第12話「辺境は、もう辺境ではない」
変化は、静かに、しかし確実に広がっていた。
グランデル領へ続く街道には、往来が増えていた。
商人、職人、流民。
そして――情報。
「隣領の商会が、取引を希望しています」
「農地の貸与について、問い合わせが三件」
「住民登録の申請が、昨日だけで二十人分です」
報告は、途切れない。
エリスは、まとめた書類を机に置いた。
「……もう、“一領地”の量ではありません」
「ええ」
レオンは、頷いた。
「人が集まる場所は、自然と“中心”になります」
それは、彼が避けてきた言葉だった。
だが、否定できなくなっている。
「このままでは、王国も黙っていません」
「はい」
レオンは、地図に指を置いた。
「だから、次は“守る形”を作ります」
「軍、ですか?」
「いいえ」
彼は、首を振った。
「信用です」
「契約です」
「依存関係です」
エリスは、息を呑んだ。
「……勢力、ですね」
「はい」
レオンは、静かに肯定した。
「もう、辺境という言葉は使えません」
「ここは、“選ばれる場所”になりました」
その日の夕方。
高台から街を見下ろす二人の足元で、
新しい区画の造成が始まっていた。
子どもの声。
槌の音。
生活の気配。
「……あの日」
エリスが、ぽつりと呟く。
「王都で、あなたが切り捨てられた日」
「誰も、こうなるとは思っていなかったでしょうね」
「ええ」
レオンは、淡々と答える。
「私自身も、想定していませんでした」
ただ一つ、確かなことがある。
「あの時、王国は選択を誤った」
エリスは、ゆっくりと頷いた。
「そして今――」
二人は、同じ景色を見ていた。
「世界が、こちらを選び始めています」
遠く、街道の先に、新たな隊列が見える。
旗は、王国のものではない。
レオン=アルヴェインは、理解した。
これは、始まりだ。
追放から始まった物語は、
もはや「取り戻す」話ではない。
――**作り替える**話へと、変わったのだ。
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