一話目が満ちている
「では次に、新入生代表者。挨拶を」
「はい」
初めて壇の上から見るその景色は人が皆ゴミのように思えた、お陰で緊張は何も無い。
おいゴミ共よく聞いとけ・・・って違う違う、意外と緊張してるのね私は。
心の中の自分と対決し解決する。
そして、深呼吸をし「よしっ」と小声で気合を入れる。
「私の名前はまんこではない!みつるこだ!」
ふっ、みんながこの素晴らしい挨拶に感動し、石のように固まっている。成功したな・・・
そう確信した瞬間だった。
そこからは自分でも何言ってるのかは覚えていない。
事前に何も考えていなかったので、今日のオカズのジャンルを考えていたのは覚えている。
「────以上、濡田満子でした。」
挨拶を終え、生徒がスタンディングオベーションを・・・しない!?
むしろ始まりと同じリアクションのように見える・・・
「はっ!?もしかして私の声が美しすぎてラリホーマと同じ効果が・・・」
そう思うと気分が良くなり、スキップ思想になるのを抑え、きしめんを鼻歌で歌いながら壇上から降りて席に着く。
「・・・こ、こほん。では次に、校歌斉唱。」
入学式が終わり、1年生全員はクラスの方へと帰る。
良くラノベやアニメとかである、窓際の一番後ろを狙って、二時間前から突撃したのに、実はもう席順は決められていて今世紀最大の絶望を覚えたのは内緒だ。
私は髪をゆっくり掻き上げながら、1番後の窓際のひとつ隣の席へと着席する。そう、女子は右から奇数の列になるので、結局は一番窓際はむりだったのだ。
溜めた息を静かに吐くと、前の席の子とその友達であろう子が話しかけてきた。
「ね、ねえねえ。みつるこさん・・・?であってるよね?」
「違うわ、濡れたマ○コよ」
「え、えぇ!?」
「いやあんた自分で違うって言ってたじゃない」
「・・・っち、やっぱりあそこで言うのは間違いだったわね・・・」
「何がどうあれ間違いよ」
「ま、まあまあ・・・あわわ。そ、そうだ!私の名前はね?小林 香。かおるじゃないよ?かほるだよ?よろしくね!」
「私は和泉 詩織。わいずみじゃなく、いずみだから。よろしく」
「おお、私にとうとう友達が出来るというのか・・・私はぬれだみつるこよ。よろしく」
ちょっと自信の無さそうな子が、小林 香。地毛が茶髪なのか、お下げがよく似合い、かわいい。
なんかこう小動物みたいな感じで・・・とても食べたい・・・。ジュルっ
そして落ち着いているような雰囲気を醸し出すのが和泉 詩織。
剣道家弓道をやっていそう、何だか護衛する女騎士みたいだ。そそる・・・ジュルっ
私にそういう趣味は無いのだけれど、心躍るものがある。音楽が成り続けそうね。
兎にも角にも、これでお友達と呼べるような人が早速増えた。小中の頃はまず、近づく人すらいなかったため友達なんぞできたことは無い。
それから10分たった頃位になるのだろうか、先生が勢いよくバンっとスライドドアを開け、スタスタと入ってくる。
そして注目させるように黒板を叩き・・・
「おいお前ら喜べ!この私が担任だ!!」
とクラス中に響き渡る大声で発した。
それに反応して数人ほど野次を飛ばす。
「うるせー!」
「うるさっ」
「もっと静かに言えませんかー」
「びーびーえー」
「耳がぁぁあ」
「おい誰だババアって言ったヤツ!後で性欲えぐりとる」
────シーン。
私はこの瞬間察した。
この先生・・・ヤれる!
机に肘を置き、顎に両手を当てながらふとそんなこと思っていると、隣の席から話しかけられた。
「濡田さん、よろしく。」
男勝りな女の子声が隣の席からきこえて────
「え゛?」
振り向くと綺麗な茶髪に艶のあるサイドテール、目はつり目気味で男子用ブレザーを着るそれはそれはかわいい女の子がいた。
「・・・まん?」
「ちんだから」
「!?」
普段から無表情と言われる満子が、今世紀最大と言わんばかりに目を見開く。
「僕の名前は瑞希立花、決して女ではない、男だ。」
三十秒くらいだろうか、体感的には10分くらい思考が停止したような気がする。
そして思いついた質問を、固唾を飲み喉を震わしながら口に出す。
「Tバッ・・・」
「ボクサーです!」
「!?」
顔を赤らめながら机をバンッ!と叩きながら言う瑞希。先生に睨まれたためすぐさま視線を下に向ける。
これが主人公瑞希 立花と濡田 満子との出会いである。
気づいた人もいるかもしれないが、改めて言おう。
主人公は瑞希 立花であると。