イモータル・アベンジャー ~ Lv.9999のチート勇者の仲間に最愛の幼馴染を殺された挙句馬鹿にされて抗議した結果、勇者に逆恨みで殺されたLv.1の無能村人、不死の体を手に入れて泥臭く復讐する。~
帝国最西端の辺境村ギナミス、そこが僕の生まれ育った土地だ。
辺境ゆえ不便なことは沢山あるが、つつましく穏やかに暮らせていた。あの隕石が落ちてくるまでは・・・。
「おい!なんだあれ?!」
見上げると空に大きな岩のような塊が紫色の光を帯びながらこちらに向かって落ちて来た。
「も、森の方に飛んでいくべ!」
大きな空飛ぶ岩は森の奥で見えなくなったと思うと大きな爆発音とともに森の方から突風が吹いて来た。
「うおっ!何なんだ?今のは・・・。」
それから僕たちの生活はがらりと変わった。
僕らの中から不思議な術を使えるものが現れ始めた。
火、水、岩、風、雷などを操れる人が出てきたことによって暮らしはだいぶ楽になった。
だが、同時に今までにない災厄も現れた。
森の奥から耳と鼻がとがった緑色の化け物、透明な粘液のような奇妙な動く物体、二足歩行の豚の化け物、角が生えた顔が赤い巨人etc・・・。それらが一斉に襲い掛かって来た。
彼らも同じものを操り、村人たちを苦しめた。
そして、彼らは口々にこう言った。
『魔王様に従え。さもなくば国を亡ぼす』と・・・。
彼らは魔王に従う動物、『魔物』と呼ばれるようになり、連中や自分たちが使う不思議な術は『魔術』と呼ばれるようになった。
そして、『魔術』は僕を除いて全員使えるようになった。
あれから10年の月日が流れた。
魔物はある程度村人たちで対処できるようになった。
だが、それでも移住と魔王との戦いによる死が続いたせいで村にいるのは俺とフェリアだけになった。
フェリアは幼馴染で生まれた頃から一緒だ。
彼女は肌が透き通るように白く、ピンク色のフリル付きのワンピースを着用しており、銀色のショートヘアが風になびくたびに良い香りがするうえに背も他の村人と比べて小さかったため、みんなから花の妖精と呼ばれていた。
そんな妖精さんは俺のそばで微笑んでいた。
俺はと言うと流行病にかかりベッドで寝込んでいた。
彼女はそんな俺の看病をしてくれていた。
「・・・今日のは、特別苦いな。」
「森の奥に数本しか生えてないとされる伝説の『虹色の薬草』を粉にしたからね。たまたま入り口付近に生えていたのよ。」
「大丈夫なのか?それ・・・。」
「この草を食べた魔物が瀕死の状態から復活したって言う話をお父さんから聞いたから。」
「そうか、なら安心だ。それにしても勇者カルマ様はすごいお方だ。村人たちが束になっても10年間倒せなかった魔王をあっというまにやっつけたからな。」
「ふふふ、そうね。でも、アルヴァーデ君の方がすごいわよ。」
「なぜ?」
「だって、魔法が使えないのに剣一本でオークキングを倒せるんだもの。回復しか使えない私が何度あなたに救われたことか。」
「そりゃどうも・・・ありがと。」
「うふふ・・・。」
月明りに照らされた彼女はきれいですごく美しかった。
「・・・近々戦争が始まるみたいね。」
「たしか、勇者派と政権派の内戦だっけ?」
「酷い話よね。魔王に一番困っていたのは皇帝陛下なのにそれを倒したら勇者は危険だって葬り去ろうとしているんだもの。」
「そうだな・・・君も、勇者様の仲間としていくんだろ?」
「回復役としてね。勇者様について行けば豪華な褒美がもらえるし。」
「ハハハ!たしかにそうだな。・・・生まれてくる子供にも楽をさせてあげられる。」
「そうね。結婚も豪華なものにできるわね!もちろん戦争が終わってからだけど。」
彼女はお腹をさすった。
「どんな子が生まれてくるんだろう。楽しみだ。」
「フフ、きっとあなたや私と同じで穏やかで優しく可愛い子かもね。」
「俺はそれまで死なないでおくよ。」
「私も!・・・約束よ!」「ああ、約束だ!」
・・・彼女はレイプされたままの姿で帰還してきた。
だが、彼女は恥じらうこともなく無造作に横に転がっていた。
ここに来た奴らが2人係で彼女を放り投げたのだ。
慌てて駆け寄り口の近くに手を置いたが息をしていなかった。
「あ、あああ・・・。」
「お前、こいつの彼女だろ?もういらねえから返すわ。」
いかにも悪人のような顔をした役人らしき人が下卑た笑いをしながら彼女を蹴り上げた。
「約束したのに、フェリア。・・・皇帝は、それに味方するおまえらはひどすぎる!彼女が何をしたというんだ!」
「何を勘違いしている?俺たちは勇者側だ。喜べ、勇者様は勝利したのだ!」
「・・・は?」
言っている意味がよく分からなかった。政権派はもういない?だとしたら目の前にいるのはフェリアの仲間。でも、今・・・奴はもういらないと彼女の死体を放り投げた。なんで?
目の前がぐるぐるとまわる感覚に襲われその場で吐いた。
「おいおい汚ねえなぁ・・・。」
俺は口に残った食べ物のカスを怒りに任せて吐き出した。
「殺したのか?」
「見りゃわかるだろ?」
「百歩譲ってお前らの不手際で彼女が戦闘で死んでしまったならまだいい。手を上げるのはやめよう・・・だが、お前らは弔うどころか仲間であるはずの彼女をレイプして殺した挙句俺の前に放り投げた!・・・真意を問いただしたい。」
「真意?簡単なことだ。その女はなぁ!勇者様を裏切ったんだ!雑に扱って当然だ。」
「まさか、政権側に寝返ったのか?彼女がそんな・・・。」
「ちがうちがう!こいつはな。勇者のお付きの癖にやることやったあげく子供を身ごもってたんだよ!」
「だからって殺すのは違うんじゃないか?!」
「うるせえ!これからは勇者様が法律だ!」
「だが僕は殺せと命令はしてないよ?それと回復役は純潔でないと本来の力を発揮できないからあの女を呼んだんだ。べつに俺がそう言う性癖って言うわけじゃないからね。」
「げ!勇者カルマ様!!なぜここに?!」
ペガサスに乗って現れたのはイケメンの好青年だが、肌の色は黄色く顔が平たい。
とぼけた表情をしてどこか頼りないが、何となく異質な雰囲気を漂わせている。
「お前の様子がおかしいうえにあの女の遺体が消えてたからな。後を付けて来た。」
「あんたが勇者か?」
「てめえ!勇者様になんて口を!」
「意図をはき違えて他人の大切な人を殺したお前が言うな。」
「すいやせん。」
「もういい、腹を空かせて待っている子供がいるって言ったから生かしておいたが・・・バカは死なないと直らないようだな。『体術封印Lv.5』」
男は身動きが取れずその場に倒れた。
最高難易度の封印魔法をあっさり成功させやがった。かつていた村人たちも出来なくはないがせいぜいLv.1が関の山。しかも成功率は限りなく低い。
勇者、こいつにだけは絶対に逆らっちゃだめだ!
「ご主人様、ここは私に任せるのです。」
栗色の髪をした犬獣人が前に出た。
ご主人と言っているが奴隷か?それにしては首輪がないが・・・。
「ま、まてよ!悪いのはあの女だ。それに殺したいとか言ってただろ?勇者さm・・・。」
ザシュ!
「うるさい。ご主人様の命を狙っていた元盗賊風情が口を出すな、なのです。」
そいつの首は宙を舞い、俺の足元に転がった。絶望の表情をこちらに向けながら。
「殺したいと思ったことは・・・本当なの、ですか?」
「人間誰だってイラっとした原因の奴を殺したいと思うだろう?」
「ええ、それだけは激しく同意です。」
「僕はうっかりこの男の前で口走っただけだ。なんせ、あの女が本来の力を発揮できなかったせいで、治す人が足りなくて軍が全滅しかけたからな。みんなのおかげで何とかなったが・・・。」
「いえいえ、勇者様が寸でのところで気づいてみんなを助けたからこそ、我々が勝利したのです。」
目を輝かせたお付きの赤髪ポニーテールの女性剣士が可愛らしく微笑んだ。
「そうかな~。」
「そうですよ!さすがご主人様!」
小動物のような栗色の毛をした犬獣人が尻尾を振る。
「あの時の凛々しい姿を見た瞬間、思わず粗相をしてしまいました。」
「汚いわね。」
「なっ!うるさいですね!犬獣人は嬉しいとついやっちゃうんですぅ!」
「こらこら喧嘩するなよ。」
心底嬉しそうな目で彼女たちを見る勇者を見た瞬間、怒りが恐怖を上書きした。
「勇者様・・・部下の不手際を謝罪しないのは上の立場の人間としてどうかと思いますよ?」
「・・・!うるさい。」
「親や上司となる人から言われなかったんですか?失敗したら言い訳せずにきちんとまずは謝罪して誠意を見せろって!」
「う、うるさいうるさーい!僕は悪くない!!あいつらと同じことを言うな!!!」
ザシュ!
「え?」
何が起きたか一瞬分からなかった。
勇者の剣が血を滴らせながら煌々と光っていた。
服が剣で切られたところから血がジワリと広がり地面にしたたり落ちた。
「ぐぅ!ううっぐ!」
熱さと耐えられないほどの痛みが俺の体を支配していった。
「・・・!足を引っ張る女を擁護するからこうなるんだ。」
「いい気味なのです。」
「行きましょ?勇者様。」
俺はそこで意識が途絶えた。
暗闇の中でフェリアの笑顔が次々と現れては消えていった。
ああ、俺死んだんだな。フェリア・・・今行くよ。
目を覚ますと透き通るほどの青空だった。
ここは天国か?
「ふ、フェリア・・・フェリア!」
見渡すもどうやらここは天国ではなくギナミス村らしい。
血の匂いと多少の腐敗臭が現実であることを教えてくれた。
だが、フェリアの死体はどこにもなかった。
あいつらが回収したのか・・・。
俺は生き残ったことに絶望し、もう一度死のうと森へと足を踏み入れた。
だが、何度引き裂かれても何度致死量の毒を浴びてもまったく死ぬことはなかった。
しかも、魔術攻撃に至っては何故か全く効かなくなっていた。
俺は理不尽な怒りに任せて、攻撃してきた奴を返り討ちにした。
「ハァハァ・・・。」
彼女と幸せな家庭を築くことも、彼女を追って死ぬことすら許されねえってことかよ。
そのことが頭によぎったとたん何かが吹っ切れた。
「勇者、俺が絶対にぶっ殺してやる!邪魔をする奴も全員皆殺しだ。この能力があればそれが叶う!叶うんだ!フハ、ハハハハ!ハーッハッハッハァー!!!」
翌日。街道に向かうと、昨日勇者と一緒にいた犬獣人が俺の前に立ちはだかった。
「ご主人様に奴が生きていると言われて来てみれば・・・お前、なんで生きているのです?!」
髪と尻尾の毛を逆立てている。
「威嚇のつもりだが、正直可愛いだけだぞ?」
「う、うるさい!お前に言われても嬉しくないのです!大方あの女の仇でも取りに来たのですね!」
「そうだ。」
「ハン!あの女のどこがいいんだか、ご主人様に取り入るために嘘をつくとかとんだアバズレなのです。」
「てめえ・・・今なんつった?」
俺は怒りに任せて彼女を睨みつけた。
「おーこわ!やられる前にやってやるです!『竜巻旋風斬』!」
ズドーン!
「ムハハハ!勇者様に逆らうとこうなるですよ。・・・はぁ?!」
「おー!すげー!後ろにめっちゃでかい筒状のクレーターが出来てらぁ。なのに俺にはそよ風にしか感じなかったぞ?」
「そんな・・・兵士1万人を一瞬にして粉みじんにする私のとっておきが・・・そ、そよ風・・・うわあああ!!!」
険しい顔をしながら彼女は突進してきた。手には短剣を持っていた。縮地で威力を高めようという魂胆だが俺には無意味だ。
ズブッ!ゾブッ!ザクッ!
「おらっ!このっ!地獄に帰れーっ!」
「ほう、刃を寝かせて心臓付近を刺す。実によく訓練されたワンちゃんだ。味方に欲しいくらいだ。」
「な、なぜ死なない!?それに傷がすぐに塞がって・・・お前まさか!」
俺は彼女の首根っこをつかんで持ち上げた。ナイフがポトリと落ちる。
「あ・・・がぁ・・・苦しい!や、めて・・・。」
彼女は恐怖で涙と鼻水、小便を垂れ流した。
「ご・・・主人様、助け・・・て。なんで・・・こないの?」
「そんなに好きならあの世でご主人様を待っていろ忠犬。すぐに連れていくからな。」
「待って!私は!」
ゴキィ!
「きゃうん!」
確かな感触とともに俺は彼女を殺した。
だが、横たわる彼女はナイフとともに塵となって消えた。
「どうなっているんだ?・・・まあ、いい。これで一人邪魔者は消えた。」
俺は帝都に向かって歩き始めた。
― 勇者視点 ―
僕はユニークスキル『万物創作』で何でも見通せる『神眼の宝玉』でプリンちゃんの動向を見ていたのだが。
「プリンが倒された・・・クソッ!間に合わなかった。なぜだ?なぜテレポートが使えない。」
「あり得るとしたら奴が魔術を封印できるスキルを使えることですね。テレポートが使えないのもそのせいかと。」
真っ赤なポニーテールが特徴のフレイアは言った。
「なん・・・だと?魔術を封印・・・そんなことが出来るのか奴は?」
「恐らくは・・・それゆえ彼女の『竜巻旋風』も通用しなかったのでしょう。」
「チートだろそんなの・・・僕のプリンちゃんがぁ。あいつLv.1の只の村人なのに強すぎだろぉ。」
「我々を召還ルーレットのユニークスキルで召喚できるLv.9999の勇者様も十分チートだと思いますよ。自信を持ってください!」
可愛く励ます彼女をよそに僕は新たな強大な敵に頭を悩ませるのだった。
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