同窓会
久々に会う友達だ。結局集まったのは3人だけだったが、みんな都会の普通高校に通っている。農業高校にいくのは大抵跡継ぎの連中ぐらいだ。
東京や大阪などの大都市は謎の穴で物流が止まってしまい、ほとんどの人が地方都市へ移ってしまったそうだ。いち早く逃げ出したのが、議員達。一時期、議会はほとんど機能しなくなっていた。一月以上経って現在は東京北部の練馬や埼玉南部のあたりに集まっているらしい。
とにかく都会では仕事がない。多くの者が疎開先で働き始めた。地方は被害が少なく、都市へ食料が行かなくなった分、お金にはならないが食べ物には困らない。
今は夏なので北海道は人気らしい。
「きっと、冬になったら逃げ出す。」
都会暮らしになれた連中には冬の北海道の雪と寒さは耐えられないだろう。
「泊はまったく変わらないね。」
親友だった弥子が、配られた麦茶を飲みながら口を開いた。彼女は元来おとなしくあまりしゃべらない。下宿から札幌の進学校に通っているそうだ。この村に喫茶店なんてしゃれたものはない。村の公民館を借りた。お昼はそれぞれの家族が届けてくれた。
「村の味はおちつくなあ。」
優等生だった勉らしい。東京の親戚の家に住んでいたが、学校が使えなくなり、地方の分校の一角で授業を受けていると言った。
「母さんからの差し入れ。」
瑠真が帽子を深々と被り、様子を見に来る。
「ありがとう。」
ムニエルやサラダなどおしゃれな料理が並ぶ。
「村の人じゃないよね。ちょっと、フラッチ、誰?」
噂好きの夏美が、寄ってくる。フラッチと呼ぶのは彼女ぐらいだが、おかげで昔は、フラッチな悪行三昧とからかわれた。
「診療所の先生の息子さん。」
「やだ、上がって上がって。」
瑠真を強引にテーブルへ引っ張っていく。
「白髪で青い目って、ひょっとしてハーフ?」
瑠真は首を横にわずかに振る。時々、困ったように富羅のほうを見る。
「ばあちゃんから聞いた。富羅の彼氏だって。」
弥子が富羅を上目遣いに睨む。
「そんなんじゃないって。病弱だからうちの両親が休みの間は時々様子を見てやれって。ほら、うちの親っておせっかい焼きだから。」
「あ~、それ解る。安蔵さん、弥子の下宿探したり、勉の引越しについていったりしてたもんね。」
夏美のフォローで何とかごまかせた。
「それでも、一言ぐらい言ってくれてもいいじゃない。」
弥子はふくれっつらをする。この子の性格は知っている。彼女が本当に怒っているときは口も利いてくれない。今はジャブを繰り出してこちらの出方を見ているだけだ。
「祭り、二人、来てたって。」
やばい言葉が少なくなると、本気モードに入る準備だ。
「こっちへきたばっかだから。昔、原発のエンジニアの子で一ヶ月だけ転入してきた子がいたでしょ。」
「悠馬君。」
こういうことは、夏美はよく覚えている。富羅も、ちょっと好きになった彼の名前を忘れるわけもないが、あえてとぼけた。
「そうそう、悠馬君。かれが来たときだって皆で村の中を案内してあげたじゃない。」
「むきになるとこ、あやしい。」
弥子の趣味は人間観察なんじゃないかと思うほど、まわりの人のことを良く見ている。早く別の話題に誰か変えてくれ。
「彼氏がいるのに、スカートの下にジャージで来ないでしょ。フラッチ、困ってるじゃない。」
「そだね。」
今日は、夏美に助けてもらってばかりだ。




