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ボルシチ  作者: tdo
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暗雲

あーあたしってホント車停めるのヘタだわぁ~

愛する夫仕様のゴツい4WD車とはいえ、

駐車するのに毎回2度も3度もハンドルを切り返してしまういつもの自分に彼女は少しばかりいらだっていた


ふぅっ


なんとなくため息なのか声なのか判断つかないような息を吐き出しながら

エレベーターのある2F入口までずっとうつむき加減のまま静かに歩いた


静かに、とはいったがかかとの結構高いロングブーツでのこと


コツコツコツ

コツコツコツ


マンション駐車場の暗闇に足音だけが寂しく響いた


こんなにも家に帰ることが辛いなんて・・・

昨晩、つまらないことで夫と口論となった


仲直りできないままに夜は更けていき、やがて朝はやって来る

夫は仕事、私は家事に、とそれぞれ役割がある

このまま寝ないわけにはいかない

ケンカをしていても、明日の為に人は寝ないと生きてはいけない

それが社会の歯車として自らが存在している意義であり

アダムとイブがりんごをかじってしまった時からの人類の贖罪なのかもしれない


彼女だってそのことは分かっている

だからといって納得のいかないままに夫と仲直りしようだなんて思わない

毎朝必ず玄関で夫を送り出す時にしていた愛の抱擁も

今朝はつまらないプライドが邪魔をしてベッドから出ようとすらしなかった

そのことが更に彼女の帰宅の足取りを重くしていた


もしかしたら夫は家にまだ帰っていないかもしれない

そうしたらそうしたで少しほっとする反面

今度はちゃんと私のもとに戻ってきてくれるのだろうか

きっとそれらしき不安に駆られることだろう


まだ判明してもいない状況のことを細かく過剰に心配してしまう

そう、彼女は心から夫のことを愛していた


夫に会いたい!

今すぐに!!


居てもたってもいられなくなり、

駆け足気味に先に別のヒトが乗り込もうとしているエレベーターへ続いて後から飛び乗った!


乗ってすぐに彼女は後悔した

なんとそこには彼女が最もそこに居て欲しくないやつが存在し

少し高い位置から彼女をじっと見据えていたのだから・・・













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