短パン
東名高速道路は、日本の動脈である。
都会に高速道路は必須であるが、この東名高速道路は、二手に分かれる。
すなわち、新東名と旧東名である。
これは、稲川組が、パナソニックエコシステムズに対して最大の物議を醸し、ほんの少し早い新東名高速道路を、北海道の出稼ぎの野郎どもで作り、二手に分かれることで、パナソニックエコシステムズと大阪パナソニックシステムズの分配を図った。
伊勢志摩湾でのサミットを控え、ここ祇園では転換期を迎えていた。
神戸マフィアが動く。
黒澤と花、皆伐と谷田は、それぞれの車で、まずは神戸に向かっていた。
途中のサービスエリアで食事を取ったあと、黒澤が車を動かそうとして、年のころ三十代の男が、短パンを履いて、ヒッチハイクしてきた。
黒澤は、すぐに、神戸マフィアの仕業だなと思ったが、「どうぞ」と、車の後部座席に座らせた。
「四国まで行く予定です」と、その男は言った。
春先である。まだまだ短パンには早いのだが、男は、「あえて短パンです」と言った。
「私は今、仕事を探しているのですが、海外まで視野にいれていたところ、日本のある企業が拾ってくれました」
この短パン男は、饒舌に語った。
黒澤もなぜか、いつもより愛想良かった。
「案外、ヒッチハイクって出来ますよ」と、男は言った。
「今、大韓民国が日本の皇族にアプローチしてますが、失礼ですが、あなたはマフィアですか?」
男は、慣れた調子だった。
ラジオからは、DJが最近流行りの歌を紹介している。
「京都にマフィア以外がいるとでも?」
黒澤が言うと、その男はいささか面食らったようだった。
そして、この男こそ、台湾省の回し者であった。
続けて、黒澤は言った。
「その短パンはトレードマークで、最近のグローバルな話で言うと、海外も視野に入れてとは、ただの戯れだとか?」
ヒッチハイクの男は言った。
「これはこれは・・・。時に、あなたはこの男の妻ですか?」
花に目線を送った男は、あくまでも明るい。
花は、本当のところ、なぜこの男のヒッチハイクを受け入れたのか解せなかったが、それはそれとして、「そうです」と答えようとしたところ、黒澤が、「次で」と言った。
その男は一瞬無言で、黒澤を見た。
どうやら今までは、この方法で上手くいっていたらしい。
次のパーキングで、この男をおろした。
谷田は、その男の解せない表情を見て言った。
「もうすぐ雨が降りそうじゃが、中華街は予約はなしじゃけ」
お土産は、パーキングでいくつか買った。
花のカードは、ブラックカードだった。
金のかわりに、数字が動く。
皆伐は、「肉まんが楽しみ」と言い、帰り際その短パン男と目が合った。
少し、後ろめたそうなその男の顔を、覚えておこうと目に焼き付けた。
ザーザーと雨が振る中、神戸に到着した。
黒澤が、「大雨は残念かもしれんじゃが、もう気にしなくていいじゃけ。神戸プリンでも買おうか?」
「おいしいじゃけ?」
花が聞くと、「何でもお土産物はうまい」と、黒澤は答え、「ホテルに着いたら、中華街でも行こう」と言った。
神戸に着いたら雨は、音をたてて増した。
歩道橋を渡りながら花は言った。
「お土産は買わにゃ・・・」
「今夜は、四人部屋じゃけ」
黒澤はそう言ったが、花には何の心配も浮かばなかった。
人の結びとは、心の契約ゆえに、そしてそれは、「神との契約」なのだ。
興奮する男どもをよそに、花の心は平安だった。




