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ようやく内政

ハールーンを経てポバティー村になんとかたどり着いたポバティーだったが、ようやく内政をする気になった。というのも、豊かな土地を持つ貴族は強いことに今更気がついたのだった。


「さて、統治するに当たってまず必要なことはなんだ?」

「統計でげす」

「統計?なぜだ。新田の開発とか増税とかそういうものじゃないのか?」

「旦那、そもそもポバティー村には何人いるのか知ってやすか?」

「まあ800人くらいかな」

「人数を正確に把握せずして内政は絶対に無理でげす」

とリューリクは先生のように講義を始める。

「人頭税にしても、人間が何人いるかわかってこそ安定した収入になりやす。それに増税にしても一線を超えて取り立てると反乱を起こされやすぜ」

「そうなのか」

「まずは人が何人いるのか、を調べやしょう」

「よし!」

と意気込んだポバティーだったが、しかしすぐに難問にぶち当たった。


「どうやって統計をとりやすか?」

「どうって・・・数えればいいだろ」

「各戸をいちいち回っていては膨大な時間がかかりやす。アンケート方式にすればいかがでやしょう」

「しかしアンケートだと答えない奴がいるだろう?」

「そうでげすなあ・・・」

「あらあらお二人ともお困りですわね」

とエスメラルダがコーヒーを持ってきた。

「三人よらばなんとやらだ。エスメラルダ、お前も考えてみてくれ」

「そうですわねえ」

しばらく考えていたがやがてなにかに思い当たったらしい。

「教会に聞いたらいいんですわ」

「教会???」

とポバティーとリューリクはクエスチョンマークてんこもりの面持ちだったが、その反応を楽しむかのようにエスメラルダは解説を始めた。

「この村で産まれた人はみなポバティー教会で洗礼を受けていますわ。全部記録が残っていますわ。名前性別生年月日などなど」

「そうか!洗礼の記録を数えていけば人口を数えたのと大体同じになるな。そういえばわしもポバティー教会で名前をもらったな」


一行は早速教会へ行き、人口を数えてみた。するとびっくり、人口は千人を優に越える村だったのである。人頭税を取られたくないがばかりに家族の人数を過小報告する村人が多いということだ。

「まあそりゃそうか」

とはポバティーがつい漏らした一言であった。

「人口はおそらく1034人ですわ」

「案外いるものだな」

「旦那、感心してる暇はないですぜ」

「ふむ」

「ようやく政策をまともに語れるデータができやした」

「あとは議論あるのみか」

「ここからが本番でげす」


リューリクは地図を広げた。それは詳細な、とはいえなかったがそれでもある程度詳しいポバティー庄の地図だった。

「まずは人頭税をいくらにしますか?」

「考えなければいけないデータは何だ?」

「各家庭の平均年収と家族の人数でしょうな。どれだけ課税するかという話でげす」

「ポバティー村は貧しいからな……王都クペルチノだと平均1万ダカットはあるだろうが、ここだともっと低いはずだ」

「家庭を切り盛りするエスメラルダ的には平均的な年収はいくらくらいでげすか?」

「そうですわね……。1,000ダカットあればいいほうじゃないかしら」

「平均的な家族の大きさは?」

「家族の大きさは7~8人くらいですわ。おじいさん、おばあさん、両親、子供4人から5人というのが平均的な気がしますわ」

「とすると、総人口の1034人を7人で割ると、147家族。おおよそ150世帯があることになりやす」

「なるほどな」

「平均的な人頭税は一人あたま年50ダカットでげすが、それだとひと家族の年収1000ダカットに対して400ダカットも税をとることになりやす」

「税率が40%とはなかなか酷いではないか」

「ですが、旦那、それで計算すると税金として年額60,000ダカット、月額で5,000ダカットの収入にもなりやす」

「むむう。それは捨てがたい財源だな……」

「家庭に残るのは年額600ダカット、月収に直すと50ダカットでげす」

「50ダカットあれば毎月生き残れる気がするが」

「じゃあとりあえず人頭税は一人あたま50ダカットにしましょう」

「となると11人評議会で諮らねばなるまいて」

「農民にはなんて説明する気でげすか?」

「今まで税はあやふやで、いくらとられるか不安の種になるものだった。今回新たな税制を決定することで、納税義務が明確になる、というのはメリットになるだろう」

「なるほどでげす」

「他にも税金を決めるならこの際一気に決めたほうがいい気がしますわ」

「よし、この調子で草案を作ってしまおう」


次に取り掛かったのは土地税だった。

「裕福な層は人頭税ではまだまだ余裕があるだろう。そいつらから搾り取るのだ!」

「土地税というものがありやす。一定以上の土地を持つものに、税を課すものでげす」

「富農向けの税金という訳か」

「一定以上って具体的にどのくらいですの?」

「それも土地によって変わるんでさ」

「ポバティー庄で考えると、1ヘクタール以上土地を持っている奴はまず金持ちだ。間違いない」

「とすると1ヘクタール以上で、それ以降1ヘクタールごとに年1,000ダカットの税を課してはいかがでしょう」

「1ヘクタールあると、ポバティー庄は土地が貧しいから200キロの小麦しかできない。小麦は一キロ当たり10ダカットだから、1ヘクタールあたり2,000ダカットあるわけだ。二毛作ができるから、年間で4,000ダカットか。やはり富農だな。1ヘクタールあたり年1,000ダカット搾り取っても大丈夫だろう」

「さすが旦那。農業とか相場には詳しいですな」

「うむ。すると、ポバティー庄は富農が10件くらいあるから、年額で1万ダカット。月額でおよそ1,000ダカットか。人頭税とあわせて月収6,000ダカット。楽しくなってきたな」

「そうやって人から搾り取ることばかり考えていてはいけませんわ」

「わかっておる。しかし仕方がないことなのだ」


それから出生税、結婚税、死亡税なども考え出された。しかし実際に11人評議会で賛意を得られなければ画餅と化す。ここからが本当の本当の本番であった。

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