惨状
トンネルを抜けると そこは雪国だった
うちのこの家の玄関のドアを開けると・・
そこには雪国のような冷え切った空間が待っているのだろうか
いや、そんなことはない
きっと
「ごめんねオレが悪かったよ ごめんね」って
笑って、ただでさえ細かった目が
もうどこにあるか分からなくなるくらいの飛び切りの笑顔で夫が出迎えてくれるはず
きっとそうだ!!
慌ててドアを開けたその先は
目を覆うような惨状であった・・
およそ半畳のスペースの玄関土間からその先には
犬のウンチがところどころに散乱していたのだった
彼女は絶句したまま抱いた犬を下ろすこともかなわず
まずは右足をうまく使って左足のヒールを脱ぎ
それから逆の要領で、今度は右足のヒールを脱いだ
そして靴を揃えることもそこそこに
そのかりんとう型をした地雷をつま先立ちでうまく避けながら
30秒かけてリビングまでようやくたどり着いた
リビングと廊下の間のドアを閉めたところでようやく犬を下ろすことが出来た
騒ぎまとわりつく犬を叱咤しながら
とりあえずケージに無理矢理追いやり閉じ込めた
ほっとひと息ついたところで彼女は新たな不安を思い出した
果たして・・夫はどこにいるのだろう・・
ティッシュを数枚引っ張り出し、小さなビニール袋とその大きな不安を抱えたまま
彼女は廊下の地雷処理へと向かう覚悟を決めた
兵隊長の怒号にも近い命令指示が飛ぶ!
『今回貴様らが行う任務はぁ!ここに住む民たちのいわば命がかかっていると言っても過言ではなぁーい!』
『貴様らが地雷の処理にもし、失敗した場合はぁーー・・・分かっておるなぁーー!!』
『健闘を祈る!』
一同皆、敬礼で応えそして各地へ散っていった