表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので辺境で本気を出したら、王国の制度を全部書き換えてしまいました ―戦わずに国家を動かす追放領主の改革録―  作者: 水無月カレン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/101

第18話「王国は、交渉の席につく」

王国からの正式な使節団は、三十騎で到着した。


旗は、王家の紋章。

形式は、完全な“公式”。


だが――。


それは、命令でも査察でもなかった。


「王国代表として参上した」


応接室に現れたのは、王太子ユリウス自身だった。


エリスが、息を呑む。


(……王太子自ら?)


それは、明確な意思表示だった。


監督でも、圧力でもない。

“交渉”だ。


「久しいな、レオン」


ユリウスは、形式的な挨拶をした。


かつて婚約を破棄した相手に向ける視線は、

どこか複雑だった。


「お久しぶりです、殿下」


レオン=アルヴェインは、感情を交えずに応じる。


応接室には、王国側の文官と軍務官。

グランデル側は、レオンとエリス、ガルド。


席に着く。


「率直に言う」


ユリウスは、回りくどい言葉を使わなかった。


「グランデル方式を、王国の公式辺境政策として採用することを検討している」


エリスの指が、わずかに止まる。


それは――勝利宣言に等しかった。


「ただし」


ユリウスは続ける。


「王国との連携を、より明確にする必要がある」


「具体的には?」


レオンが、静かに促す。


「制度策定に、王都からも人員を出す」

「グランデルは、試験運用の中枢となる」


試験運用。


だが、それは実質的な“共同設計”だった。


レオンは、一瞬だけ沈黙する。


(ここで拒否すれば、孤立)

(受け入れれば、王国が巻き込まれる)


選択は、明白だった。


「条件があります」


室内が、引き締まる。


「どうぞ」


ユリウスが、応じる。


「制度策定は、公開記録とする」

「成果も失敗も、隠さない」


軍務官が、眉をひそめる。


「王国の弱点が、露呈するぞ」


「隠しても、いずれ崩れます」


レオンは、淡々と返した。


「制度は、信用で回る」

「信用は、透明性で支えられる」


沈黙。


やがて、ユリウスが言った。


「……変わったな」


「いえ」


レオンは、首を振る。


「変わっていません」

「立場が変わっただけです」


その言葉は、静かだったが重かった。


かつては、王太子妃候補。

今は――制度設計者。


「……分かった」


ユリウスは、頷いた。


「公開前提で、共同策定とする」


それは、対等の合意だった。


命令でもなく、従属でもない。


エリスは、確信する。


(今、立場が並んだ)


会談が終わり、王太子一行が去った後。


高台から街を見下ろしながら、エリスが言った。


「……ついに、ですね」


「ええ」


レオンは、頷いた。


「王国は、敵ではありません」

「ですが、上でもありません」


「では」


エリスは、問いかける。


「何なのですか、私たちは」


レオンは、少しだけ考えた。


遠くに見える街道。

行き交う商隊。

広がる灯り。


「境界線です」


「境界線?」


「内でもなく、外でもない」

「支配でもなく、反逆でもない」


一拍。


「国家と国家の間を、設計する存在です」


風が、街を渡る。


追放された男は、

王国の制度を更新する立場へと至った。


辺境グランデル領は、

もはや“端”ではない。


――**境界を動かす中心**だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ