第47話「連鎖」
塩の供給停止から、半日。
市場は、再びざわめき始めた。
「またか」
商人たちの顔が曇る。
価格板が書き換えられる。
塩が倍。
保存食が上がる。
魚が売れ残る。
だが本当の衝撃は、夕方に来た。
「東方自治連合の銀行が、支払い延期を発表」
噂ではない。
正式発表だった。
理由は簡単。
帝国系商会が、短期債務の一括返済を要求したのだ。
「期限前だろ!」
市場が怒号に包まれる。
だが契約書には、条項がある。
“市場混乱時、即時回収可”
帝国は、恐怖を育てた。
そして今、回収する。
東方自治連合の銀行前に列ができる。
取り付けが、飛び火する。
グランデル政庁。
エリスの顔が青ざめる。
「連鎖です」
「一国が揺れれば、他も揺れる」
ノルディクスからも通信。
「我が国の商会も帝国債務を抱えている」
ガルドが低く唸る。
「完全に計算されている」
レオンは、静かに目を閉じた。
帝国は速い。
恐怖を広げ、
価格を揺らし、
そして債務を引き金にする。
「体力を削る戦いだ」
エリスが言う。
「このままでは」
「保証基金が耐えません」
夜。
東方自治連合の首都。
銀行前で泣き崩れる女。
「子供の学費なんです」
兵が制止する。
だが不安は止まらない。
その光景が、伝令によって伝わる。
協議会内部の空気が変わる。
「もう無理だ」
東方代表の声が震える。
「帝国の融資を受けるべきだ」
ノルディクス代表も、沈黙する。
円卓が、軋む。
レオンは、ゆっくりと立つ。
「連鎖は止められる」
「どうやって」
「債務を、我々が引き受ける」
ざわめき。
「帝国債務を、協議会が買い取る」
「そんな資金は」
「即時保証機構を拡張します」
エリスが息を呑む。
「さらに危険です」
「はい」
レオンは認める。
「だが連鎖を止めなければ終わる」
沈黙。
東方代表が言う。
「帝国は喜ぶぞ」
「協議会の体力が尽きる」
レオンは、はっきりと言う。
「体力勝負ではない」
「信用の勝負です」
「帝国は速い」
「だが帝国は、支配を前提にしている」
「我々は選択を前提にしている」
円卓が静まる。
外では、再び列ができている。
連鎖は始まった。
止められるか。
それとも――
協議会は、ここで崩れるか。
残り一日。
経済戦は、最高潮へ向かっていた。
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