HERO
皆さんは、『ヒーロー』を見たことがあるだろうか。なんだっていい。ゴミ拾いや、人助け。世の中には数々のヒーローが存在する。そんな中でも、連日報道されるのは、悪いニュースばかりだ。勿論、中には良いニュースもあるが、それよりも、殺人事件のことなどが、良いニュースよりも視聴率を集めている。言ってしまえば、良い行いをしても、あまり目を向けられないのが世の中の理でもある。
そんな僕は、所謂何でも屋をやっていた。闇社会の活動以外、世の中の役に立てる全てのことのお手伝いをしている。例えば、人命救助。それとか、悪の成敗。そういったことをしている。しかし、
「や、やめてくれ!!」
「どの口が言ってんだ。お前が犯人なんだろ」
「そうだが!!殺さないでくれ!!」
僕のこの活動は、誰かに依頼されてやっているわけではない。ただ、世の中にひっそりと潜む、社会の悪を成敗しているだけだ。世の中の人間は、それに気づかず生活している。故に、僕の功績が称えられることなんて、一度もなかった。まぁ、それでいいのだ。人は、良いことに目を向けない。授業だってそうだろう。こんな話をよく耳にしたことがあるだろう。あの、有名なアインシュタインが言っていた名言だ。
「私は、黒板に10問の問題を書いた。最初から9問目まで、私はその問題に正解をした。しかし、10問目に誤答をした際、一人の生徒が」
「答え間違っていますよw」
「と言って、私を嘲笑った。人は正解を誰も称えず、間違いを指摘する」
と。これが、人である自然の理。だから、僕はそんな人類に、なんの期待も抱いていない。前世の力もあって、異能力を持たない人間を圧倒できるが、それをしたって、なんの達成感も湧かない。でも、今の世界を守るために、僕は日々活動をしている。
「お前が、噂のヒーローって奴か」
「僕を認知している人がいるなんてな」
「よくも、俺様の部下を殺しやがったな!!」
「別に。殺したって、なんの問題もないだろ。そいつは、関係のない一般人を、無差別に殺人した。そんな腐った人間に、死なせてはいけないなんて約束、通用すると思うのか?」
「うるせぇ!!だったら、お前も殺人鬼だ。その言い分が通るなら、俺がお前を殺したって、なんの罪にも問われねぇよなぁ・・・!!」
「殺したいなら殺せばいい。ただ、言っておくが、俺に勝てる人間はいねぇよ」
「ちっ。うるさい坊主が・・・。おらお前ら!!やっちまえ!!」
結局は、大人数で挑まないといけないくらいの覚悟しかない。だから、人は弱い。群れて、威張っているだけの存在だから。
「言っただろ。勝てないって」
気づけば、その場にいた奴が全員、床に寝そべっていた。僕は、悪を倒した。しかし、誰にも称えられない。それが、世の中の理だから。
「はぁ。帰るか」
任務は遂行した。もう用はない。だから、帰ろう。
世の中には、隠れて、世界に貢献している『ヒーロー』が、少なからずいる。僕は、自分の体験を以て、今生きている者に伝えたい。
「悪いことにばかり目を向けず、良い行いをした人物を称えろ」
これは、悲しき無名のヒーロー、無叶大和の人生を語った、そんな物語である。必ずしも、生きていれば人は『ヒーロー』だ。いつか、誰かの役に立てるときが来るだろう。だから、すぐに、死のうとしないでくれ。僕は、自分の身を以て、そう伝えたい。