私の好きな彼女
「まだ、好きだよ」
夕焼けに染まった、教室の中にその声が響いた。彼女は、彼女は・・・・・・。
高2の夏、僕に彼女が出来た。僕には勿体ないくらいの美少女さんだが、どうやら周りの反応はそうでもないらしい。まぁ、彼女の普段は眼鏡を掛けた陰キャちゃんのような子だからだろう。そんな彼女の名前は、春風 凪実は、モデルをやっている僕と同じ高校2年生だ。それでも彼女は、他の女子には負けないくらい可愛い女の子なのだが・・・。最近、彼女のモデル活動が忙しくなってきていた。
「・・・。今日も休みか」
日に日に、学校を休む頻度も増えてきた。
「おい大和。お前の彼女今日も休みじゃねぇか」
「今日も、風邪だってよ」
「ほんと、体弱いんだな」
一応、設定としては体が弱い設定で通している。実際に、持病があるらしいが、今はそこまで酷くないらしい。僕としては、一応彼氏だから・・・彼女が学校に来ないというのは寂しかったりする。
「ほんと、なんでお前は凪と付き合ってんだ?お前ならもっといい奴目指せただろ」
「お前は凪の良いところを知らないだけだよ」
周りの皆は知らないが、凪は本当にいいやつだ。彼女に年の離れた妹がいるのだが、明らかにいらっとくるようなことをされても、怒らず遊んであげているくらいにだ。僕は兄弟がいないから、その姿は羨ましかったりするのだが。
それから1ヶ月が過ぎ、終業式へとなっていた。結局、終業式も凪が学校に来ることはなかった。
「お前、彼女が学校に来てないで、いつ話してんだ?」
「一応帰ってから通話してるよ」
「ほぉう。仲良いんだな」
「じゃなかったら、付き合ったりしてねぇよ」
実を言うと、今日はお泊まりする予定なのだが、この調子でお泊まりすることは出来るのだろうか。正直、最近本当に好かれているのかがわからなくなってきた。毎日通話はしているが、忙しいこともあってか。反応が素っ気なかったりする。まぁ、仕方ないことだから言い出さずにいるのだが。
それから、終業式が終わっても、部活動の時間に差し掛かっても、彼女が現れることはなかった。仕事はもう終わっている時間帯だ。それか、家で待っているのだろうか。予定としては、19時から彼女の家にお邪魔する予定だ。
「大和先輩。さっきからずっと玄関の方をチラチラしてどうしたんですか?」
「ん?・・・別に。何もないよ」
「・・・あー。彼女さんですか?」
「っ・・・」
「図星ですね。今日も来れなかったんですか?」
「あぁ。実はな」
「寂しいですよね。私も元彼が1週間学校休んだときは、ほんと凹みました」
わかっている。わかっては、いるのだ。待っても、来ることはないと。・・・でも、願ってしまう。彼女と、また会って話したいのだ。・・・と、すると次の瞬間、校門に一人の人影が見えた。段々と近づくその影は、見覚えのある姿をしていて・・・
「!!凪!!」
僕は、すぐに部活を抜け出して、凪の元へ駆け寄ろうとした。しかし、
「・・・いや、だめか」
今は部活中、大事な時期ってのもあって、抜け出してしまったらチームに迷惑をかける。
「先輩。行かなくていいんですか?」
「今じゃないだろ。今は、部活に集中しないといけない」
「ま、まぁ。そうですね。・・・先輩」
「どうした?」
「私は、先輩のそういうところ、好きですよ」
「い、いきなりなんだよ。・・・一応言っておくけど、僕は彼女いるからな?」
「わかってますって。安心してください!!」
「何に安心すればいいのやら・・・」
とりあえず、部活に戻ろう。
そうして、部活も終わり、放課後になっていた。凪は、どこに行っただろうか。とりあえず、行きそうな場所を探すか。そうして僕は保健室や職員室を回ったが、そのどこにも
「凪?凪は来てないわよ」
と、どうやら顔を出してなかったそうだ。だとしたら、教室?いやでも、何をしに行くんだろうか。まぁ、とりあえず行ってみよう。
そうして、教室に着くと、そこには凪の姿があった。
「凪?」
「ん?・・・あ、大和!!」
その瞬間、凪が・・・。
「会いたかった!!」
「え!?ちょ、ちょちょちょ!!」
「あ・・・ごめんね。いやだった?」
「い、いや。全然いやじゃないよ」
むしろ、嬉しいくらいだ。だが、流石にそんなことは言えたもんじゃない。
「はぁ、落ち着いた?」
「うん」
「それで、どうして学校に来てたんだ?」
「夏休みになるからね。学校に置いてた教科書とかをとりに来たの」
「そうか。なるほど」
でも、見た感じ嫌われてはいないように思えるが・・・。だが、何かモヤモヤする。
「・・・」
「・・・」
二人の間に、沈黙が流れる。何故だろう。付き合ってから3ヶ月が経ったはずなのに、これほどに気まずかったことがあっただろうか。
「ごめんね。大和」
すると、その静寂を突き破ったのは凪だった。
「え?なにが?」
「ずっと学校に行けなくて・・・。心配かけたかな?」
「い、いや!!仕方ないよ!!心配は・・・したけど。モデルの仕事があるんだから」
「んっ。ありがとう」
やはり、聞くしかないだろうか。でも、このモヤモヤをどうにかしたい。・・・あぁ、もう聞くしかない!!
「なぁ!!凪!!」
「うえっ!?は、はいっ!!」
「あっ。ごめん。びっくりさせた」
「いや、いいよ。それで、どうしたの?」
そこで、僕は気になっていたこと聞くことにした。
「凪は、僕のことまだ好きか?」
「どうしてそれを聞くの?そりゃもちろん・・・好きだけど」
「最近、不安だったんだ。そりゃ忙しいから仕方ないけどさ。ちょっと、好かれているのか不安になっちゃったんだ」
「・・・。そうなの」
数秒間、沈黙が流れる。やっぱり、好きじゃないんだろうか。と、思っていたその瞬間。
「・・・え?」
突然、凪が抱き付いてきた。
「好きだよ。うん。まだ、好きだよ。好きじゃなかったら、大和と付き合ってないし、ハグなんかしない。何せ、家に招き入れてお泊まりしようなんか言わないよ」
「・・・凪」
「ごめんね。不安にさせちゃったんだ。私も、モデル活動をやっているから必ずとは言えないけど、不安にならないようにするからね」
「ご、ごめん。無理させたようで」
「うんん。いいんだよ。だから、もう一度言うね。まだ好きだよ。大和君」
その夕日が差し込む教室に、一組のカップルが愛を確かめ合った。
最初は、恋人なんかいらないと思っていた。特に学生時代は。ただの学生らしい恋愛をするだけのお遊びだと思っていた。だが、彼女が出来て変わったことがある。
そこまで、恋人というのも悪くないのである。




