ナギの『せとうち空想旅行』
「75番の方、お入りください」
「はーい、失礼します」
「ナギさん、結論から言うね。また入院して詳しく調べてみよう」
「先生、入院って手術してってことですよね」
「そうだね」
「わかりました。いつからですか?」
「今からだよ。それとご家族同席で今後を」
ナギは軽くため息をついて言った。
「はー、治ったと思ったんだけどなー」
「先生もだよ、ごめんね」
そんな会話の後に私は入院して、そして灰になっちゃったみたい。
それまでの少しの間、私は病院の天井が友達だったかな。
みんなから励まされても、頑張れって言われても、
多分これが最後なんだって思ってた。
ふと思ったのは居酒屋でのあの人、存在がちょっと薄い人。
誰だっけかなー、名前が思い出せない。
思い出すのは『せとうち』って言葉だ。
どうしてだろう無性に知りたくなった。
感じてみたかった。
私が行ったことがない、
彼が生き生きと語っていた『せとうち』を。
「母さん、スマホじゃ画面小さいのよね。
中古のノートパソコン買っても良い?
ネットで動画見れればいいやつ。
店員さんから勧められたので良いよ。
次、病院来るときお願いね。
あと書き物するからリング式のノートとペンもお願い。
必ずリング式だよ……だめだよ普通のだと、
書きにくいし、ベッドから落ちちゃうでしょ」
こうして私の『せとうち』の旅は立ち上がる。
* * * * * *
インターネットをみんなが使い始めた頃はAltaVista、
今のGoogleみたいなものだよ。
内容は文字ばっかりだったけどね。
そこからロケット打ち上げるみたいに爆発的に増えていって、
きれいな動画まで見れるようになったみたい。
質と量があるポイントを超えて増えた時に起きること、
それは体験の共有よ。
それによって感動が再生産されて本物に限りなく近づいて行く。
でも人間は欲張りだから本物に触れてみたい、味わってみたい。
その気持ちは、それを知らなかった時よりも強くなるの。
この『せとうち空想旅行』はね。
じゃあ、張り切って行ってみよー!




