願い華
私の好きな人は、とても人気のある人です。
その人との出会いは、本当に偶然。でも私は運命だって信じてる。だってあの人と同じ高校に通う為に、人生で一番って言えるくらい勉強したから。
入学すれば、学年が異なっても校内で逢えるかもしれない。
今はまだ、遠くから見ているだけで充分。
多くは望まない。ただ同じ空気を吸えたら、それだけで。
そう思っていたんだけど。
入学して判ったのは、先輩を好きな人は沢山いるという事と、先輩が告白を全部断っているという事。
先輩はすごく優しくて素敵な人だから、皆が好きになっても不思議じゃない。誰の告白も受けないのも正直嬉しい。
だけど……
「先輩……先輩の好きな人って……誰なんですか……?」
先輩の断り文句が“好きな人がいる”に変わったと耳にしてから、それが私だったらどんなにいいかと思う様になってしまった。
けれどそれは淡い、叶わない願い。なぜなら、初めて会ったあの日……ホームで転んだ私に手を差し伸べてくれたあの日以来、言葉を交わしたのはたった一度だけだから。それだって、校内で見掛けてあの時のお礼をもう一度言っただけ。
だから顔見知りになるかも判らない私のわけがない。
私もきっと、周りのその他大勢の中の一人だろう。
そう思って吐いた切ない溜め息と共に出たのは。
「ねえ先輩。“私達”じゃなく“私”を選んで下さい……」
この上なく切ない願いだった。