7話 トーマのお説教 再開
今まで投稿した分を読んで、色々と反省しながら何回も文章を推敲しているうちに投稿がとんでもなく遅くなりました。
ちょっとずつですがマシな文章にはなってきたかなぁ・・・
「さて、お説教の続きだ。
まあ、流れから察してる子もいるとは思うけど、最初に言った次の段階っていうのは、主にロアの『適正』に関することだ。
けど、まあその前に区切りのテストでもしようと思ってね。
と、言うわけで、今ハンターギルドから、一つ依頼をもってきた。」
そういいながらトーマはひらひらとコピー用紙を見せ付けた。
ハンターギルドというのは、兵士として正式に雇用されないフリーの戦闘員をまとめている組織だ。
通常ハンターギルドの依頼は、そこまでの緊急性を要さないものばかりで、コンピューターでデータベース化されて管理されている。
一定期間の受諾可能期間を過ぎた依頼は『宮殿』の兵士へと回され、国としての討伐作戦が動き出す。
ハンターギルドから依頼を受けて達成すると、国の予算から報酬が出される。
いわば、単発の傭兵のようなものである。
兵士と違い、自分で自由に討伐に出られる。
しかし、戦死による勲章などの保証が無い分、リスクは高いのがハンターだ。
ソレに対し、兵士は宮殿で正式に雇われ、給料も出され、教育も施される正規の国の戦力だ。
普段はハンターギルドで期間切れとなった依頼の処理や、魔族との小競り合いをしている。
一度兵士として雇用されると、宮殿の兵士寮からでることはできず、家帳の場合は、家族とともに寮に入ることとなる。
命令には絶対服従で、命を落とすような危険な仕事にもハンターと違い強制的に出撃することになる。
「猟犬『ガルム』の群れの討伐だ。
前回は単体の討伐に向かってもらったけど、まあ今回も、各々が本気で挑むなら大丈夫だろう。」
と続けた。
「あの・・・群れとは何体ほどの群れなのでしょうか?」
とティアが訊いた。
「んー、書類の時点では成犬58頭、子供が100頭強に老犬が10頭ほどとのコトだけど・・・。
報告が2ヶ月前らしいから、もう少し大変なことにはなってるかも知れないね。」
『ガルム』はこの国のある平原に原生している巨大な狼のような獣だ。
一匹の雄を中心に、メスの集団と子供、そして子分の役割の雄たちで構成される群れをつくる。
稀に子分の雄が下克上を狙い、ボスに戦いを挑む。
勝った者が新たなボスとなり、負けた者は群れを去る。
そして、群れを去った者は単体で放浪し、新しい群れを形成したり、生涯孤独に過ごしたりする。
この単体で放浪する雄が城の外壁を突破してしまう場合があり、そのためガルムの討伐は単体の場合が多い。
「それにしてもガルムの群れの討伐なんて珍しいねぇ。
外壁に近いところで発見されたのかなぁ。」
とキースが言う。
ロアは、周りの会話など耳に入らない様子で、きつく唇をかみ締めている。
時折、「クソ・・・」などと呟いている。
「さて、それに加えて、君たちには条件をつけよう。
ただやるだけでは試験にもならないからね。
まずはロア、君は属性槍と防壁のみで戦え。
アークは、武器の持ち込み禁止。現地で精製して戦え。
ティア、君は弓の使用禁止だ。単純な魔法と魔術、そして混合のみで戦うように。
もちろん、ミーナは『唄』以外の詠唱禁止。そして、補助、治療の禁止だ。
で、最後のキース。君は特に条件をつけない。
だが、その分他の人間をフォローすることに徹しろ。」
ここまで言って、トーマは一度間を空けてから、
「出発は明日の昼にしておいたから、それまで各人ゆっくりするといい。
そして、監視と万が一のためにザンが同行する。
僕の生徒として恥ずかしくない動きを見せてね?
じゃあ、今日は解散だ。」
と、締めくくった。
日は既に沈みかけて、時計は6時をまわっている。
各々が帰路につこうとしていた。
ティアとアークは学院の『寮』に住んでいた。
寮といっても、学院があるビルの上層階に人が住めるフロアが数フロアがあるだけだ。
トーマたち教師3人もそこで生活していた。
総数で20人ほどがその『寮』で生活していた。
ティアもアークもともに身寄りはなく、施設からトーマの養子に入るという形で学院へと『入学』していた。
キースは、学院からは徒歩圏内にあるアパートで両親とともに暮らしていた。
両親と息子一人、父は昼間働きに出て、母は家事に勤しむという至って普通の家庭だ。
ミーナは学院からは少し遠いところにある高級な住宅地にある一戸建てで、兄、弟、妹が一人ずつ、高収入の父親と、母親と暮らしている。
ロアは一人の弟と母親との三人暮らし。
学院からはそう遠くないところのマンションに住んでいる。
父親と兄が戦死したことによる保証金はあったが、母親の仕事と、ロアのハンターとしての収入が暮らしの支えで、ロアはトーマからの課題として出る以外の依頼も個人的に受けていた。
戦闘ということを学んでいても、まだ彼らは若い、学生・生徒という身分であった。
各々にはまだ生活があった。
――――――――――
学院の寮。
今日のやることは全て終わり、これから各々が自由に過ごす時間。
時計は9時を回った頃、教師たち3人が一室に集まっていた。
「で、本当にやらせるの?」
と、栗色の髪のロング、メガネをかけた、決して若くはないが、オバサンと呼ぶにはためらわれるような見た目の年齢の女性が、トーマに訊いた。
彼女はこの学院の魔法、魔術の担当教師、シェリーだ。
「アンタのやろうとしていることはかなり厳しいことよ?
あの5人は複雑すぎる。
特にロアは難しすぎるし、下手したら殺し合いになるわよ。」
彼女は付け足した。
「ああ、させるさ。
殺し合いでもしてもらった方がいい。
あの子たちはちょっと俺の手には負えねえ。
俺がどーこう言って聞いてくれるようなヤツらじゃないからな、自分で理解させないとダメだ。
まあ、あの子たちっつっても主にロアだが。」
そう答えたのはトーマだ。
生徒に対するときと口調も違うし、メガネもかけていない。
すると、金の短髪の男が
「そういう問題じゃないだろう。
5人が5人とも化け物のパーティーを作って何がしたいんだ、トーマは。
わざわざあの5人を一つにまとめる意味がわからない。」
と、訊いた。
「まあ、そのうちわかるさ。俺も考えてはいるんだ。
明日は頼んだ、ザン。」
と、トーマが答えた。
金髪の男はこの学院の物理系の担当のザンだ。
「わかったけどよ。とりあえず、ティアとアークはいいのか?もうそろそろ1週間だ、今日あたり様子を見に行った方がいいんじゃないのか?」
「ああ、わかってる。夜中に行くつもりだった。
あいつらは比較的楽で助かる。
化け物っつってもちゃんと自分でコントロールできてるからな。」
トーマが言った。
「ミーナはどうするの?
本人は気付いてないみたいだけど、私から伝えた方がいいかしら?」
シェリーが訊くと、
「ああ、それは今回のコトが終わってからで頼む。
今回のコトが終わったら、少しは変化があるはずだ。
あとは、まあ、本人たちで何とかさせる。」
とトーマが答えた。
次の投稿も少し遅くなってしまうと思いますごめんなさい。