生きる
「手術してまで生きたかった理由って何?」
しばらくの沈黙の後、富羅は思い切って瑠真に尋ねた。まわりくどいのは嫌いだ。バカは余計なことを考えると失敗するだけだ。
「生かされた。自分から手術を望んだわけじゃない。」
予想外の答えだった。そうか、まだ幼かった彼には選択権がなかったんだ。
「それじゃ、生きたくないの?」
「わからない。」
そうだよね。自分で決めたわけじゃないいんだから。
「君達と会うまではわからなかった。今年の夏は楽しかった。まるで、物語の主人公になったかのように。」
富羅は、ほっとした。自分達のやっていることはおせっかいじゃないんだ。誰かの役に立っている。いや、大好きな人の役に立っている。富羅は勉の言った事が少し解った気がした。恋愛なんかじゃない。ほっとけない人がいる。その人の役に立ちたい。別に、四六時中一緒にいたいわけじゃない。あいつがいる。ただそれだけで、元気が出る。自分のしたいことが心の底から沸いてくる。
幼い時のあの、何も考えずに無鉄砲だったころを思い出す。きっと瑠真は、つかみ損ねてしまったそんな日々を取り戻そうとしているのかもしれない。
ジープの固いシートでの移動に気を使ってくれてか、ホテルでの宿泊が多かった。しかも、落ち着けるようにとツインルームでそれぞれの家族が親子水いらずで過ごせるようにと配慮してくれていた。群馬県の駐屯地に近い伊香保に泊まった時のことだ。富羅は温泉から上がると、先に上がっていた安蔵に尋ねた。
「ねえ、おとうさんとおかあさんってどうして結婚する気になったの?」
安蔵は口に含んでいたお茶を吹き出しそうになった。
「おまえも、そんなことが気になる歳になったんだ。」
安蔵は薄笑いをしていた。うれしいのか、お茶を吹きそうになった照れ隠しなのかわからない。
「どうしてだと思う?」
富羅は逆に尋ねられてしまった。わかるわけがない。とりあえず、当たり障りのないことをいう。
「好きになったから。」
答えを聞いた安蔵は、さらに大笑いをした。




