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任務クリア。しかし借金はそれでも溜まり続ける

再び伯爵とレインボは相対した。


「……何を知っているというんです?」

「わかりませんか?」

「まったくわかりませんな」

「まあ、今にわかるでしょう。実を言うと私もそれほどわかっておりません」

レインボは笑い声を上げた。ポバティー伯爵はニコリともせず憮然とした表情だった。

「ところで、あなた、伯爵はなぜルイジャンドルに?」

「良い塩が取れると聞いて、わが国へのお土産に、と思ったのだが」

「それでついつい買いすぎた、と」

「まあそうなる」

「そうですかあ……」

とレインボは頭をかく。

「いやね、カミさんが言うにはね、見たらしいんですわ。あなたが問屋を回ってなにやら怪しい商売をしているところを」

「……それは自分の勝手でしょう」

「そう、勝手は勝手。どうぞお好きになさんなさい……おっともう時間だ。ではわたしはこれで」


そしてレインボはいつものオンボロ馬車に乗り込もうとしたとき、その目が光った。


「どうしても知らないとおっしゃる」

「その通りだ」

「……いつかまたお目にかかる機会がありそうですなあ」

「俺としては真っ平御免だが」

「まあそう言わずに」


そうしてレインボは去っていった。



「旦那、よくぞご無事で」

「しょっ引かれるのかと思っておりましたわ」

「こいつら……」

こわごわと出てきた二人。まったく他人事なのだから伯爵はすこしむっとした。がすぐに忘れた。

「レインボとやらには不思議な力がある。何度俺が買い占めましたと白状しそうになったことか」


「伯爵、国内は混乱をきたしておりますぞ」

と店の奥からサンバインが現れた。

「砂糖、塩の値上がり、そしてそれにつられて他の商品の物価も上昇しております。エスカドロン公国はインフレ状態に陥っております」

「するとどうなるのだ?」

「国民の不満が高まるんですよ。反乱の芽を植えつけてやったというわけです」

「何、するとわしの使命も終わったのか」

「ええ。大変お疲れ様でございました」

ペコリとサンバインは頭を下げる。

「さすがのレインボも追いきれなかったということでございましょう。せいぜい伯爵が怪しいとにらんだ程度。物証も何もなかったんでしょうな」

「いやはや危ないところだった」

「……今回の使命が成功に終わったということで、わたしも成功報酬をいただきたく存じますが」

「……王に相談してくれ」


こうして伯爵の使命は成功裏に終わった。エスカドロン公国は年率50%の高いインフレーションに苦しめられることとなったのである。


王に報告書を上げたあと、一服していた伯爵。しかし従者達は一服どころではない。

「旦那、結局領地の管理はどうするんですかい。今月も借金がたんとありますぜ」

「借金が雪だるまですわ!」

一服といってもシケモクを吸っている伯爵。できる限りのケチっぷりはここでも発揮されている。

「税金を思い切り上げるしかないか?」

「旦那、それじゃ暴君になっちまいますぜ」

「まずは領地経営を専断する譜代の家臣達をなんとかしないといけませんわ」

「じゃあなんとかするか」

伯爵はさほど乗り気でなかったが、ともかくもポバティー村に帰ることにした。もちろん徒歩で。そこでは彼にとって親より恐ろしい者が待ち構えていたのだった。


4の月のポバティー家の帳簿

収入の部:11,000ダカット

支出の部:51,000ダカット


伯爵の現金:60,000ダカット

新規借入金:40,000ダカット

借入金の総額:650,000ダカット


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