第49話「静かな帝国」
帝国旗艦は、波に揺れていた。
黒い帆。
整然と並ぶ艦列。
だが艦内は、静かだった。
ヴェルド・アスト=ゼルディアは、
報告書を閉じる。
「連鎖は止まりました」
副官が言う。
「想定より速い対応でした」
ヴェルドは、わずかに笑う。
「信用を速くする、ですか」
「面白い」
扉が開く。
銀髪の青年が入る。
「兄上」
第二皇子アレクシス。
若いが、目は鋭い。
「協議会は崩れなかった」
「ええ」
ヴェルドは穏やかに答える。
「だが体力は削れています」
アレクシスは窓の外を見る。
「恐怖は効く」
「だが、長くは続かない」
ヴェルドは眉をわずかに動かす。
「殿下は、協議会を評価なさるのですか」
「評価している」
即答。
「彼らは“選ばれよう”としている」
沈黙。
その時、別の報告が届く。
「外洋連盟の商船団が接近」
ヴェルドの視線が止まる。
「……早いですね」
アレクシスが小さく笑う。
「世界は、二つだけではない」
海の向こう。
巨大な三角帆船団が、姿を現す。
帝国でもない。
協議会でもない。
第三の旗。
その中央甲板に立つ女が、
遠く帝国を見て笑った。
「面白い匂いがするね」
カイナ・レ=オルティス。
大外洋連盟代表。
世界は、さらに広がろうとしていた。
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