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もし好きな人が○○だったら。

もし、自分の好きな人が、○○だったら、みんなはどうなるだろうか。




高校時代、僕、無叶むと 大和やまとには好きな人がいた。なんでも出来る完璧超人と噂されていた、真瀬まなせ 優希ゆき。高校の時からみんなに好かれていたが、先日、同窓会にて。

「私、結婚しました!!」

と、その報告を受けた。現在は、モデル活動をやっていて、日本中でもそこそこ知名度はあった。故に、イケメンな俳優とかと付き合っていたりしても、可笑しい話ではないのだ。

「まぁ、お前、高校の時からずっと好きだったもんな」

同級生の男子にあやされる。僕は、泣いていた。好きな人に永遠を添える人が出来たことと、なにも出来なかった自分に。心が、大きな穴を空けた感覚がした。長年、僕の生きる糧を埋めていた物が、今日という一瞬の刻を過ぎて、穴を空けた。自宅に帰って、思う。

「もう、それなら・・・」

それなら、生きていたって意味がない。僕が生きていた理由は、彼女がいたから。しかし、もう夫が出来てしまった。だったら、だったら・・・もう。

「死のう」

気づけば、天井にくくりつけたロープに手を掛けていて。そして・・・・・・・・・・。



その時、目を覚ました。

「・・・え?」

いや、何故?何故、目を覚ますことが出来た。そして、何故・・・。

「あ、大和くん!!」

何故、高校時代に戻っている?俺は、会社員のはずだ。20歳を過ぎた、会社員のはずだ。それが、なんで?

「?大和くん?どうしたの?」

「え、優希ちゃん!?」

なんで目の前に優希ちゃんが!?待て待て。状況が、処理が追い付いていない。なんでタイムスリップしてる?

「そうだよ!!私は優希。当たり前のことじゃん。どうしたの?気分でも悪いの?」

そ、そうだ。これは夢なんだ。きっと、神様が最後に見せてくれている夢なんだろう。

「こら!!」

「あ、いって・・・」

いや、しっかり感触はあった。巧妙に再現されているだけか?

「はい、席に着けー」

その時、高校の時の教師がやって来た。

「は?は?」

今、全てが重なっている。高校時代、あの人が担任で、そして、運良く優希が隣の席だったのだ。だったら、

「ほんとに、タイムリープしてる?」

だって、感触もあったし。しかし、それなら尚更なんで・・・。


結局、分からずじまいで、気づけば1ヶ月が経過していた。刻は、高校の卒業式。そう、あの日、僕が彼女に告白しようと決心した日。

「3組・33番、無叶大和」

「・・・はい」

とりあえずは、諦めて。僕は改めて高校生として生活した。そうして、卒業式も終えた。最後のホームルームでも、担任はまったく同じことを言っていた。担任も泣いていて、そして、クラスのみんなも泣いている。そっか。これからもっと広い世界に進むんだもんな。会えない可能性だってあるし、最期の人はこの高校生活が、学生の最期なんだから。

「はぁ、終わっちゃったか」

人生、2度目の高校の卒業式。もちろん、僕だって感動した。懐かしさも感極まって、つい泣いてしまった。

「大和くん。まずは、卒業おめでとう」

「あぁ、そちらこそ。卒業おめでとう」

「終わっちゃったねー。でもね、一年間、たったの一年だけだったけど、大和くんの隣の席になれて良かったよ」

それを言われた瞬間、心臓が跳び跳ねた。あぁ、懐かしいな。そんなことも言われてたっけか。

「僕も、それは同じだよ」

・・・。しばらくの間、沈黙が流れる。少し、気まずい空間だった。今、教室には僕以外には、優希ちゃんしかいなかった。

「大和くんはさ」

「は、はい」

その瞬間、その沈黙を打破するかのように、優希ちゃんが口を開く。

「これから、どうするの?」

「どうって、わかんない。ただ、普通の会社に入って、仕事をすると思う」

「そう、なんだ」

そしてまた、全ての記憶が蘇る。あぁ、そうだ。これから・・・

「大和くん。私ね、引っ越すんだ」

僕が、告白をしようとした瞬間に、優希ちゃんがそう言ったのだ。

「・・・」

「東京にね、引っ越すの」

あの時、その事実がショックで、告白することも忘れていた。放心状態になっているうちに、話は進んでいって、そして。

「じゃあ、またいつか。大和くん」

そうして、優希は背を向けたのだ。・・・このままで、いいのか?また、同じ過ちを繰り返すのか?嫉妬したんじゃないのか?心に、大きな穴が空いたんじゃないのか?それなのに、それなのに・・・。また、彼女をそのまま、後ろから眺めるだけなのか?・・・。

「いや」

勇気を出せ。恐れるな。言いきれ。未来を、変えるんだ。悲しまなくていいように、彼女が、自分の嫁となるために。今、告白するんだ。

「・・・」

だんだんと、遠くなる優希の背中に向けて、僕は思いっきり、

「優希!!待ってくれ!!」

と、叫ぶ。びっくりしたのか、少し跳ね上がりながら、それでもこちらを向く優希。その瞬間、微かに涙ぐんでいた様子が見られた。

「どうしたのー?」

相変わらず、元気にそうやって返事をする。落ち着け、深呼吸をしろ。

「スーッ・・・」

「?大和くん?」

言える。言えるんだ。そして、そして。そして・・・。

「好きだ!!」

遂に、僕はその言葉を言ったのだ。

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