと人間の混血児じゃ。四百年前の『魔王包囲戦』の初戦、ドワーフの都市国家『ドワロデルフ』の攻略に大ゴブリンの部隊が参戦したと云う記録が残っておる。意外ではあるがエルフの魔改造である純血(?)ゴブリンより、人間の血が入っている分、ホブゴブリンは短命でな、すっかり死に絶えておると思っておったのじゃが、エルフの血が濃い奴は生き残ったのじゃな」


で:「では、希少ではないか? 保護するか?」


く:「くっ、まさか……多分オスだぞ? お稚児さんを愛でる趣味を持つククルカン僧がおるとは聞いておったが、相手は四百歳を越えておるのじゃ……」


で:「くっ!! もう、貴様とは話さん!!」


く:「なぬ?! ワシを離さんとな?! お主の守備範囲の広さはアースドラゴン級だな。衆道ランク『ドS』を授ける」


で:「★〉¥〆〃ゞゞ¥!!!」


ミスランティア(以下『み』):「うふふ、今日も仲良しねぇ」


挿絵(By みてみん)  

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