成人と力とハイエルフ
「8歳⁉︎私より年下じゃない‼︎ それであの強さって詐欺よ‼︎」
「私も信じられないです、確かに見た目はそれ位ですが肉体操作等で子供の姿をしていると思ってました。」
カイトの年齢を聞いて驚く2人、
「8歳なのは本当ですよ、それにゴブリンを倒せたのは無属性魔法の 強化 で上がった身体能力で奇襲をかけたからで、魔法を使って100匹のゴブリンを倒した2人の方が強いと思いますよ。」
そう言うカイトだが、
「確かに魔法の能力は私達の方が高いですが、カイト様の格闘能力と魔力操作のレベルの高さを見ると1対1の戦闘では勝てないかと… それに魔法の能力もすぐに抜かされそうな気がします。」
と、ハクアが答える。やはり吸血鬼の身体能力と身体能力強化の魔法で古武術を使用すると近接戦闘では無類の強さを発揮するらしい、
「まぁ、僕の強さはこの際置いておくとして2人はなんで森にいたんですか?」
極力、他種族に嫌悪される吸血鬼だとバレたく無いカイトはやや強引に話題をかえた。
「それは、私が言いつけを守らず里を出たからで…」
「お嬢様、私達ですよ。お嬢様だけが悪い訳では無いですから、私にしても森の魔物位と軽く考えていましたからね。私も同罪です。」
ばつが悪そうに答えるアイリスと自分にも責任があると答えるハクア、
「言いつけを破ったかぁ〜。あの、ちなみにその言いつけって何です?」
「カイト様はエルフ族や妖精族についてご存知ですか?」
「いや、あまり知らないですね、エルフは耳が長くて魔法が得意で長生きな種族としか、妖精族についてはまったく知らないです。」
「そうですか。まずエルフ族はカイト様がおっしゃった様に長い耳を持ち1000年程の寿命を持つ長寿な種族です。それ以外はある一点を除き人族と変わりません、ある一点とは精霊と対話し契約する事ができる事です。精霊を見る事が出来ない種族では精霊と契約する事は不可能ですからね。妖精族については肉体を持つ精霊です。長い時を生きた精霊が実体化した存在が妖精と呼ばれます。ちなみに、エルフ族は半分人で半分精霊だと言われています。」
「なるほど、それがエルフ族と妖精族ですか。」
「はい、そして私達が破った言いつけはエルフは成人するまで里から出てはいけないという掟です。」
「そんな掟があるんですか?なんだか面倒ですね。」
「そうですね、エルフは未熟な者を外に出す事を嫌いますから…それに私達はハイエルフですから特にきつく言われていましたね。」
「ハイエルフ?アイリスとハクアは普通のエルフと違うのですか?」
首を傾げるカイトにアイリスが答えた、
「そうよ‼︎私達はエルフ族で稀に起きる先祖返りで、より精霊に近い存在なの‼︎なのに長老達は私達を未熟者扱いして‼︎‼︎」
「そ、そうですか。そんな話を聞くと成人まで外に出れないエルフの若い人達が可哀想ですね。 それで、エルフの成人は何歳なんです?」
「…………………」
激昂していたアイリスだったがカイトが成人年齢を聞くと急に黙り込んでしまい、
「……ない…わ、」
「はい?ゴメンなさい聞き取れませんでした、もう一度お願いします。」
「だから……年齢じゃないわ…」
「どういう事です?」
「だから‼︎エルフの成人は年齢じゃないの‼︎」
ーーーそう叫ぶアイリス、
「お嬢様、落ち着いて下さい。 カイト様、私が説明します。エルフの成人は年齢ではなく精霊と契約して精霊魔法を使える事なんです。なので精霊魔法が使えないエルフは何歳でも成人扱いされません、逆に何歳であっても精霊魔法が使えれば成人なんです。」
「って事は2人はまだ精霊魔法が使えない?」
「ええ、そういう事です。だけど私達はハイエルフなので普通のエルフが使う精霊魔法より強力な属性魔法が使えますので…」
「その通りよ‼︎私達は普通のエルフ達より強いわ‼︎私達より弱い他のエルフが外に出れるのだから私達が外に出てもおかしくない筈よ⁉︎」
「…という具合にお嬢様が怒ってしまわれて、危険な森で薬草を取って来て長老達を見返してやると息を巻いて…今に至ります。」
「…なるほど、理解しました。
………アイリス、一言 言わせてもらう、…お前、何言ってんだ?馬鹿じゃないのか?」
ーーー森に来た理由を聞いてカイトは怒っていた、前世では古武術の師匠の院長に「驕るなよ海斗、強さとは積み重ねだ‼︎」と今世では魔法の師匠のリサに「未熟な人ほど他人を見下すわ。カイトはそんな人には成って欲しくないわ、もし成ったら……ね♪♪」と耳にタコが出来る位言われてきたのでアイリスの発言に頭にきていた。 ーー何時もの丁寧な言葉を忘れる位にはーー
「ば、馬鹿⁉︎ 私の何処が馬鹿なのよ⁉︎ 私は間違ってないわ‼︎ だって私達は成人しているエルフ達より強いのよ⁉︎」
カイトの言葉に顔を真っ赤にして怒るアイリス、
「いや、馬鹿だな。それも大馬鹿者のクソ餓鬼だ。」
「なんでよ⁉︎ 他のエルフが成人してるのになんで強い私達が成人出来ないの⁉︎」
「では聞くが、お前達が強いの何故だ?」
「それは私達が他のエルフより強力な魔法を使えるから…」
「だがそれはお前達がハイエルフだからだろう? もし自分がハイエルフじゃ無かったら他のエルフ達に勝てるか?それか他のエルフがハイエルフだったら勝てるか?」
「……勝てないわ、魔法が同じなら成人してるエルフの精霊魔法には…勝てない…」
カイトの言っていることに気づき俯くアイリス。
「長老達が言いたいのは多分そういう事だ、自分の能力任せの奴は本当の強者には成れない。自分自身を知り研鑽する者だけが強者に成れる、俺は…僕はそういう存在に成りたくて毎日訓練をしていますよ。」
何時もの口調に戻すカイト、アイリスは悔しそうに俯き、
「そうね、確かに私達は普通のエルフ達より強い。でも、技術や心では…負けている。
長老達やカイトの言う通りね。」
そして笑った。ハクアもそんなアイリスを見て、
「私もです。お嬢様、里に帰ってまた1から鍛えましょう、そして実力で成人してみせましょう。」
「ええ‼︎ 望む所ね‼︎ハクア、里に帰るわよ‼︎」
そう意気込む2人にカイトは、
「でも、馬死んじゃったから帰るの大変ですね、僕は今から東の村に行きますけど、2人はどうします?」
「「つ、着いて行きます…」」