発電所
外野がうるさいので静かな場所に移動した。中学校からほど近い場所に小さな神社がある。海を見ながら買ってきたお昼をだべる。
「シナプスの具合はどう?」
人に聞かれたくない話だ。
「そろそろ、仲間のもとに返さないと。」
政府は極秘にしているようだが、シナプスたちは世界中の原発の敷地にいるという。泊は停止しているので、目立った動きがないだけだ。仲間は泊の原発にいるのだろう。しかし、今や厳戒厳重でPRセンターにすら入れない。
「あの時、すごい速さで泳いでなかった?」
富羅は、ずっと気になっていた。まわりっくどいことは嫌いだ。単刀直入に聞く。
「サメにつかまっていた。」
また、予想外な答えだ。富羅が不信気に見ている。
「サメは太古から生きている種族だからね。仲がいいのさ。それに、サメはシャチを嫌ってる。」
古代生物研究所にいたことと関係があるのだろうか?一億年前、泊のあたりは大陸の沿岸部だったらしい。これ以上聞いても、頭の中がワカメになるだけだ。
「父さんが施設へ行くときに車のトランクに入れば。」
富羅は昔見たスパイ映画を思い出した。トランクというのは内側から簡単に開くらしい。
「誰かがついていくしかない。」
スペースを考えると、小柄な富羅しか入れそうにない。
今は週に1回、半日ほど設備の点検に出かけている。長期に仕事が無い状態だと雇用上問題があるらしい。数日後、決行した。夜中にこっそりシナプスをトランクに入れておく。父は大抵トランクの中を見ない。エンジンをかけると、一度家に戻りトイレに入った後、荷物を持って出かける。そのすきに、トランクに潜り込む。
混乱しているのか、検問を過ぎると駐車場に着くまで、何度か止められたようだ。しかし、テロリストに占拠されているようには感じられない。父は、車を降りるとどこかへ行ってしまった。カギはかかっていない。原発の村になので、万一の際にすぐに隠れられるようにと車には普段からカギをかけてない。
十分静かになってから、富羅はトランクを開けた。急いで、シナプスを降ろす。外に出ると、そいつは茂みの中へと消えていった。
仕事中は施設内の作業用の車で移動しているので、しばらく帰ってこない。しかし、監視カメラがどこにあるかわからない。ひたすらトランクでじっとしている。幸い、今日は雨のため涼しい。炎天下だったら干からびていたに違いない。




