信じていた彼は私を裏切りました。ですがその後幸せになれました。ですので、私は私として、真っ直ぐに生きていきます。
三年半ほど前、私エリーは、ラオットという青年と婚約していた。
ラオットは好青年。なので周囲からの人気も高く、中でも女性からはかなり高い人気を誇っていた。それでも彼は私に構ってくれていた。なので、彼に他の女性が近づくことに対して、そこまでの危機感は抱いてはいなかった。ラオットのことを信じていた、だから、もし言い寄られても彼なら大丈夫だろうと思っていた。
……だがそれが間違いだった。
ラオットは仕事で知り合った女性ナーナといつの間にか親密になっていて。
やがて私に「君との婚約は破棄することにした」と告げてきた。
その時は衝撃で頭がクラクラした。まさかの展開だったので理解が追いつかなくて。何が起きたのか分からないため、ただ目をぱちぱちさせることくらいしかできず。相応しい言葉も見つけられなかった。
いや、あの、これって何が起きた?
――そんな風に言いたいくらいで。
だがそれすらも発することはできず。
ただ時の流れを待つという道しか選べなくて。
困惑しているうちに私たち二人の関係は終わりを迎えてしまった。
別れしな、彼は少しばかり眉間にしわを寄せて、低めの声で「君は思ったより面白くなかったし魅力的でなかったよ」なんて言ってきた――個人的にはそれもかなりショックだった。
最後の最後にそんなことを言う? もう終わりだというのに。どうせもう別れるのだからもういいじゃないか。そんなこと、わざわざ言わなくていいじゃないか。そういうものだろう? なのに、なぜ、そんな心ないことを平然と言うの? 相手を傷つけると分かっているはずなのに、どうしてそんなことを。
なんて思いはしたけれど。
そう言ってやるほどの強さはなくて。
ラオットとの縁は呆気なく切れてしまったのだった……。
◆
「王妃様! こちらです!」
ラオットに切り捨てられた後、色々なことがあり、気づけばこの国の頂に立つと言っても過言ではない立場になっていた。
「その呼び方は……すみません、まだしっくりきません」
「別のものに変えましょうか?」
「申し訳ありません」
「では何とお呼びすれば良いですか?」
私は今、王妃となっている。
「そうですね……では、普通に、エリーと呼んでください」
「承知しました! エリー様とお呼びします!」
婚約者に切り捨てられ悲しみの中に在った時、街の外れで護衛とはぐれてしまった王子に偶然出会い、そこからすべてが始まった。
その日、彼が護衛と再会できる協力したことで、私は、王子であるリドウ・ト・ティ・アーロウンスと知り合いになった。その後彼がたまに会いに来てくれるようになって。そんなことをしているうちに仲良くなっていって。
やがて私たちは共に行く未来を考えるようになった。
その後リドウからプロポーズされ正式に婚約。
そこからはすべてが順調で。
私と彼が共に行く未来を潰せる者はどこにもいなかった。
そうして私はリドウの妻となったのだけれど、直後に国王が亡くなってしまい、それによってリドウが王位に就くこととなって――その結果私はかなりのスピードで王妃と呼ばれることとなった。
「こんにちは」
「王妃様、お待ちしておりました」
給仕係の女性が迎えてくれる。
「エリーで……お願いできますか?」
「ご、ご無礼を! お許しください!」
「いえ。私が勝手に言っているだけですので。貴女のせいではありません」
女性はどこか怯えたような目をしている。
そんなに恐れなくても、と思いつつ、なるべく笑顔で接するように気をつけた。
「本日はよろしくお願いします」
目の前を人を怖がらせるつもりはない。
なので友好的に接するよう心がけた。
発する言葉一つ一つにも温かみがあるようにしたい。
「お茶を淹れさせていただきます。できる限り美味しく淹れられるよう努力いたしますので、どうかよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
「で、では……! 早速、お持ちいたします……! どのような種類のお紅茶がお望みでしょうか」
「おすすめのものはありますか」
「そうですね……こちらはいかがでしょうか。南方から入荷したものでして。果物の香りがついています」
「素敵ですね、ではそれでお願いします」
国王となってもリドウは変わらなかった。
彼は彼のまま。
良い意味でそうだった。
そんな、ぶれない彼が隣にいてくれるからこそ、私は日々前向きに生きられている。
「そ、それでは……! どうか、しばらくお待ちください……!」
「ありがとうございます、急ぎません」
ちなみに、かつて私を傷つけた者たちはというと、皆揃ってあっさりとこの世を去った。
婚約者だった彼ラオットは、同性の友人に騙され詐欺に加担してしまい逮捕され、後に処刑されたらしい。
また、ラオットの死を知ったナーナは、この世で生きていくことに絶望し、崖から身を投げて自ら命を捨てたそうだ。
あの時彼らは自分たちの幸せのために私を傷つけた。
だからその罰が下ったのだろう。
どんなに幸せになろうと動いても彼らに幸せな結末はなかった。
◆終わり◆




