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第2話



囲炉裏を挟んで向き合うようにして座った小さな客人達は、ありあわせの食材で簡単につくられた質素な食事を、かけ込むように凄い勢いで口に運んでいた。


「(相当お腹減ってたのかな…)」






旅人では無いと本人達が否定していたので違うらしく、だとしたらこの兄妹2人だけでのこのたびにはきっとそれ以上に何か深い事情があるのだろう。

ツバキは自分の食事も進めながらじっくりと2人を観察する。



若干赤色混じりな茶色の長い髪を頭のてっぺんでお団子にしている妹、マツリ。ちなみにさきほど年を聞いところ『10歳くらい!』と元気よく曖昧な返事を返されてしまった。見た目からしてもまだ幼く、ちょうどそれぐらいの年齢ということで間違ってはいないだろう。


対する兄、ユウリは妹と同じ綺麗な赤茶色の髪を持ち風になびくほどの長さはある短髪だった。顔立ちはまだ子供らしさは抜け切れないながらもなかなかに整った顔立ちをしていた。しかし妹と2人並んだこの様子を見ればやはりまだ子供らしかった。ちなみにこちら兄貴の年齢はといえば『たぶん16ぐらい』とやはり曖昧な回答だった。







「ツバキちゃんこれ美味しいね」

「ほんと?オカワリもあるよー」

「えっ、良いの?」

「もちろん!」

「マツ、オレのやるから辞めな」


ユウリは御椀を差し出そうとするマツリの腕を遮った。




「あれ、もしかしてお腹減ってなかった?それとも口に合わなかったとか…」

「そんなんじゃない、けど」

「だったら良いよ。多めに作ったから遠慮しないで」



気にしないように、と笑顔を浮かべながら再び彼女の方に手を差し出せば、マツリは兄の様子を気にしながらもゆっくり御椀を差し出した。

ユウリは何も言わなかったけどまだ何かを言いたそうな表情に見えた。


しかしツバキは囲炉裏の真ん中で火にあぶられグツグツと煮える鍋から、祖母に教わった特製の山菜鍋を二掬い分ほど御椀によそってマツリに手渡す。

…すると、今度は受け取ったマツリまでもが何か浮かない顔をしていたので驚いた




「ゴメンナサイ…」

「え、っと…どうかした?」

「わたし達、あまり持っていないの」

「持ってない…って、何の話?」

「……おかね」


お金。

申し訳なさそうにそう呟いたマツリに、ツバキはチラと隣りの兄に視線を移してみれば同じような表情を浮かべていたので、おそらく彼も同じことを心配をしていたのだろう。

…どうやらまだツバキは2人から信用を得られたわけでは無かったらしい。




「お金なんて取るつもないよ」

「え」

「当たり前でしょー!私がいきなり誘ったんだから」



まだ戸惑った様子の2人にツバキは苦笑いを浮かべた。


「わたし、小さい頃からお婆ちゃんとここに住んでたんだ。それでお婆ちゃんが昔からよく山を越えてくる旅人さんにこうやってタダでご飯食べさせてあげたり布団貸してあげたりしてたの。お婆ちゃんは2年前に死んじゃったけどね」

「それじゃ…アンタ今1人なの」

「そうだよー。けど最近訪ねて来てくれる旅人さんがすごく増えたからね。月に一回顔を見せに来てくれる人だっているくらいだし。

今はその人達に畑で採れた野菜とか薬草とか買ってもらって生活してるーってわけ。」




だがそれでも寂しくないと言えば嘘になる。それにここへ遊びに来てくれる人達はみんなお婆ちゃんの知り合いだったり旅商人さんだったりするため、マツリやユウリのような年頃の近い子供と接する機会は全く無かったのだ。

だから2人の姿を見つけた時、自分を訪ねて来たわけでは無いにしろ何故だか放っておけずに声をかけてしまったのだ。




「だからさ。余計なお節介に巻き込まれたとでも思って、ご飯食べてってよ」




ね?と。今度は促すようにユウリの手にある中身の少なくなった御椀に向かって手を差し出した。

ユウリはツバキの顔と手を見比べるようにして少し考える仕草をした後、一気に御椀の中身を口の中にかけ込んで空にしてから照れくさそうにしながらもそれをツバキの手に押し付けたのだった。







     

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