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ボルシチ  作者: tdo
2/9

難敵

エレベーターの中で彼女を上から見据えていたのはこのマンション界隈で「むし」と呼ばれる住民であった

その男がむしと呼ばれるには当然その理由があり、そこにはエピソードがあった


のっぺりとして表情は確かにある種バッタ系の昆虫を正面から捉えた印象ではあるが・・

そっちの「虫」ではなくむしろ「無視」から付けられた呼び名だろう


とにかくこの「むし」は挨拶というものをしなかった

おはようございます!

と、こっちが明るく気さくに声をかけても

瞬間うなだれて下を向き、でんぐり返りを高齢である為に禁止された老婆のように

何故かこの世の果てが来たかのように苦悶の表情で押し黙る

その理由は住民の誰にも分からない

マンション中の住民のほとんどがこのような体験をする中で

次第に住民たちはむしに対して明るい挨拶をすることを辞めてしまった


当たり前だ

のれんに腕押し

ぬかにくぎ

むしに挨拶

今度からこれも手ごたえがない意味合いでのことわざとして扱おうそうしよう


そんなわけでモラリストたるゆえんの彼女にとって

この男の存在価値は非常に低く

出会った日はまさしく厄日だなあ・・と感じるほどだった


やれやれ今日はとことんついてないや

むしは彼女たちが住んでいるひとつ下の階に住んでいるらしく

家に帰る寸前でエレベーターを停められ、帰宅の邪魔をされているような気にすらなったことも

この男の存在価値を更に希薄なものとさせてしまっていた

そんな負のパワーに負けたくはなかったが

思った以上にむしは暗く、そして周りの雰囲気も自分のそれに取り込んだ


このままの雰囲気に連れて家に着いたら、きっと夫とも暗いままを引きずってしまうだろな

やっぱり今の状態で夫にすぐに会わない方がいいのかもしれない・・・


エレベーターを降りてすぐにそう感じ、いっそ引き返して車に戻ろうかな

そう思った瞬間!

彼女は得体の知れない何かに正面から飛びつき襲われた

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