第一話 ゲーム部
初投稿です。拙い文章ですがよろしくお願いします。
私立杉森高校2年の夏休み明け。
多くのクラスメイトが、2学期が始まることへの不満や文化祭などのイベントでの話題で持ちきりの中、俺こと高井直輝は、
「はぁ~~~~~~~~~~~~~」
机に突っ伏していた。
それもそのはず、俺は夏休み期間中に挑んだ数多くの大会での優勝をことごとく逃し、途方に暮れている真っ最中なのである。
「大丈夫でござるか高井殿?」
「まあまた次があるからさ、そう気を落とさずにいこうぜ?」
周りのゲーム部員たちが俺を励ましてくれているが、あまり効いている実感はない。なぜなら彼らは全員俺が大会決勝で負けた相手、つまりは大会優勝者だからである。その相手から情けの言葉をかけてもらうのは、俺たちゲーマーにとっては半ばあおりのようなものである。
「でもこれだけジャンルの違う大会で立て続けに2位をとれるのもある意味うらやましい才能だと思うけどな」
また仲間の一人が声をかける。確かに俺が出場した大会のジャンルは多岐にわたる。FPS、格闘ゲーム、音ゲー、TCG、さらには将棋やダーツなど、およそゲームと名の付くものの大会には出場してきたつもりだ。大会優勝を目指すのであればどれか一つに絞ったほうがよいのでは?とも思うかもしれないが・・・まったくその通りとしか言いようがない。
「それは分かっているんだけど・・・今やってるゲームを辞めたくはないし、やるからには一番になりたいじゃん?だからこの夏は一個だけでも優勝はしたかったんだけどなあ・・・」
結果はこのザマである。まさに二兎を追う者は一兎をも得ず。欲を出しすぎてすべて取り逃がした格好だ。
「でもどうするんだ?うちのゲーム部は年度中にどれか一個でも大会優勝の実績を作っておかないと次の年に強制退部だろ?お前まだ優勝できてねえじゃん」
「うっ、それは・・・」
この学校におけるゲーム部にはある規則が存在する。それは”毎年大会優勝の実績を出せなかった場合は強制退部”というものである。学生という身分でゲームという、一般人からすれば遊んでいるかのようなものを部活にする以上、実績に向かって努力をしているという姿を見せなければ部活動としては認められないということだ。
杉森高校は生徒の自主性を重んじる校風のためか、さまざまな種類の部活動を認めている。ただし、ゲーム部に関しては設立の経緯が少々特殊のため、ほかの部活よりもやや重めのノルマが課せられている。
まあ本来であれば設立そのものが認められるような部活でないことも確かである。活動が許されているだけありがたい話ではあるのだが・・・問題はそのノルマだ。
学期が始まれば当然学生は勉強にも注力せざるを得ない。杉森高校は周辺の高校と比べても偏差値の高い高校だ。生半可な勉強では余裕で落第もあり得てしまう。そんな中で金銭面や日程なども考えると、今後の残り期間で大会優勝できるかどうかは、かなり微妙なラインだ。だからこそ、夏休みは十分な時間も取れ、短期のバイトで稼ぎやすいため金銭面にもある程度余裕ができる最大のチャンスだったのだが・・・
「つ、次は何とかするから!まだ大会のチャンスは残ってるし、いまから頑張れば今年中には・・・」
「ほう?ずいぶんと余裕そうじゃないか」
「っ!?」
瞬間、身構える。今の俺にとって最も聞きたくないハリのある声がすぐ後ろから響いてきた。
女子高生にしてはやや長身気味で、黒いタイツに包み込まれた細長い脚は自然と男子生徒の視線を誘導する。長い黒髪をなびかせ優雅にたたずむその姿は、まるで深窓令嬢のような印象だ。端正な顔立ちから覗かれる黒い眼は、うっすらと笑みを浮かべながら俺のことを見下ろしている。
そう、彼女こそがこのゲーム部を立ち上げた張本人、杉森高校ゲーム部部長、藤ノ宮竜胆その人である竜胆
「去年度も春休み期間でギリギリノルマ達成という体たらくだったのに、今年はずいぶんのんびり構えてるじゃないか。何か勝算でもあるのかな?」
「え、えーと・・・それはですね・・・」
俺はこの人のことが少々苦手だ。ゲーム部に入りたくて背伸びしてこの高校を受験したはいいが、入部してから今日に至るまでなぜか俺によく絡んできてはイヤミの嵐を浴びせてくる。ちなみに彼女はすでに将棋の大会で今年度だけで3つのアマチュア大会を優勝している。おまけに学業は学年トップの座を一度も譲ったことがないというまさに規格外の頭脳の持ち主だ。俺も入部直後からこの人と何度も手合わせをしてきているが、最初の対局で勝てて以来一度も勝ったことがない。
「まあせいぜい頑張りたまえよ。11月ごろにある男女問わずのアマチュアの将棋大会のイベントがある。当然そこにお前の分の出場手続きも済ませておいた。そこで私に勝てばいいだけの話だからな」
「ちょ、何勝手に出場登録してるんすか!?」
この部長はこういう横暴も俺に対しては平気でやってくる。毎度付き合わされる俺はたまったもんじゃない。おかげでほかのゲームの大会に向けた予定がまた狂ってしまうことになる。
ちなみにこの人、現在公式対局で80連勝中であり、俺が決勝で負ける相手も大体この人だったりする。
「それじゃあまた部活で会おう。君との対局も楽しみにしているよ」
そういって彼女はまた優雅な黒髪をたなびかせて去っていく。周りの生徒たちはそんな彼女の姿に見とれていたり、ヒソヒソ声で彼女と俺との会話を様子を話し合ったりしていた。
「はぁ・・・これからどうすっかなぁ~」
この時の俺はまだ考えもしてなかった。
これから起こる数々のゲームを通した出会いが、俺のゲーム人生を、ひいては俺の人生そのものを大きく変えることになるとは・・・
読んでくれてありがとうございました。
反響があったら続編書きます。




