僕の彼女は塩対応です!?
結局どういうのが好みなんですかねぇ。
僕には、かわいい彼女がいる。惚気話になるのは許してほしい。彼女の名前を、如月 真愛という。僕と同じ、高校2年生だ。彼女は、塩対応で有名・・・らしい。しかし、僕は彼女のことをわかっているから、感情が読み取れたりもする。たまにわからないときもあるが、大体はわかる。そんな彼女は、
「お、真愛。おはよう」
「っ!!」
僕が挨拶をすると、声に出して返すことはできないが、嬉しそうな表情に変わるのが特徴だ。いやぁ、好かれているようで何よりだ。僕の彼女は、可愛い。声は出さないが、反応が子供らしいというか、まぁ。いろいろあるのだ。そんなこんなで、
「今日も可愛いな。真愛」
「っ!!・・・」
火照っていることがわかる。これだ。彼女のこういうところが可愛いのだ。意外と、こういう褒め言葉には弱い。僕が褒めた中で、こいつが照れなかった時を見たことがない。ただなぁ。寂しいのが、メッセージでしか愛情表現をしてくれないことである。たまに手を繋いだり、ハグはしてくれるが、本当たまにだ。
「まぁ、今日も元気そうでよかった」
これが、僕と話しているときの真愛だ。一方の、他の男子と話しているときの真愛を紹介しよう。
「あ、あの!!真愛さん」
「・・・」
「ひえっ。やっぱり、なんでもないです」
真愛は、僕以外の男には、軽蔑の視線を向ける。これが、塩対応と言われる所以か。
「もっとな、他の男子にも僕と同じ対応をしたら、もっと感じよくなると思うがな」
そこそこ感情豊かなんだから、もっと表情筋を働かせればいいのに。まぁ、そんな感じで、1日が始まる。
放課後、僕らは一緒に帰るのが当たり前だ。
「学校は楽しかったか」
「・・・」
「まあそうだよな。僕と話してないもんな」
真愛は、僕を生き甲斐にしているようだ。だから、僕が話しかけないと、全く楽しいという雰囲気を見せない。
「ん」
「どうした?急に手なんか繋いで」
「・・・」
寂しかったのか?まぁ、別に嫌じゃないから、これでもいいけど。
「もっと自身持てばいいのにな。真愛、可愛いんだから。男子にももっと、明るい表情を見せれたら、評価爆上がりだぜ」
「んん!!」
「どうした。全力で首を振って」
すると、携帯からメッセージの着信が届いた。
「大和くんだから、私は表情を変えれるの」
「そんな、僕だけ特殊なのか?」
<<コクリ>>
「そりゃあ、嬉しいもんなのか、困っていいもんなのか」
ただ、話せないことになにか理由はあるのだろうか。僕は真愛の彼氏だが、話さない理由を聞いたことがない。告白されたときだって、メッセージだったし、まだ一度も彼女の声を聞いたことがない。あまり、プライベートなことに首を突っ込むべきではないが・・・彼氏であるなら、そこは知っておきたい。だから、僕は彼女に聞くことにした。
「なぁ、真愛。真愛は、なんで喋らないんだ?」
「・・・気になる?」
「あぁ。ものすごく」
「そう。まぁ、大和くんだったら彼氏だし、話してもいいよ」
「ほんと?じゃあ、聞けるか?」
「うん。いいよ」
そうして僕は、理由を聞いた。
私は、昔から声を出すのが苦手だった。最近は、乞音になりかけているのかもしれない。私が声を出さない理由は、災いを起こさないためだ。昔、まだ私が話せた頃に、とある事件が起きた。私には、親友も友美ちゃんがいた。喧嘩もしないような、そんな仲のいい友達。しかし、ある日、私がノリで言ったことが、逆鱗に振れたようだった。
「え、それってさ、なんか気持ち悪くない?笑」
「え、何?気持ち悪いって」
「・・・え?」
「そんな酷いこと、どうして言うの?」
「え、ごめん」
「謝ればいいってもんじゃないよ。今のでどれだけ傷ついたと思ってるの!!」
私が言った、何気ない一言で、一番大好きな親友を怒らせてしまった。それ以来、親友だったはずが、私と関わってくれることはなかった。その時に私は気づいた。口は、災いのもとなんだって。だから、私は話すのをやめた。これ以上、失言をしないためにも。
「なるほどな」
それは、辛い過去があったわけだ。しかし、僕は・・・。
「安心しろ。俺は、お前に何を言われようとも、怒ることはない。たしかに、口は危ないものだ。時として武器になるようなものだから。けど、それでも気持ちを伝え合うもののひとつなんだ。だから、ゆっくりでいい。から、言葉をはっせるように、努力しないか?」
僕がそう言うと、
「っ!!!」
真愛が、僕の胸元へと飛んできた。泣いているのが伝わっている。
「時間がかかってもいい。いつか、愛をお互いに言い合えるように頑張ろう」
「!!」
そのとき、またメッセージが届いた。
「大和くん」
「どうした?」
そして、その瞬間、
「大好き」
「!!」
目を、大きく見開いた。だって、初めて・・・初めて、真愛が口を開いてくれたから。
「あぁ!!俺も、大好きだ!!」
僕も、真愛のその言葉に力強く、愛を叫ぶのだった。
それから徐々に真愛は話せるようになっていった。まだ、僕以外の人と話すのは怖いらしいが、僕なら安心できる。とのこと。
「てか、真愛の声ってかわいいよな」
「え!?そ、そんな・・・。意地悪」
そう言って、僕の懐に潜り込んでくる真愛。あぁ、本当に。ほんとうに・・・
「僕の彼女は、かわいい」
再度、僕は真愛に囁いた。
「大好きだよ。真愛」