第46話「危険すぎる賭け」
即時保証開始から二日。
取り付けは、目に見えて減った。
市場は落ち着きを取り戻しつつある。
だが。
円卓の空気は、冷えていた。
「無謀だ」
ノルディクス代表が言う。
「裏付け確認を後回しにするなど」
東方自治連合代表も、顔色が硬い。
「もし不正があれば」
「保証基金は一瞬で吹き飛ぶ」
沈黙。
ユリウスが、静かに問う。
「計算は?」
全員の視線が、レオンに集まる。
「短期的には耐えられます」
「短期的には、だ」
ノルディクス代表が畳みかける。
「長期は?」
レオンは正直に答える。
「危険です」
ざわめき。
「帝国がさらに価格を揺らせば」
「再び取り付けが起きる」
「その時は?」
「持ちません」
空気が凍る。
「ならば何故やった」
問いは鋭い。
レオンは、はっきりと言う。
「崩壊を止めるためです」
「崩壊は止まった」
「だが我々の体力は削られている」
東方代表が低く言う。
「帝国はそれを狙っている」
「はい」
レオンは頷く。
「速さで揺らし、体力を削る」
「ならば速さで守るしかない」
ノルディクス代表が目を細める。
「だが速さは、信用の質を下げる」
「その通りです」
レオンは認める。
「だからこそ次の段階が必要です」
「次?」
「即時保証を恒常化する制度」
ざわめき。
「危険を前提に設計する」
ユリウスが問う。
「具体的には」
レオンは、紙を広げる。
「加盟国間の資源担保共有」
「即時融通枠の常設化」
「共通備蓄基金の創設」
ノルディクス代表が、低く笑う。
「軍事同盟ではなく、金融同盟か」
「はい」
「信用を武装する」
沈黙。
東方代表が言う。
「帝国はさらに揺らすだろう」
「揺らします」
「価格を」
「通貨を」
「債務を」
「そして我々の決意を」
円卓が重く沈む。
その時、伝令が入る。
「報告!」
「帝国が塩の供給を一時停止!」
空気が凍る。
「理由は?」
「港湾点検」
名目は整っている。
だが狙いは明確。
再び市場を揺らす。
ノルディクス代表が立ち上がる。
「ほら見ろ!」
「体力を削る気だ!」
レオンは、静かに立つ。
「だからこそ」
視線が集まる。
「制度化する」
「即時保証を、一時的措置で終わらせない」
「恐怖は速い」
「だが我々も、速くなる」
ユリウスが深く息を吐く。
「……時間がない」
「はい」
レオンは答える。
「残り二日です」
帝国は、再び揺らす。
協議会は、耐えられるか。
成功の直後に訪れた不安。
信用は速くなった。
だが強くはなっていない。
戦争は、続いている。
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