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奥様とステラ ステラの見る星の夢

作者: 雨世界

 奥様とステラ ステラの見る星の夢


 おやすみなさい。奥様。(ふぁー、と奥様が眠ったあとで、とっても眠たそうにして、大きな、大きなあくびをして)


 ある夜。

 それはとてもたくさんの綺麗な星の輝くとっても明るい夜だった。

 そんな素敵な夜に(眠る前にそんな星空を奥様と一緒に眺めてとってもわくわくした)ステラは初めてというものを見た。

 だからはじめはこれが夢なんだって、ステラにはわからなかった。あれここはどこなんだろう? って思って、なんどかとっても不思議な感じがした。

 そこはいつもの奥様のお屋敷の中だったのだけど、どこかが違っていた。

 その違いが、お屋敷がまだ新しくて、ステラが奥様のところにやってきたばかりのころのようなお屋敷であるということに、お屋敷の中を歩きながら、いろいろなところを観察してみて、ステラはわかった。

 ここはむかしむかしのお屋敷なのだ。

 そんなお屋敷の中には、ルナ先輩やナヴィ。それにベニがいたし、お隣のお屋敷のロボットメイドであるカリンもいた。(カリンはお隣のお屋敷から遊びにきたのかもしれない)

 それだけじゃなくて、ステラの出会った人たちみんながいた。

 その中には、もうステラのそばからいなくなってしまった懐かしい人や懐かしいロボットメイドもいた。(お友達になったいつもお屋敷の中で寝ている太っちょの猫ちゃんもいた)

 だからステラはとっても、とっても不思議に思ったのだった。(もちろん、みんなに会えてとっても嬉しかったのだけど)

 ステラはそんなみんなと笑顔でお話をした。

 だけど、そのみんなの中に奥様はいなかった。

 はじめはどこかに(誰かの背中の後ろとかに)いつもみたいに恥ずかしがって隠れているだけだと思ったのだけど、どこにもいなかった。

 だからステラは奥様を探すことにした。

 広くて慣れない迷子になってしまいそうな広いお屋敷の中で、いなくなった奥様のことをいっぱい探した。

 奥様はこんなふうにふとどこかに(まるでかくれんぼでもしているみたいにして)いなくなってしまうことがあった。

 そんな奥様のことを探すことがステラの一番初めのロボットメイドのお仕事だった。

 そんなとき、きゅうに世界の風景が変わった。(夢はそんなふうにして世界が変わってしまうのだと、あとで奥様から教えてもらった)

 するとそこはステラのホーム(古い家)であるロボット会社の作った大きな大きな、真っ白なロボット工場の中だった。

 そこにステラは出荷される前の状態でいて、その隣にはステラの姉妹であるロボット『1112』がいた。

 1112はじっとステラを見て、「どうかしたの? 1111」と言った。

 1111はステラの製造番号(古いお名前)だった。

 ステラは夢の中で、もう自分が(自分のこころがある状態で)戻ってくることもないと思っていた真っ白なロボット工場の中を見て、そして、もう会えないと思っていた妹の1112と出会うことができて、なんだかとってもびっくりして、やっぱりとっても、とっても不思議な気持ちになった。(この気持ちはなんなんだろうって思った)

 だから思わず、ステラは1112のことをぎっと抱きしめた。

 すると1112は驚いた顔をして、それから嬉しそうな声で「もう。どうしたの? もしかして明日、ここを出ていってご主人様のところに行くことが怖くなってしまったの? よしよし。もう大丈夫だよ」と言ってステラの頭を優しく撫でてくれた。

 ロボットの所有者(あるいは権利者)には、ロボットに名前をつけることができる特権があった。(自分のとても分厚い取り扱い説明書は、読んだことはなかったけど、そんなことが書いてあるはずだった)

 ステラというお名前はご主人様である奥様がステラにつけてくれたとっても素敵なお名前だった。

 ステラは1112が(自分が出荷されたあとで)どんなところに行って、どんなご主人様にお使えをしていて、どんなお名前をもらったのか、知らなかった。

 ステラは1112のお名前を知りたいと思った。

 ……、今どこにいて、どんなご主人様にお使えをしているのか、知りたいって、強く思った。

 もう一度、妹に会いたいって。

 そこで世界はまた変わった。

 するとそこは真っ暗な世界で、ステラはその真っ暗な世界の中で、……、そうだ。私はいなくなった『お嬢様(奥様)』を探していたんだ。と思い出して、またいなくなった奥様を探すことにした。

「お嬢様ー」

「お嬢様ー。どこにいるんですかー」

 かくれんぼのお上手な奥様はなかなか見たからなった。

 でも、『子供を見つけること』が上手なステラは、ちゃんと奥様を見つけることができた。

 真っ暗な世界のそのすみっこのほうにある一番奥のところに奥様は隠れていた。

 そこに隠れて、小さく丸くなって、一人で泣いていた奥様は、自分のことを見つけてくれた、にっこりと優しい顔をして笑っているステラの顔をじっと見てから「見つかっちゃった」と涙声でステラに言った。

 そんな奥様に「さあ、みんなのところに行きましょう。お嬢様。みんなお嬢様のことを心から心配しながら待っていますよ」と手を伸ばしながらステラは言った。

 そのステラの(自分に伸ばされた)白い手をじっと不思議そうな目で少しの間(まるでお屋敷にやってきたばかりの痩せていたころの猫ちゃんみたいに)見つめてから、奥様はそっとステラの手を触った。

 その二人の手をつないで歩く帰り道のことだった。

「ステラ。お願いがあるの。聞いてくれる?」

 と下を向きながら奥様は言った。

「はい。なんですか、お嬢様」

「ステラ。私とお友達になって」

 と小さな女の子の奥様は、とっても恥ずかしそうにしながら、顔を真っ赤にして、上を向いて、そう言った。

「はい。もちろんです。お嬢様」

 とにっこり笑って、そんな奥様のお願いを聞いて、心配そうな顔をしている奥様の顔を見ながらステラは言った。

 すると奥様は本当に嬉しそうな顔で笑って「本当! ありがとう! ステラ。私、お友達ができるのって初めてなの!!」と興奮した声で、太陽のように明るい顔で笑って奥様は言った。

「はい。私もです!」

 としゃがみ込んで、奥様の目をじっと見つめてから、ぎゅっと奥様の小さな体を抱きしめて、ステラは言った。

 そこでステラは夢から目覚めた。


 ステラはこの夢のお話を奥様にしたくて、夢を全部覚えていようと思ったのだけど、夢はあっという間に曖昧になって、なんとなくのことは覚えていたのだけど、消えてしまった。

 そのことを奥様に言うと、「夢はそう言うものなんですよ」とくすくすと笑って残念そうな顔をしているステラに奥様は言った。

 それから少しして、奥様はステラに贈り物をしてくれた。

 それはステラの妹のことで、奥様はステラにないしょにして妹の今は『スター』というお名前のロボットメイドをお屋敷に招待して、ステラと会わせてくれた。

 ステラとスターはお互いにとっても驚いて(スターもステラがいることを知らなかったみたいだった)二人は泣きながら、しっかりとむかしみたいに抱きしめ合った。

 本当に嬉しかった。


 ねえ、つぎはなにをして遊ぶの?


 奥様とステラ ステラの見る星の夢 終わり

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