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病気の少年が語った『死ぬこと』の怖さ

俺の友達に、病気の少年がいた。・・・宗山むねやま 和俊かずとし俺と同じ小学5年生の、5人兄弟の長男だ。俺は、そいつとは所謂幼馴染だった。保育園からの親友で、ずっと毎日遊ぶ仲だった。そんな親友は、とある病に罹っていた。不治の病。生まれた頃から、和俊は言われ続けてきた。


『20年持つ確率はほとんどない』


・・・と。現在、俺たちは10歳。言われ続けた20歳なるまで、あと10年。そんなときに、親友は体調が悪化した。


とある日の授業中、


「おい。和俊。大丈夫か?」


昨日まで元気だった和俊が、体調悪そうだった。


「ん?あぁ。大丈夫だよ。大和君は体育戻りな」

「あ、あぁ・・・。わかった。無理するなよ」

「うん」


そのとき、和俊に優しい嘘を吐かれた。だが、当時の阿呆な俺は、その言葉を信用して、そのまま体育の授業に戻ってしまった。


すると、案の定、


「ちょ、ちょっと和俊君!?大丈夫!?」


和俊と一緒に休んでいたクラスの女子が、そうやって声を荒げた。


「おい!!和俊!!」




結果、医者から伝えられたことは・・・


「余命、1週間です」

「・・・え?」


そんな、衝撃的な内容だった。医者の話によると、和俊は前から余命宣告をされていたそうだ。和俊の親も、俺の親もそのことを知っていたらしいのだが、俺に心配をかけないように。と、ずっと言わないようにしていたらしい。そんな大事なことを知った俺は、初めて親にブチギレた。


「なんでそれを言わなかったんだよ!!」

「だって、心配かけるかなって思って・・・」

「なんでだよ!!もっと早く言ってくれよ!!もっと、あいつとしたいこといっぱいあったのに・・・!!」


とにかく、怒りを全てぶつけた。言い続けたら、そのうち俺は泣いていた。


「・・・大和君」

「ごめん。ごめんな。和俊。なにもしてやれなくて」

「君が気に病む必要はないよ。運命って、そういうことだと思うから」


これが答えのある運命なら、残酷すぎる。俺は、幸せになってはいけないのだろうか。和俊は。何か悪いことをしたのだろうか。何度だって、神に問いかけた。・・・その、いるはずのない神に。



日に日に、和俊は体調を悪くした。肺にも穴が空き、呼吸が苦しいほどにまでなっていた。


「・・・なぁ。和俊」


俺はその日、和俊にそんな質問をした。


「お前はさ、死ぬのが怖くないのか?」


夜を越すと共に、弱くなっていく体と心拍数。呼吸も辛くなって、余命宣告までされていたのに・・・。和俊は、死ぬことが全く怖くないと言った感じで日々を過ごしていた。


「死ぬこと・・・か」


そのときまでは、俺は『死ぬこと』の本当の意味を説明出来なかった。俺がそう問いかけると、和俊は答えた。


「怖くないよ。まったく、怖くない」

「は?」


俺からしたら、全く意味のわからない答えだった。


「怖くなんかないよ」

「なんでだよ。あと少しで死ぬんだぞ?人生はもっと長いはずなのに・・・一生孤独で彷徨うんだぞ?」

「うん。でも、怖くなんかないよ。なんでかってね。死ぬことが分かっているからなんだよ。なんで死刑囚が死ぬことに怯えるかわかる?なんで人間が・・・死ぬことに怯えるかわかる?『生き物という生物である以上』死ぬことは判りきっているのに、それでも死ぬことが怖いと感じるか・・・。わかる?」

「・・・」


俺は、答えることができなかった。


「明確な違いがあるんだよ。僕は、あと少しで、細かく言ったらあと2日で死ぬことが判っている。だから、死ぬのが怖くないんだよ。でも、人間は?死刑囚は?・・・みんな、いつ死ぬかわからない現実に怯えながら生きているからだよ。逆に、なんで人間以外の動物が最期まで生きようとするかわかる?」


「・・・わからない」


「人間以外の動物は、自分がいずれ死ぬっていうことを理解しているからなんだよ。それに、人間界とは違ってもっと残酷だから。天敵という存在がいるから。だから、死ぬことがわかっていて、怯えることなく天敵に立ちはだかるんだよ。人間とその他動物の違い・・・そして、僕と人間の明確な違いはそこだよ」


「つまり、死ぬことが判っているから死ぬことが怖くないって言いたいのか?」

「うん。そういうこと。そりゃ、僕だってもっといっぱいやってみたいことはあったよ。けど、生物はいつか必ず死ぬんだ。だから、僕は死ぬまでの短い刻を生きるんだ」

「やっぱり、お前は強いよ・・・」



そうして、和俊が言った通り2日後、和俊は息を引き取った。最期は、俺の目の前で。





その日から、俺は『本当の死の意味』を説明できるようになった。

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