角島灯台公園(前編)
僕は呉行きのフェリーに乗りながら旅程をつめていた。
滝部駅でレンタカーを借りるか、頑張って角島大橋近くのホテルに陣取るか。
レンタカーなら車中泊だ、晴れの日は日本とは思えない青く澄んだ景色が広がるという。
「これは自分の運転で渡りたい」
そう思った僕はレンタカーを選んだ……しかし運がなかった。
「ないですか……50ccのバイクとかでもいいんですけど。
原付もないんですね、わかりました。またの機会に」
贅沢に旅をしたつもりはないのだけど、仕方なく僕はお金をかけることにした。
角島大橋近くのホテルは幸い、レンタサイクルを提供していた。
角島大橋を渡った後でも自転車はレンタルできるようで、しかも電動アシスト付き。
現地に着いたら乗り換えよう。
都会で生活していると楽をどこまでも追い求めてしまう。
今日中に角島大橋に向かおうと思い、広島から新幹線を使った。
一旦、福岡の小倉に入って少し戻り、山口のローカルに乗り換えるという
すごろく……のような動きをして行く。
広島には父の仕事の関係で二年ほど住んでいたことがある。
その後、仕事やプライベートで広島を何度か訪れたこともある。
見どころはもうみんな知ってるからここでは話さないよ。
一つ挙げるなら『木江の盆踊り』だよ。
特徴的なのはお祭りなのに遺影を持ち出して背負ったり抱えたりしながら、
踊ったり練り歩いたりすること。
沖縄の清明祭とかメキシコの死者の日に似た風習だよ。
初回はぎょっとするんだけど、亡くなっても魂の不滅を信じるのは
どこの国でも同じ、迷信って言われればそれまでだけどね。
記憶そのものが魂の欠片なら、生きてる人の中で生き続けるんだ。
「見えなくなってもそばにいる
いつまでもあなたを忘れない
見守るよいつまでも、きみを
だからこの歌を今日歌うんだ
きみの手触り、覚えてるから
哀しい歌じゃないの、これは
あなたへの、感謝の歌だから」
映画のワンシーンはこんな感じだったかな。
そんなことを少し思いだした。
東京からここまでこんなに長く旅をしたことがなかった僕は、
角島大橋近くのホテルに着くと寝てしまい、目を覚ました時は日が沈んだ後だった。
僕はフロントに事情を話して自転車を日またぎで貸してもらった。
なんとなく朝日を見に行こうと思ったんだ。




