第二話 森のささやき
渋谷の喧騒が一瞬で消えた。綾香の視界は白い光に飲み込まれ、拾った鍵が熱を帯びて震えた。
次の瞬間、彼女は柔らかい草の上に立っていた。目の前には巨大な樹木がそびえ、枝の間から虹色の光が漏れている。
空には二つの月が浮かび、遠くで不思議な鳥の声が響く。
「ここ、どこ…?」
綾香は鍵を握りしめ辺りを見回した。
鍵はまだ微かに光っていて、まるで生きているかのように脈打っている。
すると、草むらから人影が現れた。
緑の長髪に蝶のような羽をもつ少女、身長は私の腰くらいで、目はエメラルドのように輝いている。
「鍵の継承者!ようやく来た!」
その少女は弾んだ声で言った。
「私の名前はルリ。時の精霊だよ。その鍵ずっと待っていたんだ。
あなたが拾ったってことは選ばれた証!」
私は突然のことに面くらいながらも答えた。
「選ばれた?私、ただの高校生なんだけど…」
戸惑いながらも持っている鍵をじっと見つめた。
その鍵の表面には複雑な紋様が浮かび、ほんのり暖かい。
確かに普通の鍵ではなさそうだ。
ルリは小さくため息をつき、羽をぱたぱたさせた。
「説明するね。この鍵は【時の鍵】。異なる時代や世界をつなぐ扉を開くの。あなたが拾ったのは偶然じゃない。鍵があなたを選んだんだよ。ほら見て!」
ルリが鍵を指さすと表面のルーンが光り、空中にホログラムのような映像が浮かんだ。
そこには崩壊する都市、逆さまに流れる川、止まった時計の針が映し出される。
「これが今の時空の乱れ。原因は失われた王国エルディアの王が禁断の魔法を使ったから。あなたが鍵を使って、過去を変えないと…」
綾乃の心臓が激しく鼓動した。
まるでファンタジー小説みたいだと心が躍った。
「わ、わかった。じゃあどうすればいいの?」
ルリはにっこり笑って私の手を引いた。
「ついてきて!まずは森の奥の門へ。ところであなたの名前は?」
「私は綾乃。篠塚綾乃です。よろしくね。」
二人は森を進んだ。木々はまるで生き物のように枝を伸ばし、道案内をするように広がっていた。
途中で光るきのこや歌う花に出会った。
綾乃は次第に興奮を覚えはじめ、今までの日常が遠のいていくのを感じた。




